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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

前立腺がんの遺伝学(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2017-02-10
    翻訳更新日 : 2017-04-17

PDQ Cancer Genetics Editorial Board

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、前立腺がんの遺伝学について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。


本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Cancer Genetics Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

がんの遺伝学 前立腺がん

エグゼクティブサマリー

本エグゼクティブサマリーでは、前立腺がんの遺伝学に関する本PDQ要約で取り扱われているトピックを概観し、以降の文中で各トピックの証拠を詳述するセクションへのハイパーリンクを提示している。


  • 遺伝とリスク


    前立腺がんリスクへの遺伝的関与が明らかにされているが、前立腺がんの分子遺伝学的知識は増え続けている。遺伝性病原性多様体の知識に基づく臨床管理が実現しつつある。前立腺がんに対する遺伝的寄与が示唆される因子には以下のものがある:1)母方または父方の家系に3世代連続の前立腺がん罹患を認めるなど、複数の第一度近親者(FDR)が前立腺がんに罹患していること;2)早期発症型(55歳以下)の前立腺がん;3)他のがん(例、乳がん、卵巣がん、膵がん)の家族歴を有する患者の前立腺がん。


  • 関連遺伝子と一塩基多型(SNP)


    いくつかの遺伝子と染色体領域は、各種の連鎖解析ケースコントロール研究ゲノムワイド関連解析(GWAS)混合マッピング解析で前立腺がんとの関連が明らかになっている。 BRCA1 BRCA2 ミスマッチ修復遺伝子 HOXB13 などの浸透度が高いまたは中等度の遺伝子に発生した病原性多様体により、中等度から高度の前立腺がん生涯リスクがもたらされる。このうちBRCA2をはじめ数種の遺伝子は、前立腺がんの治療とスクリーニングにおける臨床的関連性が確認されつつある。加えて、GWASでは前立腺がんの発生に関連がある100以上のSNPが同定されているが、これらの知見の臨床的有用性は不明である。これらのSNPの組み合わせが疾患リスクの高い個人を特定するための臨床的関連性を有するかどうかは、現在研究中である。また、多様体と侵攻性疾患の関連を分析する研究も進められている。


  • 臨床管理


    遺伝的に前立腺がんを発症する素因がある男性における直腸指診および血清前立腺特異抗原(PSA)値検査などの一般的に利用可能なスクリーニング検査の有効性に関する情報は限られている。BRCA病原性多様体キャリアのPSAに注目したスクリーニングに関する初期報告では、高い割合で侵攻性疾患が存在することが明らかになった。利用可能なデータを基にして、専門医のほとんどの団体および組織が、高リスク男性は医療提供者と意思決定を共有し、その危険因子に基づいて前立腺がんスクリーニングについて個々の計画を策定するよう推奨している。例えば一部の専門家は、BRCA1またはBRCA2病原性多様体のキャリアは40歳から前立腺がんスクリーニングを開始するよう提案している。遺伝性多様体は治療の決定に影響を及ぼすことがあり、特にDNA修復遺伝子に病原性多様体を有する男性ではその傾向が強い。複数の研究報告によると、BRCA2または他のDNA修復遺伝子に生殖細胞病原性多様体を有し、転移性の去勢抵抗性前立腺がんに罹患した男性では、PARP阻害に対する奏効率が高かった。


  • 心理社会的問題と行動面の問題


    前立腺がんの遺伝的リスクが高い男性を対象とする心理社会的研究は、リスク認識遺伝子検査への関心スクリーニング行動に注目してきた。前立腺がん患者のFDRが自身の前立腺がんリスクを正確に評価しているかどうかは研究によって異なり、一部の研究では、前立腺がんの家族歴を有する男性が自身のリスクを平均的な男性と同じかそれ以下と考えていた。既婚であることや良性前立腺肥大症と前立腺がんとの混同などの因子は、前立腺がんのリスク認識に影響を及ぼすことが明らかになった。前立腺がん感受性の遺伝子検査が利用できるようになる前に実施された複数の研究では、プライマリケア医の助言、情動的苦悩と前立腺がんの治療効果の組み合わせ、子をもうけることに対する懸念が、遺伝子検査に対して男性が仮想的に抱く関心に正の影響を及ぼすことが示された。数件の小規模研究で、家族歴に基づいた前立腺がんリスクが平均および高い場合に前立腺がんスクリーニングに関する行動的相関が調査されている;一般的に、家族歴のある男性の方がリスクのない男性よりもスクリーニングを受ける可能性が高いかどうか、およびスクリーニングがリスクの状態に相応であるかどうかに関する結果は、矛盾しているようである。高リスク家系の心理社会的問題と行動面の問題をより深く理解し、適切に対処するための研究が進められている。


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[注: 本要約で用いられている医学および科学用語については、NCI Dictionary of Genetics Termsに解説が用意されている。リンクが張られた用語をクリックすれば、別のウインドウにその定義が表示される。]

[注: 本要約に記載されている遺伝子の多くは、Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)データベースに掲載されている。遺伝子名または疾患名の後にOMIMと記述されている場合、OMIMをクリックすると詳しい情報にリンクされる。]

[注: 現在、遺伝学的多様性を記載するための用語体系を変化させるべく、遺伝学のコミュニティにおいて協調的な取組みが進められている。その変化とは、研究対象の個人または集団と参照配列との間に存在する遺伝学的な差異を記載する際に、従来の「mutation(突然変異ないし変異)」ではなく、「variant(多様体ないしバリアント)」という用語を使用するというものである。多様体はさらに、良性(無害)(benign [harmless])、おそらく良性(likely benign)、意義不明(of uncertain significance)、おそらく病原性(likely pathogenic)、病原性(疾患を引き起こす)(pathogenic [disease causing])のいずれかに分類することができる。本要約では、全体を通じて、疾患を引き起こす突然変異に対して病原性多様体(pathogenic variant)という用語を使用する。多様体の分類についての詳細は、がん遺伝学の概要に関する要約を参照のこと。]

前立腺がんの公衆衛生負担はかなりのものである。2017年には、米国で合計161,360例の前立腺がんの新規症例と26,730人のこの疾患による死亡が予想され、前立腺がんは米国男性において最も頻度の高い非皮膚性のがんである。 [1] 男性の前立腺がんの生涯リスクは8人に1人の割合である。前立腺がんは、肺がんと大腸がんに次いで男性におけるがんの死亡原因の第3位である。 [1]

前立腺がんの男性の中には、無症状のままで経過し、がんそのものではなく、関係のない原因により死亡する人もいる。このことは、多くの男性の診断時年齢が高齢であること、腫瘍の増殖がゆっくりしていること、または治療に反応することに起因しうる。 [2] 前立腺ラテントがん(すなわち、前立腺に存在するが、患者の生涯にわたり決して検出または診断されない前立腺がん)を有する男性の推定数は、臨床的に検出された疾患をもつ男性の数より多い。一部の前立腺がんが重篤で、生命を脅かしうる疾患であるのに対し、なぜ他の一部の前立腺がんが臨床的に症状を示さないのかを決定する遺伝的および生物学的メカニズムのさらなる理解が必要である。 [2]

前立腺がんは、世界の集団間で発生率に驚くほどの差を示す;前立腺がんの割合が高い国と低い国の比率は、60倍から100倍に及ぶ。 [3] アジアの男性では、典型的に前立腺がんの発生率が非常に低く、年齢で調整した発生率は男性100,000人当たり2例から10例の範囲である。北欧における発生率は一般的に高い。しかしながら、アフリカ系米国人男性の前立腺がん発生率が世界で最も高い;米国内ではアフリカ系米国人男性が白人男性よりも60%高い発生率を有する。 [4] アフリカ系米国人男性は非ヒスパニック系白人男性と比較して前立腺がん特異的死亡率が2倍を超えることが報告されている。 [1] 人種特異的な前立腺がん生存率推定値における差は経時的に狭まっているようである。 [5]

このような違いは、遺伝的影響、環境的影響、および社会的影響(医療へのアクセスなど)の相互作用に起因している可能性があり、本疾患の発生および進行に影響を及ぼしうる。 [6] また、スクリーニングの実践における差も、一部の患者では症状が現れる前、または身体診察で異常が検出可能となる前に、前立腺がんが診断可能になることによって、前立腺がん発生にかなりの影響を与えている。スウェーデンの集団ベースのデータ解析によると、兄弟の1人における前立腺がんの診断が、2人目の兄弟における前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングを用いた早期診断につながることが示唆された。 [7] このことから、若年男性における前立腺がん診断の増加が、国内全体の発生率データで明確となったことが説明できる可能性がある。前立腺がんリスクへの遺伝的寄与が明らかにされており、前立腺がんの分子遺伝学的知識が増加しているが、知見の大部分はまだ臨床においてアクション可能となっていない。前立腺上皮細胞の悪性転換および前立腺がんの進行は、遺伝的かつ環境的な影響下で生じる一連の複雑なイニシエーションとプロモーションのイベントに起因している可能性が高い。 [8]

前立腺がんの危険因子

米国において、最も重要と認識されている前立腺がんの危険因子は以下の3つである:


年齢

年齢は、前立腺がんの重要な危険因子である。前立腺がんが40歳未満の男性にみられることはまれである;発生率はこれ以降10歳年齢が上がるごとに急激に増える。例えば、前立腺がんと診断される確率は、49歳以下の男性では354人に1人、50歳から59歳までは52人に1人、60歳から69歳までは19人に1人であり、70歳以上は11人に1人であり、前立腺がん発生の全生涯リスクは8人に1人となる。 [1]

前立腺がん症例の約10%は56歳未満の男性で診断され、早期発症型前立腺がんに相当する。Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)プログラムのデータは、早期発症型前立腺がんが増加しつつあることを示しており、また一部の症例がより侵攻的な場合があることを示す証拠が存在する。 [9] 早期発症がんは生殖細胞病原性多様体により生じることがあるため、前立腺がん感受性遺伝子を明らかにすることを目標に前立腺がんの若年男性についての研究が広範に行われている。

祖先

前立腺がんの発症リスクおよび死亡リスクは、黒人で著しく高く、白人では中程度で、生来の日本人で最も低い。 [10] [11] このような転帰の病因論に関しては相反するデータが公表されているが、ヘルスケアへのアクセス性が疾患の転帰に影響を及ぼしている可能性を示す若干の証拠が得られている。 [12]

前立腺がんの家族歴

前立腺がんは遺伝性が強い;前立腺がんの遺伝リスクは60%に上ると推定されている。 [13] 乳がんや結腸がんと同様に、前立腺がんも家族内集積が頻繁に報告されている。 [14] [15] [16] [17] [18] 前立腺がんの症例の5~10%は、主として受け継がれた高リスクの遺伝的因子または前立腺がん感受性遺伝子に起因すると考えられている。さまざまな集団を対象とした数件の大規模なケースコントロール研究およびコホート研究から得られた結果から、家族歴が前立腺がんの主要な危険因子であることが示唆されている。 [15] [19] [20] 家族歴に前立腺がんの兄弟または父親がみられると前立腺がんのリスクが高くなり、そのリスクは罹患した近親者の年齢と逆相関している。 [16] [17] [18] [19] [20] しかしながら、少なくとも一部の家族集積は、高リスクと考えられた家系では前立腺がんスクリーニング頻度が高かったことに起因するものである。 [21]

家族歴と関連するリスクを調べる前立腺がんの研究には病院ベースのシリーズのものもあるが、集団ベースのシリーズについて報告した研究も数件ある。 [22] [23] [24] 後者の方が、より一般化可能な情報を提供すると考えられている。疫学に関する33件のケースコントロール研究およびコホートベース研究を対象としたメタアナリシスでは、前立腺がんの家族歴に関連したリスク比に関して、さらに詳細な情報が得られている。このメタアナリシスによると、兄弟が罹患者の男性では、父親が罹患者の男性よりリスクが高いことが示された。このようなリスク差が生じた理由は不明であるが、可能性のある仮説としてX連鎖または劣性遺伝が考えられている。さらに、罹患した近親者の数が増えるほどリスクも高くなった。また、第一度近親者(FDR)が65歳前に前立腺がんと診断された場合もリスクが高かった。(前立腺がんの家族歴に関係する相対リスク[RR]の要約については、表1を参照のこと。) [25]

表1.前立腺がんの家族歴に関係する相対リスク(RR)a

リスクグループ 前立腺がんの相対リスク(95%CI)
CI = 信頼区間;FDR = 第一度近親者。
a 出典:Kicińsk et al. [25]
診断時年齢を問わず前立腺がんの兄弟が1人または複数いる 3.14 (2.37–4.15)
診断時年齢を問わず前立腺がんの父親がいる 2.35 (2.02–2.72)
診断時年齢を問わず罹患した第一度近親者が1人いる 2.48 (2.25–2.74)
診断時年齢が65歳未満で罹患した第一度近親者が複数いる 2.87 (2.21–3.74)
診断時年齢が65歳以上で罹患した第一度近親者が複数いる 1.92 (1.49–2.47)
診断時年齢を問わず罹患した第二度近親者が複数いる 2.52 (0.99–6.46)
診断時年齢を問わず罹患した第一度近親者が複数いる 4.39 (2.61–7.39)


このメタアナリシスに含まれる多くのデータソースの中で、スウェーデンにおける集団ベースのFamily-Cancer Databaseから得られたデータについては具体的に解説する価値がある。これらのデータは、1,180万を超える人のデータが含まれるリソースから得られたもので、その中に前立腺がんが医学的に証明された男性26,651人が確認され、そのうち5,623人が家族症例であった。 [26] この規模のデータセットであれば、スウェーデンの全人口がほぼ完全に把握され、がん診断が客観的に検証されるため、正確かつバイアスフリーでリスクが推定されるはずである。前立腺がんの診断および前立腺がんによる死亡に対する家族の年齢特異的ハザード比(HR)を計算すると、予想されたように前立腺がん診断に対するHRは家族歴が多いほど高かった。具体的に、前立腺がんに対するHRは、父親のみが罹患している場合で2.12(95%CI、2.05-2.20)、1人の兄弟のみが罹患している場合で2.96(95%CI、2.80-3.13)、父親と2人の兄弟が罹患している場合で8.51(95%CI、6.13-11.80)であった。最高のHRは17.74(95%CI、12.26-25.67)で、前立腺がんと診断された兄弟が3人いる男性にみられた。罹患近親者が55歳前に前立腺がんと診断された場合は、さらにHRが高かった。

このスウェーデンのデータベースを対象とした別の解析からの報告によると、家系内に罹患症例が複数いる男性では、前立腺がんの累積(絶対)リスクが60歳までに5%、70歳までに15%、80歳までに30%に達したのに対し、一般集団の同年齢では、それぞれ0.45%、3%、10%であった。罹患した父親が70歳前に前立腺がんと診断された場合は、さらにリスクが高かった。 [27] 上と同じ3つの年齢層に対応する家族の集団寄与割合(PAF)は、それぞれ8.9%、1.8%、1.0%で、総PAFは11.6%となる(すなわち、スウェーデンにおける前立腺がん全体の約11.6%が前立腺がん家族歴に基づいて説明できることになる)。

前立腺がんのリスクは、乳がんの家族歴をもつ男性においても増加している。アイオワ州のコホートの約9.6%が、ベースライン時に母親または姉妹における乳がんおよび/または卵巣がんの家族歴をもっており、これは前立腺がんリスクと正の相関を示した(年齢調整済みRR、1.7;95%CI、1.0-3.0;多変量RR、1.7;95%CI、0.9-3.2)。前立腺がんと乳がん/卵巣がんの両方の家族歴を有する男性も前立腺がんのリスクが高かった(RR、5.8;95%CI、2.4-14.0)。 [22] Women's Health Initiativeのデータの分析からも、前立腺がんの家族歴が閉経後乳がんのリスク増加と関連していることが示された(調整後HR、1.14;95%CI、1.02-1.26)。 [28] さらなる分析から、乳がんリスクが乳がんおよび前立腺がん両方の家族歴と関連していることが示された;このリスクは白人女性よりも黒人女性で高かった。しかしながら、他の研究では女性家族の乳がん歴と前立腺がんリスクの間に関連は見つからなかった。 [22] [29] 前立腺がんの家族歴もまた女性近親者の乳がんのリスクを高める。 [30] 遺伝性の乳がん/卵巣がんまたは早期発症型の前立腺がんがみられる家系では、BRCA1/BRCA2 病原性多様体を有する男性で前立腺がんのリスクが高くなることで、同一家系における前立腺がんと乳がんとの関連性が部分的に説明できる可能性がある。 [31] [32] [33] [34] (詳しい情報については、本要約の BRCA1とBRCA2 のセクションを参照のこと。)

前立腺がんは一部の家系内で著しく多発する。浸透度の高い遺伝子多様体が、これらの家系における前立腺がんリスクに関連していると考えられる。(詳しい情報については、本要約の連鎖解析のセクションを参照のこと。)そうした家系のメンバーには、遺伝カウンセリングが有益な場合がある。遺伝カウンセリングの紹介に関する最近の推奨およびガイドラインは、前立腺がんの診断時年齢と特定のがん家族歴パターンに基づいている。 [35] [36] 以下の基準を満たす個人には、遺伝カウンセリングへの紹介が必要であろう: [35] [36] [37] [38]


  • 前立腺がんに罹患した第一度近親者が複数いる。

  • 早期発症型前立腺がん(55歳以下)。

  • 他のがん(例、乳がん、卵巣がん、膵がん)の家族歴がある前立腺がん。

家族歴は、さまざまな人種および民族の男性にとって、危険因子であることが示されている。米国(ロサンゼルス、サンフランシスコ、およびハワイ)およびカナダ(バンクーバーおよびトロント)のアフリカ系米国人、白人、およびアジア系米国人における前立腺がんの集団ベースのケースコントロール研究では [39] 、対照の5%と全症例の13%に前立腺がんの父親、兄弟、または息子がいることが報告された。これらの有病率の推定値は、アジア系米国人の方がアフリカ系米国人または白人よりも若干低かった。家族歴陽性は、これら3つの民族グループそれぞれにおいて2倍から3倍のRR増加と関連していた。前立腺がんの家族歴と関連する全オッズ比は、年齢と民族性で調整すると、2.5(95%CI、1.9-3.3)であった。 [39]

その他に可能性のある前立腺がんリスク修飾因子

アンドロゲンとエストロゲンの両方を含め、内因性ホルモンは前立腺の発がんに影響するらしい。去勢男性およびその他の思春期以前のテストステロン値が去勢レベルの男性は前立腺がんを発症しないことが広く報告されている。 [40] 一部の研究者が、前立腺がんリスクにおけるアンドロゲンの生合成および代謝における遺伝的多様性の潜在的な役割を検討しており [41] 、その中にはエクソン1に存在するアンドロゲン受容体AR)のCAG反復長の潜在的な役割も含まれる。これがAR活性を調節しており、前立腺がんリスクに影響を及ぼしている可能性がある。 [42] 例えば、一部の男性ではARのCAG反復長が20反復以上であれば、前立腺がんに対する防護効果があることを報告したメタアナリシスがある。 [43]

(一般集団における前立腺がんリスクの非遺伝的修飾因子に関する詳しい情報については、前立腺がんの予防に関する本PDQ要約を参照のこと。)

多発性原発がん

SEER Cancer Registriesで、1973年から2000年に前立腺がんと診断された男性292,029人を対象に二次原発がんの発症リスクが検討されている。その後の前立腺がんを除外し、他の原因による死亡リスクについて調整すると、患者全体における二次原発がんの累積発生率は、25年で15.2%(95%CI、5.01-5.4)であった。50歳未満で診断された男性では新規悪性腫瘍(すべてのがんを総合)について重大なリスクがあり、50~59歳で診断された男性ではがんリスクの過剰も低下もみられず、より高い年齢群で診断されたすべての男性ではがんリスクの低下がみられた。著者らは、この低下は高齢の集団においてがんのサーベイランスが少なかったためであろうと示唆した。二次原発がんの過剰リスクとしては、小腸、軟部組織、膀胱、甲状腺、および胸腺のがんのほか、黒色腫も含まれていた。50歳以下の患者に診断される前立腺がんは、膵がんの過剰リスクと関連していた。 [44]

1992年から2010年に前立腺がんの診断を受けた患者441,000人超を対象としたレビューでも同様の所見が示され、二次原発がんの診断を受けるリスクは全体として低かった。この研究は、限局性のがんに対する治療法別に、44,310人(10%)における二次原発がんのリスクについても検討している。この研究は、放射線療法を受けた患者は、受けなかった患者と比べ(SIR膀胱、0.76;SIR直腸、0.74)、膀胱がん(標準化発生比[SIR]、1.42)および直腸がんリスク(SIR、1.70)が高いことを示唆した。 [45]

前立腺がんの後に発症する二次原発がんの基礎にある病因には、治療法を含め、さまざまな因子が関係している可能性がある。小腸腫瘍の50%以上が悪性カルチノイドであったことから、ホルモンが影響している可能性が示唆される。膵がんの過剰リスクは、両者に対して影響を受けやすいBRCA2における病原性多様体によるものであろう。黒色腫のリスクは、診断後の追跡で最初の1年目に最も顕著であったことから、スクリーニングおよびサーベイランスの頻度が増加した結果である可能性が高まっている。 [44]

全国規模のSwedish Family Cancer Databaseを用いたスウェーデンの1件の研究では、前立腺がん後の二次原発がんのリスクにおける家族歴の役割が評価された。前立腺がん男性18,207人中、560人が二次原発がんを発症した。このうち、大腸がん、腎がん、膀胱がん、および扁平上皮皮膚がんに対するRRが高かった。父系における前立腺がんの家族歴は、膀胱がん、骨髄腫、および扁平上皮皮膚がんのリスク増加と関連していた。前立腺がん発端者のうち、大腸がん、膀胱がん、または慢性リンパ性白血病の

家族歴

を有する患者は、二次原発がんとしてそのような特定のがんのリスクが高かった。 [46]

複数症例家系における他のがんのリスク

数件の報告により、前立腺がん複数症例家系内の近親者においてさまざまな他のがんのリスク増加が示唆されているが、これらの関連はいずれも決定的に確立されたわけではない。 [47] [48] [49]

202の前立腺がん複数症例家系を対象にしたフィンランドの1件の集団ベース研究では、5,523人の家系員においてすべてのがん(前立腺がん以外)を合わせた過剰リスクは検出されなかった。女性の家系員では胃がんについてほんのわずかな超過がみられた(SIR、1.9;95%CI、1.0-3.2)。臨床的に侵攻性の前立腺がんに罹患した家系と非侵攻性の前立腺がんの家系と比較したところ、家族性がんリスクに違いは認められなかった。これらのデータから、家族性前立腺がんは、がん部位特異的疾患であることが示唆される。 [50]

前立腺がんのリスクの遺伝

多くのタイプの疫学研究(ケースコントロール、コホート、双子、家族)により、前立腺がん感受性遺伝子がこうした集団に存在することが強く示唆される。スカンジナビアの一卵性(MZ)または二卵性(DZ)双胎のより長期的な追跡の解析は、前立腺がんリスクの58%(95%CI、52-63)について遺伝的因子で説明できる可能性があると結論付けた。 [13] さらに、罹患したMZおよびDZ双胎において、第2児の診断までの期間はMZ双胎で最も短かった(平均、MZ双胎で3.8年 vs DZ双胎で6.5年)。これは、DZ双胎での一致率7.1%とMZ双胎での一致率27%を示した以前の米国の研究の結果と合致するものである。 [51] 1982年から1989年の間に根治的前立腺切除術を受けた連続した740人の発端者の家系を用いて、1992年に初の分離比分析が実施された。本研究の結果から、早期発症した前立腺がんの男性における家族性集積は、まれな(頻度0.003)常染色体優性の、高い浸透度をもつアレルの存在により説明するのが最善であることが示唆された。 [15] 遺伝性前立腺がん感受性遺伝子が、早期(55歳以下)発症例のほぼ半数を説明すると予測された。さらに、55歳より前の発症に関連してよくみられる多様体を検討した研究から、早期発症型には強い遺伝的要素があることがさらに裏付けられている。 [52]

その後の分離比分析も総じてこの結論と合致していたが、頻度、浸透度、遺伝様式の細部では異なっていた。 [53] [54] [55] 1966年から1995年の間に根治的前立腺切除術を受けた男性4,288人の研究により、遺伝的形質の最も適合する遺伝子モデルはまれな常染色体優性の感受性遺伝子(頻度0.06)の存在であることが明らかにされた。この研究では、キャリアにおける85歳までの生涯リスクは89%と推定され、非キャリアでは3.9%と推定された。 [51] この研究ではまた、このモデルが70歳以上で診断された発端者の第一度近親者における前立腺がんリスクを予測する信頼性が低いことから、遺伝的異質性の存在が示唆された。さらに最近の分離比分析では、乳房、卵巣、大腸、腎、および黒色腫を含むものなど、他の成人発症型遺伝性がん症候群と類似したパターンで前立腺がんと関連する遺伝子が複数存在すると結論している。 [56] [57] [58] [59] さらに、フィンランドの1,546の家系を対象にした分離比分析により、メンデル型の劣性遺伝の証拠が明らかにされた。結果から、リスクアレルを保有する人は、非キャリアよりも若い年齢(66歳未満)で前立腺がんと診断されたことが示された。これは劣性遺伝様式を示した最初の分離比分析である。 [60]


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前立腺がんリスクに関連する遺伝子および遺伝的多様体の同定

前立腺がんと関連した遺伝的多様性の全貌を明らかにするために、さまざまな研究方法が利用されている。特定の研究手法は固有の表現型または遺伝様式について明らかにする。以下のセクションでは、さまざまな方法による前立腺がん研究について説明し、それらの方法が前立腺がんの遺伝子的根拠を解明する際に果たす役割に注目する。疾患感受性遺伝子を同定するために、連鎖研究は通常、ある特定の疾患が複数例存在する高リスクの大家系に対して実施される。一般的に、連鎖解析を介して特定される遺伝子病原性多様体は、集団内ではまれであるが、家系内の浸透度が中から高で、効果量が大きい(例、相対リスク2.0超)。連鎖解析で特定される病原性多様体の臨床的機能は比較的明確であり、BRCA1およびBRCA2などの遺伝子が認められるがんに対する遺伝子検査が既に確立されている。(これらの遺伝子に関する詳しい情報については、本要約の前立腺がんリスクに臨床的に関連する可能性のある遺伝子セクションの BRCA1とBRCA2 のセクションを参照のこと。)前立腺がんに関連する候補遺伝子の同定に用いられる別の方法としてゲノムワイド関連解析(GWAS)がある。通常、GWASにより同定される遺伝子多様体は集団内で多くみられ、前立腺がんのリスクに対する効果量は低~中等度である。GWASで特定されるマーカーの臨床的機能は、活発な調査領域の1つである。ケースコントロール研究は、前立腺がんリスクとの関連で候補となる遺伝子変異の研究に有用なことはもちろん、連鎖解析およびGWASで得られた知見の妥当性確認においても有用であるが、ケースコントロール研究から得られる知見の臨床的位置付けはさらに明確化する必要がある。

連鎖解析

連鎖解析の概要

前立腺がんが家系内で多発することが認識されるようなったため、連鎖研究を通して前立腺がん感受性遺伝子の位置を特定する目的で、多くの研究者が複数症例を有する家系を収集するようになった。

連鎖研究は、疾患感受性遺伝子の同定を目的として、典型的には、ある特定疾患の症例が複数認められている高リスクの家系を対象に実施される。連鎖解析では、罹患者非罹患者の間で統計的に遺伝子型を比較し、既知の遺伝子マーカーが疾患の形質とともに受け継がれている証拠を探す。そうした証拠(連鎖)が認められた場合には、そのマーカーの近くの染色体領域にも疾患感受性遺伝子が潜んでいるという統計データが得られる。焦点となっているゲノム領域が連鎖解析によって同定されると、感受性遺伝子が本当にその位置に存在することを証明するため追加の研究が必要となる。連鎖解析は以下の因子によって影響を受ける:


  • 家系の規模とDNAの提供を申し出る家系員の数が十分であること。

  • 各家系における疾患の症例数。

  • 診断時の年齢と関係する因子(例、スクリーニングの利用)。

  • 疾患のリスクにおける性差(前立腺がんには関連していないが、他の状態に対する連鎖解析には依然として関連している)。

  • 症例における疾患の異質性(例えば、表現型が侵攻性 vs 非侵攻性)。

  • 遺伝的異質性(例、複数の遺伝子多様体が同じ疾患に寄与する)。

  • 家族歴情報の正確度。

さらに、遺伝性前立腺がんの標準定義は一般にはまだ受け入れられていないため、前立腺がんの連鎖研究では、一貫した登録基準が用いられていない。 [1] 提唱されている基準の1つにHopkinsの基準があり、これにより遺伝性前立腺がん家系の実用的な定義が可能となる。 [2] Hopkinsの基準を用いると、遺伝性前立腺がんを有する前立腺がん家系とみなすには、以下の基準のうちいずれか1つを満たすのみでよい:

  1. 罹患した第一度近親者(父親、兄弟、息子)が3人以上。
  2. 母方または父方のいずれかの家系で3世代連続で罹患した近親者。
  3. 発症年齢55歳以下の近親者が2人以上。

これらの基準を用いると、約3~5%の男性が遺伝性前立腺がんを有する家系の出身であることが外科シリーズで報告されている。 [2] [3]

連鎖研究におけるさらなる問題は、家族研究における散発性前立腺がんの高い背景割合である。男性の前立腺がんの生涯リスクは8人に1人であることから [4] 、研究対象の家系に遺伝性と散発性の両方の前立腺がんの男性がいる可能性がある。故に、その家系において分離している前立腺がん感受性遺伝子を受け継いでいない男性にも前立腺がんが発生しうる。前立腺がんが遺伝性か散発性かを鑑別できるようなその臨床的または病理学的な特徴は認められていないが、前立腺がんの分子表現型の理解における現在の進歩から遺伝性前立腺がんを同定する上で有益な情報が得られる可能性がある。同様に、特定の候補遺伝子座と関連する前立腺がんの臨床的表現型または自然史に関するデータは限られている。前立腺がんの連鎖解析研究に用いられる家系の評価においては、特に決まりはなく、血清前立腺特異抗原(PSA)の測定が用いられている。連鎖研究において、家族内の前立腺がんの割合がスクリーニング受診家族と非受診家族で異なるであろうことから、罹患男性の定義は血清PSAスクリーニングの使用によりバイアスを受けうる。

連鎖研究間の不一致に対処する1つの方法として、罹患男性において臨床的に意義のある病態(例、グリソンスコアが7以上、PSA値が20ng/mL以上)を定義する選択基準が必要である。 [5] [6] [7] このアプローチでは、連鎖シグナルを同定する確率を上げるため、一組の均一な症例/家系を定義する試みがなされる。このアプローチではまた、家系のスクリーニングによって同定された臨床的に明らかではないと考えられる症例の選択が避けられる。

研究者はまた、疾患の重症度に影響しうる遺伝子を同定すべく、臨床的パラメータを連鎖解析に組み込んでいる。 [8] [9] しかしながら、この種のアプローチではまだデータセット全体において一貫した連鎖シグナルの同定には至っていない。 [10] [11]

連鎖解析で同定された感受性遺伝子座

提案されている前立腺がん感受性遺伝子座を表2に要約しており、これらは前立腺がんに罹患した人が複数いる家系において特定されたものである。上述の遺伝子座には、連鎖に関して相反する証拠が存在するものもある。各遺伝子座と関連して提唱された表現型に関するデータにも限界があるため、これらの関連を確固たるものにするには、研究の繰り返しによる強固さが必要である。これらの前立腺がん遺伝子座の多くが、前立腺がんは遺伝子座異質性を示すという概念と一致して、少数の家系亜集団において前立腺がんを説明することを示唆する証拠がある。

表2.提唱される前立腺がん感受性遺伝子座

遺伝子 位置 候補遺伝子 臨床検査 提唱される表現型 コメント

HPC1

OMIM)/

RNASEL

OMIM) [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32] [33] [34]
1q25 RNASEL 入手不可 前立腺がん診断時年齢が比較的若い(65歳未満) 連鎖の証拠は、少なくとも5人以上の家族内罹患者、若い診断時年齢、男性-男性間伝達がある家族で最強となる。
高い腫瘍悪性度(グリソンスコア)
診断時の進行した病期 少数の1q連鎖家族において、RNASEL病原性多様体が同定されている。
PCAP OMIM) [1] [9] [16] [23] [35] [36] [37] [38] [39] [40] [41] [42] [43] [44] 1q42.2-43 なし 入手不可 前立腺がん診断時年齢が比較的若い(65歳未満)および比較的侵攻性の高い疾患 連鎖の証拠はヨーロッパ人家系で最も強い。
HPCX OMIM) [33] [39] [45] [46] [47] [48] [49] [50] [51] Xq27-28 なし 入手不可 不明 罹患した兄弟をもつ非罹患男性は、罹患した父親をもつ非罹患男性よりリスクが高いという観察を説明しうる。
CAPB OMIM) [37] [52] [53] [54] 1p36 なし 入手不可 前立腺がん診断時年齢が比較的若い(65歳未満) 当初、前立腺がんと脳腫瘍の両方がみられる家系において最も強い連鎖の証拠が報告された;追跡研究では、この遺伝子座が早期発症型の前立腺がんと特異的に関係している可能性があるものの、必ずしも脳腫瘍と関係しているわけではないことが示されている。
脳腫瘍の症例が1人またはそれ以上いる
HPC20 OMIM) [39] [55] [56] [57] [58] 20q13 なし 入手不可 遅い前立腺がん診断時年齢 連鎖の証拠は、診断時年齢が遅く、罹患家系員が少なく、男性から男性への伝達がみられない家系において最も強い。
男性-男性間伝達がない

8p

[23] [40] [59] [60] [61] [62] [63] [64] [65] [66] [67]
8p21-23 MSR1 入手不可 不明 前立腺がんではゲノム領域において一般的に欠失している。

8q

[44] [68] [69] [70] [71] [72] [73] [74] [75] [76] [77] [78] [79] [80] [81] [82] [83] [84] [85] [85] [86] [87]
8q24 なし 入手不可 比較的侵攻性の高い疾患 一部の報告におけるデータでは、集団寄与リスクはアフリカ系米国人男性の方がヨーロッパ系男性より高い可能性が示唆される。


連鎖解析で発見されたその他の遺伝子座

前立腺がん家系の全ゲノム連鎖解析により、前立腺がん感受性遺伝子が含まれる可能性のある遺伝子座が他にもいくつか同定されており、この前立腺がんでは複雑性および遺伝的異質性が根底にあることが強く示唆される。以下の染色体領域は、複数の研究または臨床コホートで前立腺がんとの関連がみられ、統計的に有意な(2以上の)対数オッズ(LOD)スコア異質性LOD(HLOD)スコア、または概要LODスコアが認められている:


染色体領域19qも前立腺がんとの関連が明らかになっているが、特定のLODスコアは報告されていない。 [8] [11] [95]

家族のさまざまな表現型における連鎖解析

集団特異的感受性遺伝子または疾患の表現型に影響を与える遺伝子を同定するために、特定の集団を対象とした連鎖研究、または特定の臨床パラメータを用いた連鎖研究も実施されている。

アフリカ系米国人家系における連鎖解析

African American Hereditary Prostate Cancerの研究では、罹患男性が4人以上いる77家系についてゲノムワイド連鎖研究が実施された。11q22、17p11、およびXq21にマップされるマーカーが用いられ、1.3以上2.0未満の複数ポイントHLODスコアが観測された。前立腺がん男性を7人以上有する16家系の解析から、さらに次の2つの座位についての証拠が得られている:2p21(複数ポイントHLODスコア = 1.08)と22q12(複数ポイントHLODスコア = 0.91)。 [92] [99] ルイジアナ南東部および南中部出身のアフリカ系米国人における遺伝性前立腺がんの15家系を対象とした小規模の連鎖研究では、6,000の一塩基多型(SNP)を含むプラットフォームが用いられ、2p16(HLOD = 1.97)および12q24(HLOD = 2.21)で前立腺がんを示唆する連鎖が同定された。 [111] より多くのアフリカ系米国人家系を対象にこれらの知見を確認するため、さらなる研究が必要である。

侵攻性の前立腺がんを認める家系における連鎖解析

前立腺がんの侵攻性に寄与する遺伝子座を同定する目的で、次のうち1つ以上が認められる家系を対象に連鎖解析が実施された:グリソンスコアが7以上、PSAが20ng/mL以上、診断時のがん病期が領域内または遠隔転移、65歳未満で前立腺がん転移による死亡。侵攻性の前立腺がんを認める罹患家系員を2人以上有する123家系が研究された。染色体22q11(HLODスコア = 2.18)および22q12.3-q13.1(HLODスコア = 1.90)における連鎖が示唆された。 [5] これらの知見は、臨床的に定義された表現型を用いると前立腺がん感受性遺伝子の発見が促進されうることを示唆している。その後実施された14の高リスク前立腺がん拡大家系を対象としたファインマッピング研究では、対象となるゲノム領域を22q12.3の880-kb領域に絞っている。 [107] ユタ州の高リスク家系の分析で、この戦略の概要が報告されている。 [112] International Consortium for Prostate Cancer Geneticsが収集した侵攻性前立腺がんの348家系間で、6,000 SNPの高解像度マーカーセットを使用した連鎖解析が実施された。 [44] 侵攻性疾患は、グリソンスコアが7以上、精嚢への浸潤または被膜外浸潤、治療前PSA値が20ng/mL以上、または前立腺がんによる死亡のいずれかにより定義された。侵攻性前立腺がん家系の間で連鎖の最も強い証拠を有する領域は8q24であり、LODスコアは3.09-3.17であった。その他のLODスコアが2以上の連鎖領域には、1q43、2q35、12q24.31があった。候補遺伝子はまだ同定されていない。

複数のがんがみられる家系における連鎖解析

多数の前立腺がん感受性遺伝子座および病態の不均一性の観点から、他のアプローチでは、多くのがん感受性遺伝子が多面発現性であることを考慮して、他のがんを基に家系を層別化してきた。 [113] 家族性の前立腺がんと腎がんの両方を説明しうる感受性遺伝子座を同定するため、ゲノムワイドの連鎖研究が実施された。遺伝性前立腺がんの証拠を有し、前立腺がん男性または前立腺がん男性の第一度近親者において(病理学的に確認された)腎がんが1症例以上認められる15家系を対象とした解析により、染色体11p11.2-q12.2の8cMの領域にマッピングされたマーカーとの示唆的な連鎖が明らかになった。 [114] この観察では確認が待たれる。結腸がんの第一度近親者が1人以上いる96の遺伝性前立腺がん家系を対象に、別のゲノムワイド連鎖研究が実施された。全家系において連鎖の証拠が、11q25、15q14、および18q21を含むいくつかの領域で明らかになった。結腸がん症例が2人以上みられる家系では、1q31、11q14、および15q11-14にも連鎖が観察された。 [113]

前立腺がん連鎖研究の要約

染色体17q21-22の連鎖解析およびその後のファインマッピングと標的配列決定法により、一部の遺伝性前立腺がん、特に早期発症型前立腺がんの原因となるHOXB13遺伝子における反復病原性多様体が同定されている。多くの研究で、HOXB13におけるG84E病原性多様体と前立腺がんリスクとの関係が確認されている。(詳しい情報については、本要約の HOXB13 のセクションを参照のこと。)HOXB13病原性多様体検査の臨床的有用性はまだ明確になっていないが、その臨床的役割を確定するための研究が進行中である。例えば、前立腺生検を予定している未選択の男性948人を評価した研究がある。生検で前立腺がんが検出された3人(0.3%)の男性にG84E病原性多様体が確認されたが、前立腺がんの家族歴を有する男性301人のうち、この多様体のキャリアはいなかった。 [115] さらに、多くの連鎖研究により、いくつかの前立腺がん感受性遺伝子座(表2)がマッピングされているが、これらの遺伝子座から遺伝性前立腺がんに寄与する遺伝子変化が一貫して再現されているわけではない。高性能配列解読装置の進展とともに、遺伝性前立腺がん家系のサブセットの原因となっている浸透度が中から高の遺伝子多様体がさらに特定される可能性が高い。 [116]

ケースコントロール研究

ケースコントロール研究では、研究対象の因子を特定の状態との関連について評価する。このデザインでは、特定の疾患や遺伝子多様体など、対象とする状態を有する症例を調査し、その状態はみられないが他の特性(すなわち年齢、性別、民族性など)が類似していることが多い対照サンプルと比較する。遺伝的因子の特定に関するケースコントロールデザインの制約には以下のものがある: [117] [118]


  • 研究対象集団の層別化。(症例群と対照群の間の遺伝的差異に基づく未知の集団は偽陽性の関連を招く場合がある。) [119]

  • 遺伝的異質性。(異なるアレルまたは遺伝子座から類似の表現型が発現する場合がある。)

  • 自己同定の人種または民族、および未知の交絡変数による制約。

さらに、特定された関連は常に妥当とは限らず、ランダムな関連性を表している場合もあるため、妥当性検査を確実に実施すること。 [117] [118]

ケースコントロール研究で検索された遺伝子

アンドロゲン受容体遺伝子

前立腺がんのリスクおよび病勢進行の両方について、アンドロゲン受容体AR)遺伝子多様体が解析されている。アンドロゲン受容体は前立腺がん発がんの全段階で発現する。 [120] 遺伝性前立腺がんで根治的前立腺切除術を受けた男性では、散発性前立腺がん男性よりもARを発現した前立腺がん細胞の割合が高く、エストロゲン受容体アルファを発現したがん細胞の割合が低いことを明らかにした研究が1件ある。著者らは、ホルモン受容体発現の特異的パターンが前立腺がんに対する遺伝的素因と関連している可能性があることを示唆している。 [121]

AR遺伝子多様体を継承することで生じるAR活性の変化が前立腺がんリスクに影響を及ぼしている可能性がある。AR遺伝子(X染色体に位置する)のエクソン1に含まれる多型トリヌクレオチドのCAGおよびGGNからなるマイクロサテライトの反復数は、前立腺がんリスクと相関していることが示されている。 [122] [123] CAG反復数と前立腺がんリスクの間では逆方向の関連性があってGGN反復数と前立腺がんリスクの間では正の関連性があることを示唆する研究もある;しかしながら、その証拠は一貫していない。 [120] [122] [123] [124] [125] [126] [127] [128] [129] [130] [131] [132] ケースコントロール研究19件のメタアナリシスは、短いCAGの長さ(オッズ比[OR]、1.2;95%信頼区間[CI]、1.1-1.3)および短いGGNの長さ(OR、1.3、95%CI、1.1-1.6)の両者と前立腺がんの間に統計的に有意な関連を示した;しかしながら、症例および対照間の反復の数における絶対的な差は1未満であり、こうしたわずかな統計的有意差に生物学的意味があるのかどうかという疑問を研究者に与えている。 [133] その後、前立腺がん発症例2,036人および民族的にマッチさせた対照2,160人を対象とした大規模多民族コホート研究で、CAG反復数と前立腺がんとの間に統計的に有意な関連性はみられないことが確認された(OR、1.02;P = 0.11)。 [134] スウェーデン人の前立腺がん男性1,461人と対照男性796人を対象とした研究では、ARアレルでCAG反復数が22を超えると、前立腺がんとの間に関連性がみられることが報告された(OR、1.35;95%CI、1.08-1.69;P = 0.03)。 [135]

米国では白人男性に対して黒人男性の前立腺がんリスクが高いことの説明に役立つ可能性がある遺伝子修飾因子を同定するために、Flint Men's Health Studyからのアフリカ系米国人男性を対象にAR遺伝子のCAGおよびGGNの反復数多型が解析された。 [136] この集団ベースの研究では、アフリカ系米国人の前立腺がん患者131人およびスクリーニングで陰性であったアフリカ系米国人の対照340人において、AR反復数が少ないことと前立腺がんリスクが関係している証拠は認められなかった。これらの結果を過去の小規模な3件の研究で得られたデータと合わせると [134] [137] [138] 、アフリカ系米国人男性では、AR反復数が少ない多様体による前立腺がんリスクに対する寄与はほとんどないことが示される。

AR遺伝子(X染色体上に位置する)における生殖細胞病原性多様体がまれに報告されている。R726L病原性多様体が、可能性のある寄与因子としてフィンランドにおける散発性および家族性の前立腺がんのいずれも約2%に同定されている。 [139] AR蛋白のトランス活性化特異性(transactivational specificity)を変化させるこの多様体は、連続した散発性前立腺がん症例418例中の8例(1.91%)、家族性症例106例中の2例(1.89%)、および正常血液ドナー900人中の3人(0.33%)に発見され、両症例群について有意に高い前立腺がんOR、5.8が示された。その後のフィンランドの研究では、早期発症型前立腺がん症例38人および男性から男性への伝達の証拠がみられない36の前立腺がん多発家系を対象として、家族性症例の1人に別の1つのR726L病原性多様体が明らかになったが、AR遺伝子における新たな生殖細胞多様体はみられなかった。 [140] これらの研究者らは、フィンランドにおけるAR遺伝子の生殖細胞病原性多様体は家族性および早期発症型症例のごく一部を説明するに過ぎないと結論付けた。

60のアフリカ系米国人(n = 30)多発家系および白人(n = 30)多発家系からのゲノムDNAの研究により、黒人同胞群の3人の罹患家系員においてAR遺伝子の生殖細胞系ミスセンス多様体、T559Sが新たに同定されたが、白人家系では同定されなかった。この多様体が明らかに有害であることを示す機能のデータは発表されなかった。これは、追加のデータが必要な示唆的知見として報告された。 [141]

ステロイド5-アルファ-リダクターゼ2遺伝子(SRD5A2)

分子疫学研究では、アンドロゲン代謝カスケードにも関与しているステロイド5-アルファ-リダクターゼ2遺伝子の遺伝的多型についても解析されている。5-アルファ-リダクターゼの2つのアイソザイムが存在する。5-アルファ-リダクターゼタイプII(SRD5A2)をコードする遺伝子は、2番染色体に位置する。この遺伝子は、5-アルファ-リダクターゼタイプIIによりテストステロンが不可逆的にジヒドロテストステロン(DHT)に変換される場所である前立腺で発現する。 [142] 証拠は、中国および日本の男性を含め前立腺がんのリスクが比較的低い集団において、5-アルファ-リダクターゼタイプII活性が低いことを示唆する。 [143] [144]

SRD5A2遺伝子の非翻訳領域における多型は同じく前立腺がんのリスクと関連するであろう。 [145] 10のアレルは、TAジヌクレオチド反復数が異なる3つのファミリーに分類される。 [142] [146] これらの多型の臨床的意義は決定されていないが、TA反復アレルのなかには酵素活性の上昇を促進するものがあり、ひいては前立腺内のDHTの値を増加させうる。 [120] [142] その後のメタアナリシスでは前立腺がんリスクとTA反復多型間の統計的に有意な関連性は検出されなかったが、関係を明確に除外できたわけではない。 [147] このメタアナリシスではまた、以下の2つのコード化多様体の潜在的な役割も調査された:A49TおよびV89L。V89Lとの関連性は除外され、A49Tの役割は前立腺がん感受性に対して最大でもわずかな影響しか及ぼさないことが明らかにされた。しかし後者の観察はバイアスか偶然で説明できる可能性もある。1,461人のスウェーデン人の前立腺がん男性および796人の対照男性に関する研究では、SRD5A2における2つの多様体と前立腺がんリスクとの間に関連性が報告された(OR、1.45;95%CI、1.01-2.08;OR、1.49;95%CI、1.03-2.15)。 [135] 8,615例の症例および9,089例の対照を含む25件のケースコントロール研究の別のメタアナリシスでは、V89L多型と前立腺がんリスクとの全体的な関連性は認められなかった。サブグループ解析では、LL遺伝子型を保有する65歳未満の男性(症例323例および対照677例)は前立腺がんとのわずかな関連を示した(LL vs VV、OR、1.70;95%CI、1.09-2.66およびLL vs VV + VL、OR、1.75;95%CI、1.14-2.68)。 [148] その後に系統的レビューおよび27件の非家系ケースコントロール研究を含むメタアナリシスが実施され、V89LまたはA49T8のいずれかの多型と前立腺がんリスクとの間に、統計的に有意な関連性は認められないことが明らかになった。 [149]

アフリカ系米国人症例131人および対照342人を対象に、アンドロゲンの生合成、活性化、代謝および分解(CYP17CYP3A4CYP19A1、およびSRD5A2)および正常な前立腺細胞の分裂促進的活性と抗アポトーシス性活性の刺激(IGF-1およびIGFBP-3)に関与するいくつかの遺伝子における多型について、前立腺がんとの関連性が調査された。CYP17遺伝子における3つのSNP(rs6163、rs6162、およびrs743572)に関してアレルの頻度は症例と対照間で差は認められなかったが、これらのSNPのへテロ接合体遺伝子型はリスク低下と関連することが明らかにされた(それぞれ、OR、0.56;95%CI、0.35-0.88;OR、0.57;95%CI、0.36-0.90;OR、0.55;95%CI、0.35-0.88)。IGF-1イントロン2におけるSNP、rs5742657間での関連を示唆する証拠も発見された(OR、1.57;95%CI、0.94-2.63)。 [150] これらの知見を確認するため、追加の研究が必要である。

エストロゲン受容体ベータ(Estrogen receptor-beta)遺伝子

他の研究者により、エストロゲン経路に関与する遺伝子における多様性の潜在的な寄与が調査されている。前立腺がん症例1,415例および年齢でマッチングした対照801例のスウェーデンの集団研究では、エストロゲン受容体ベータ(estrogen receptor betaER-beta)遺伝子におけるSNPと前立腺がんとの関連が調査された。ER-betaのプロモーター領域における1つのSNPであるrs2987983は、全前立腺がんリスク1.23および限局性疾患リスク1.35と関連していた。 [151] この研究では再現が待たれる。

E-カドヘリン遺伝子

腫瘍抑制遺伝子 E-カドヘリンCDH1とも呼ばれる)における生殖細胞病原性多様体が遺伝性胃がんを引き起こす。E-カドヘリンのプロモーター領域に位置し、-160→Aと表記されるSNPは、この遺伝子の転写活性を変化させることが明らかにされている。 [152] E-カドヘリンにおける体細胞病原性多様体は、多くの種類のがんで浸潤性悪性腫瘍の発現に関与していることが示されているため [153] 、この機能的に意義のあるプロモーターは、がんリスクの修飾因子となる可能性があるという証拠を求めて、研究者らは調査を行っている。16種類のがんを対象とした47件のケースコントロール研究のメタアナリシスには、前立腺がんコホート(3,570人の症例と3,304人の対照)が含まれていた。リスクアレルキャリアにおける前立腺がん発症のORは、1.33(95%CI、1.11-1.60)であった。しかしながら、この研究の著者らは、データセットにバイアス源があり、主に個々のコホートにおける症例数が少ないことに起因することを指摘している。 [154] この所見に再現性があり、かつ生物学的にも臨床的にも重要であるかどうかを判断するには、さらに研究が必要である。

Toll様受容体遺伝子

慢性炎症が前立腺がん発がんにおける重要な危険因子である可能性について大きな関心が寄せられている。 [155] Toll様受容体ファミリーは、内因性免疫系の重要な構成要素として認識されており [156] 、外因性微生物およびさまざまな内因性基質のリガンドを認識する。この遺伝子ファミリーは自己免疫疾患の状況において最も広範に研究されているが、前立腺がんリスクの潜在的な修飾因子としてこの経路のさまざまなメンバーの遺伝的多様性を分析している一連の研究もある。 [157] [158] [159] [160] [161] 結果は一貫しておらず、リスク低下から関連性ゼロ、リスク増加までさまざまである。

1件の研究は、米国がん協会のCancer Prevention Study II Nutrition Cohortからの前立腺がん発生症例1,414例および年齢をマッチングした対照1,414例に基づいていた。 [162] これらの研究者は、Toll様受容体遺伝子群の3つのメンバーであるTLR-10TLR-1、およびTLR-6を含む染色体4p14上のある領域における28のSNPのジェノタイピングを行った。2つのTLR-10SNPおよび4つのTLR-1SNPが前立腺がんリスクの有意な低下と関連し、ホモ接合性多様体型の遺伝子型で29~38%であった。さらに詳細な解析により、これら6つのSNPはその効果について独立しているのではなく、むしろリスク低下との単一の強い関連を示すことが実証された(OR、0.55;95%CI、0.33-0.90)。グリソンスコア、良性前立腺肥大症の病歴、非ステロイド性抗炎症薬の使用、および肥満指数などの共変量を考慮に入れると、この関連に有意差は認められなかった。これは現在までに実施された最大規模の研究であり、4p14領域で評価された最も包括的なSNPのパネルを含んでいた。これらの観察から前立腺がんの病因におけるToll様受容体遺伝子のさらなる研究の基盤が提供される一方で、以前の研究との不一致およびこれらの関連の生物学的根拠は何であるかについての情報不足からこの所見の解釈には注意が必要である。

リスクについて検索されたその他の遺伝子および多型

ステロイドホルモン経路に関わる遺伝子のSNPについては、これまで散発性および家族性の前立腺がんを対象に、主として白人を祖先とする症例を用いて研究されている。 [163] 別の研究では、非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系白人、およびアフリカ系米国人の男性を網羅した症例886例および対照1,566例における前立腺がんリスクについて、ステロイドホルモン経路における12の遺伝子に位置する116のタグ付けされたSNPが評価された。 [164] 遺伝子は、CYP17HSD17B3ESR1SRD5A2HSD3B1HSD3B2CYP19CYP1A1CYP1B1CYP3A4CYP27B1、およびCYP24A1であった。CYP19におけるいくつかのSNPは3集団すべてにおいて前立腺がんリスクと関連した。複数の遺伝子にまたがるSNPが関与するSNP-SNP間相互作用の解析により、ヒスパニック系白人ではHSD17B3CYP19、およびCYP24A1が関与する7つのSNP相互作用が明らかになった(P = 0.001)。非ヒスパニック系白人では、HSD3B2HSD17B3、およびCYP19における4つのSNP相互作用が明らかになった(P < 0.001)。アフリカ系米国人では、SRD5A2HSD17B3CYP17CYP27B1CYP19、およびCYP24A1内のSNPが有意な相互作用を示した(P = 0.014)。非ヒスパニック系白人では、HSD3B2およびCYP19における3つのSNPでリスクアレルを保有する男性に前立腺がんの累積リスクが確認された(OR、2.20;95%CI、1.44-3.38;P = 0.0003)。ヒスパニック系白人では、CYP19およびCYP24A1における2つのSNPでリスクアレルを保有する男性に前立腺がんの累積リスクが確認された(OR、4.29;95%CI、2.11-8.72;P = 0.00006)。この研究ではステロイドホルモン経路に関わる遺伝子の潜在的に重要なすべてのSNPが評価されたわけではないが、前立腺がんリスクへの寄与を査定すべく、複数の集団における複遺伝子性の効果を評価する際にどのように研究を実施できるかが示されている。

葉酸経路に関わる6つの遺伝子(MTHFRMTRMTHFD1SLC19A1SHMT1、およびFOLH1)の8つの多型間の関係を調査したメタアナリシスは、8件のケースコントロール研究、4件のGWAS、および英国のProstate Testing for Cancer and Treatmentというネスティドケースコントロール研究からのデータを併合することで実施された。検査された被験者数はこれらの多型間で異なり、解析されたのは最大で症例:10,743例および対照:35,821例であった。この報告によると、既知の一般的な葉酸経路のSNPは、白人男性における前立腺がん感受性に対して意味のある影響を及ぼさないと結論付けられた。 [165]

民族性が白人の男性からなる病院ベースの前立腺がんコホート(N = 4,073)を対象に、p53経路の遺伝子に含まれる4つのSNP(p53の機能を調節している遺伝子のMDM2MDM4、およびHAUSPに含まれる3つ、およびp53に含まれる1つ)について、侵攻性前立腺がんとの関連性が解析された。 [166] しかし、その後実施されたMDM2(T309G)と前立腺がんリスクに注目したケースコントロール研究のメタアナリシスでは、関連性は認められなかった。 [167] したがって、同定されたさまざまな関連性の生物学的根拠について、さらなる研究が必要である。

前立腺がん感受性に関連している可能性のある遺伝子について解析している別のケースコントロール研究を表3に要約している。

表3.前立腺がんリスクに関連する遺伝子に対するケースコントロール研究

遺伝子 位置 研究 症例 対照 前立腺がんとの関連 コメント
AJ = アシュケナージユダヤ人;CI = 信頼区間;HR = ハザード比;OMIM = Online Mendelian Inheritance in Man;OR = オッズ比;PSA = 前立腺特異抗原;SNP = 一塩基多型。
AMACROMIM 5p13.3 Zheng et al.(2002) 家族性前立腺がんの米国人男性159人と散発性前立腺がんの男性245人 前立腺がんスクリーニングプログラムに参加した前立腺がんに罹患していない男性211人 非評価 家族性前立腺がん症例と罹患していない対照の遺伝子型の頻度を比較したところ、家族性前立腺がんに関連する4つのミスセンス多様体がみつかった(M9V、G1157D、S291L、K277E)。
Daugherty et al.(2007) 55歳未満で前立腺がんに罹患している家族歴で非選択の米国人男性1,318人(非ヒスパニック系白人1,211人と非ヒスパニック系黒人107人) 前立腺がんスクリーニングプログラムに参加した前立腺がんに罹患していない米国人男性1,842人(非ヒスパニック系白人1,433人と非ヒスパニック系黒人409人) 前立腺がんはいずれのSNP(M9V、IVS+169G>T、D175G、S201L、Q239H、IVS4+3803C>G、K277E)とも関連が認められなかった。 イブプロフェンの使用を報告し、4つのSNP(M9V、D175G、S201L、およびK77E)における特異的アレルまたは特異的な6つのSNPハプロタイプ(TGTGCG)を有する男性では、前立腺がんのリスクが低かった。
Levin et al.(2007) 家族性の早期発症前立腺がん家系である332家系に属する、家族性前立腺がんの米国白人男性449人 前立腺がん男性の兄弟で罹患していない男性394人 SNP rs3195676(M9V):  
OR、0.58(95%CI、0.38-0.90;劣性モデルでP = 0.01)
NBS1OMIM 8q21 Hebbring et al.(2006) 909家系に属する家族性前立腺がんの米国人およびヨーロッパ人男性1,819人と、散発性前立腺がんの米国人およびヨーロッパ人男性1,218人 米国人およびヨーロッパ人が混在する集団ベースの対照で構成された対照697人と前立腺がん家系の罹患していない男性 657del5は対照集団には検出されなかった;そのため、関連性を検査することができなかった。 657del5のキャリア頻度は、家族性前立腺がんで0.22%(909人中2人)、および散発性前立腺がんで0.25%(1,218人中3人)だった。
Cybulski et al.(2013) 前立腺がんポーランド人男性3,750人 がんの既往のないポーランド人男性3,956人 675del5:OR、2.5(95%CI、1.5-4.0;P = 0.0003) NBS1病原性多様体は、高い死亡率(HR、1.85)と低い5年生存率(HR、2.08)に関係していた。
前立腺がん診断時年齢60歳未満:OR、3.1(95%CI、1.5-6.4;P = 0.003)
家族性前立腺がん:OR、4.3(95%CI、2.0-9.0;P = 0.0001)
KLF6 (OMIM) 10p15 Narla et al.(2005) 非血縁の294家系に属する散発性前立腺がんの米国人男性1,253人と家族性前立腺がんの男性882人 がんの既往がない男性1,276人 IVS1-27G>A:  
家族性症例:OR、1.61(95%CI、1.20-2.16;P = 0.01)
散発性症例:OR、1.41(95%CI、1.08-2.00;P = 0.01)
Bar-Shira et al.(2006) 前立腺がんのイスラエル人男性402人(251人がAJ、151人が非AJ) 20~45歳のイスラエル人女性300人(200人がAJ、100人が非AJ) IVS1-27G>A:
AJのみ:OR、0.60(95%CI、0.35-1.03;P = 0.047)
統合コホート:OR、0.64(95%CI、0.42-0.98;P = 0.047)
EMSYOMIM 11q13.5 Nurminen et al.(2011) 初回スクリーニング:家族性前立腺がんのフィンランド人男性184人 がんの既往がないフィンランド赤十字社の血液ドナー男性923人 IVS6-43A>G: IVS6-43A>Gは、家族歴で選別されていない症例の侵攻性前立腺がん(PSAが20以上またはグリソンスコアが7以上)のリスク増加とも関連していた(OR、6.5;95%CI、1.5-28.4;P = 0.002)。
妥当性評価:非選別の前立腺がん症例2,113件 家族性症例:OR、7.5(95%CI、1.3-45.5;P = 0.02)
Nurminen et al.(2013) 非選択の前立腺がんフィンランド人男性2,716人 がんの既往がないフィンランド赤十字社の血液ドナー男性908人 rs10899221:OR、1.29(95%CI、1.10-1.52;P = 0.008)  
rs72944738:OR、1.26(95%CI、1.04-1.52;P = 0.03)
前立腺がんでEuropean Randomized Study of Screening for Prostate CancerのPSAスクリーニング群に参加したフィンランド人男性1,318人 rs10899221:OR、1.40(95%CI、1.16-1.69;P = 0.002)
rs72944738:OR、1.46(95%CI、1.16-1.69;P = 0.003)
CHEK2OMIM 22q12.1 Dong et al.(2003) 前立腺がん腫瘍84例;59歳未満で診断を受けた男性の前立腺がん腫瘍92例;前立腺がんの家族歴がない前立腺がん米国人男性400人;149家系に属する前立腺がん男性298人(1家系当たり男性2人) 前立腺がんスクリーニング検査陰性の前立腺がんに罹患していない米国人男性510人 18 CHEK2病原性多様体が同定されたのは、前立腺がん患者の4.8%(578人中28人)、非罹患男性の423人中0人、前立腺がんの149家系中9家系であった。 157T置換は同数の症例と対照で検出されたため、多型である可能性が高いと報告された。
Cybulski et al.(2013) 前立腺がんポーランド人男性3,750人 がんの既往のないポーランド人男性3,956人 任意のCHEK2病原性多様体:OR、1.9(95%CI、1.6-2.2;P < 0.0001)  
前立腺がん診断時年齢60歳未満:OR、2.3(95%CI、1.8-3.1;P < 0.0001)
家族性前立腺がん:OR、2.7(95%CI、2.0-3.7;P < 0.0001)


次の遺伝子を対象に部位特異的な前立腺がん感受性がケースコントロール研究で評価された:EMSYKLF6AMACRNBS1CHEK2ARSRD5A2ER-betaE-カドヘリン、およびToll様受容体遺伝子。これらの研究はいずれも、この疾患の遅発的性質と一般集団では前立腺がんの背景率が高いことによって複雑化している。加えて、分離研究と連鎖研究でともに示唆されるように、遺伝性前立腺がんでは真の広範な遺伝子座異質性が存在するらしい。この点において、遺伝性前立腺がんは、複数の遺伝子が同じまたは酷似した臨床的表現型を作りだせる他のいくつかの主要な成人発症型遺伝性がん症候群(例、遺伝性乳がん/卵巣がん、リンチ症候群、遺伝性黒色腫、および遺伝性腎がん)と似ている。さらに、遺伝性前立腺がん感受性の証拠にのみ基づく、これらの遺伝子に対する遺伝子検査の臨床的妥当性および有用性は、未だ確立されていない。

混合マッピング

混合マッピングは、祖先が混在している場合に形質および/または疾患に関連する遺伝的多様体を同定するために用いられる方法である。 [178] この方法は、数千年前に分化した2つの人種間での混合が最近行われた個人を対象とする場合に、最も効果を発揮する。こうした個人のゲノムには、それぞれの祖先に固有の大きなブロックがモザイク状に含まれている。この方法では、ある先祖グループと他のグループを比較した場合の疾患発生率の相違を利用する。リスク遺伝子座は、より発生率の高い先祖グループに関連の深い領域に存在していると推測される。マッピングの成功は、祖先と関連する集団特異的な遺伝マーカーの利用可能性と混合以降の世代数に左右される。 [179] [180]

混合マッピングは、アフリカ系米国人の前立腺がんリスクが高いことに関連する遺伝子座を同定する上で、特に注目される方法である。アフリカ系米国人男性では、ヨーロッパ系の祖先をもつ男性と比較して前立腺がんの発生リスクが高く、アフリカ系米国人男性のゲノムは、アフリカ系の領域とヨーロッパ系の領域とがモザイク状になっている。そのため、これら2グループ間の発生率の差を説明する継承された多様体は、アフリカ系の祖先に関連が深い領域に存在するという仮説が立てられる。前立腺がんの混合研究で、前立腺がんの男性におけるアフリカ系祖先に関連の深い領域を特定するために、アフリカ系米国人の症例と対照について、ゲノムワイドで祖先に関する遺伝子マーカーの遺伝子型が調べられた。混合研究によって、前立腺がんと関連している以下の染色体領域が同定されている:


  • 5q35(Zスコア = 3.1) [181]

  • 7q31(Zスコア = 4.6) [181]

  • 8q24(LODスコア = 7.1) [181] [69]

このアプローチの利点は、最近生じた混合により、一連の長い連鎖不平衡(最大10万対の塩基対)ができることに関連している。 [182] つまり、前立腺がんなどの特定の疾患に関連する遺伝的多様体を探索するために必要なマーカーは、GWASの成功に必要なマーカーの数より少なくて済む。 [179] (詳しい情報については、本要約のGWASのセクションを参照のこと。)

ゲノムワイド関連解析(GWAS)

概要


  • GWASでは、特定の疾患リスクなど、個別の表現型に影響を及ぼす遺伝性の遺伝子多様体を特定することができる。

  • 前立腺がんのような複雑な疾患では、疾患発症リスクは、複数の遺伝的および環境的因子の産物である;個々の因子の全体的なリスクに対する貢献度は、比較的小さい。

  • 現在まで、GWASにより、前立腺がんリスクと関連した100以上の一般的な遺伝子多様体が発見されている。

  • 既知のすべての前立腺がんリスクマーカーについては、比較的簡単にジェノタイピングが可能である;しかし、この情報が、一般に用いられる家族歴のような因子から得たリスクの推定値を実質的に改善できることを実証した研究は今のところ存在しない。

  • GWASで特定された多様体の臨床的関連性は、依然として不明である。


GWASの概要

全ゲノム検索は、前立腺がんを含む多くの複合疾患 [183] に対する感受性アレルの同定に成功している。このアプローチは、有病率が高い家系内で同時分離している、遺伝的リスクを伴う多様体を検索する連鎖解析と対比することが可能である。連鎖解析では、まれで浸透度が高く、予測できる遺伝パターン(例、常染色体優性常染色体劣性、X連鎖性、およびミトコンドリア性)で分離する多様体を検出するようにデザインされている。一方、GWASは多数の一般的な浸透度の低い遺伝的多型を特定するのに最も適している。前立腺がんのように複合表現型の遺伝的基礎は、それぞれが軽度のリスクを与える多くのアレルによって支配されているという仮定の下で、GWASが実施される。GWASにおいて遺伝子型解析される遺伝的多型のほとんどが一般的なものであり、対象となる祖先の集団(例、ヨーロッパ系の男性)内におけるマイナーアレル頻度は1%超~5%である。GWASではゲノム全体ですべての一般的な遺伝的多様体が調査され、ある疾患または表現型の発生率に関連するアレルが検索される。 [184] [185] 検査対象の染色体上で、お互いに近い位置にある多くのアレル間に強い相関(連鎖不均衡と呼ぶ)が認められるため、1,000万にも及ぶ既知のSNPをすべて調べなくてもゲノム全体を「スキャン」することが可能となる。GWASにより、約100万~500万個のSNPが検査可能で、ゲノム全体で一般的な遺伝的多様体のほぼすべてを確認できる。

GWASでは、症例と対照間で各SNPのアレル頻度が比較される。アレル頻度が対照集団と比較した症例で有意に偏向しているという有望なシグナルは、複製コホートで検証される。表現型に関連する多様体を識別する統計的な検出力を満たすために、一般的にはそれぞれ数千人という多数の症例と対照を調査する。GWASで解析されるSNPが一般的に100万個であるため、標準的な統計閾値を使用すると、偽陽性の判定が多くなることが予想される。そのため、厳しい統計的法則を採用して陽性と判定し、通常はP < 1 × 10-7の閾値を用いる。 [186] [187] [188]

現在までに、検出力に優れたGWASによって前立腺がんに関連する100以上の多様体が特定され、独立したコホートで検証されている(National Human Genome Research Institute GWASカタログおよび [189] を参照のこと)。 [190] これらの研究により、特定の遺伝的多様体と前立腺がんリスクとの間に説得力のある関連性が明らかにされている。さらに早期発症型前立腺がんの男性は、より高齢の前立腺がん症例や一般対照に比べてリスクアレルの累積数が多い。 [191] しかしながら、この知見は以下のわずかだが重要な検討を加えて検証すべきである:

  1. これまでに報告されたGWASは、集団内で比較的一般的な遺伝的多型を特定するようにデザインされている。集団内に高頻度にみられるアレルが単独でがんリスクに実質的に寄与する可能性はきわめて低い。前立腺腫瘍形成の多遺伝子性を考え合わせると、このことは、

    今日までにGWASにより特定された1つの多様体による寄与はいずれもきわめて小さく、一般に疾患リスクのORは1.3未満である

    ことを意味している。さらに、何万もの症例と対照を対象とした一般的多型についての広範なゲノムワイド検索にもかかわらず、今日までのGWASの結果では、前立腺がんリスクにおける遺伝的要素を説明できるものは半数にも満たない。 [189] [192] [193]
  2. GWASによって明らかになった多様体が疾患リスクの直接的な要因となる可能性は低い。

    前述したように、SNPは連鎖不均衡ブロック内に存在し、単に検査対象ブロック内にある1組の多様体 - 既知および未発見のいずれでも - の代理指標となるだけである。原因となるアレルは連鎖不均衡ブロック内のどこかに位置している。
  3. 異なった先祖グループが混合しているためにGWASの結果が混乱することがある(すなわち、統計的に有意な結果が、疾患との真の関連性というより、症例 vs 対照における被験者数の不釣り合いを反映している可能性がある)。そのため、GWASの被験者は、研究デザイン上、単一の先祖グループから構成される。その結果、

    ゲノムワイド関連解析では、一部の集団が依然として過小評価される

これらの点についての意味合いは、以降でより詳細に考察する。追加の詳しい情報が別の場所で見つかることがある。 [194]

GWASで同定された感受性遺伝子座

2006年より複数の全ゲノム解析で前立腺がんリスクとの関連性が探索され、いずれも同一の染色体遺伝子座8q24にたどりついた。このアレルに由来する前立腺がんの集団寄与リスクは8%であった。結果は、ヨーロッパ系米国人、アフリカ系米国人、アイスランド人、スウェーデン人の集団のいずれにおいても同様であった。 [68] [70] [71] [72] [73] [74] [75] [80] [81] [82] [83] [195] [86] [87] 全体では、約9つの遺伝的多型がすべて独立して疾患に関連しており、5つの異なった8q24リスク領域内に存在していた。 [86] [87]

8q24の前立腺がんリスク遺伝子座の発見以来、数千の症例と対照からなる多段階GWASにより、他の染色体のリスク遺伝子座でも同様に100を超える多様体が特定され、独立したコホートで検証されている。現在までにヨーロッパ系男性で報告された最も説得力のある関連性については、National Human Genome Research Institute GWASカタログで注釈付けられている。

ヨーロッパ系以外の集団を対象としたGWAS

前立腺がんについて現在までに生成されたGWASデータのほとんどは、ヨーロッパ系の集団から得られたものである。この欠点は、連鎖不均衡の構造、SNP頻度、および疾患発生率が祖先グループによって異なっていることを考えると深刻である。すべての患者に対して意味のある遺伝子データを提供するには、具体的な民族グループ向けに、デザインに優れ、検出力が適切なGWASを実施しなければならない。 [196] これに関しては、研究のほとんどがアフリカ系アメリカ人、中国人、および日本人の男性を中心に行われている。現在までに非ヨーロッパ系男性で報告された最も説得力のある関連性については、National Human Genome Research Institute GWASカタログで注釈付けられている。

アフリカ人を先祖にもつアメリカ人男性は、他のいずれの集団よりも前立腺がんのリスクが高いため、特にアフリカ系アメリカ人集団への関心が高い。その上、8q24のリスク遺伝子座における遺伝的多様性がアフリカ系アメリカ人とヨーロッパ系アメリカ人の疾患発生率における違いに寄与していると考えられる。 [69] ヨーロッパ系男性におけるGWAS所見をアフリカ系男性に適用可能かどうか判定することを目的とした研究は、わずかしか行われていない。アフリカ系アメリカ人症例3,425人とアフリカ系アメリカ人対照3,290人を対象に、ファインマッピングにより既知の前立腺がんリスク遺伝子座を検索した研究が1件ある。 [197] 別の研究では、約4,853例の前立腺がん症例と4,678例の対照で、それまでに報告されていた82のリスク多様体について調査した。 [198] リスクアレルの大多数(約83%)は、アフリカ系アメリカ人とヨーロッパ系アメリカ人で共通していた。

GWAS所見の臨床応用

GWASによって発見された多様体はリスクのマーカーとなるため、前立腺がんの発症を予測するスクリーニング手段として遺伝子型を利用することに関心が高まってきている。発見されたリスクSNPの数が増加するとともに、PSAおよび家族歴などの従来の変数に加えてリスクSNPが臨床コホートに適用されている。最初に判明した5つのリスクSNPに関する初期の研究では、臨床的に意味のあるデータが増えることを実証できなかった。 [78] その後の研究で、より大規模なリスクSNPパネルでも、大半のスクリーニング集団に対する有用性が実証できなかった。しかしながら、多数のリスクアレルを保有する少数の男性サブセットでは、前立腺がんを発症するリスクが明らかに高く、特に家族歴が陽性の男性で顕著であった。 [78] [199]

2012年7月に、Agency for Healthcare Research and Quality(AHRQ)から、GWASにより発見された前立腺がんリスクマーカーの生殖細胞系遺伝子型解析の臨床的有用性について検討した報告が公表された。 [200] 主に前述した試験から得られた証拠を基にして、この疾患を発症するリスクのある人を特定するには、確立されている前立腺がんリスクSNPは「識別能が劣る」とAHRQは結論付けた。同様に、他の研究の著者らは、メタアナリシスや大規模研究により他の「一般的な」リスクアレル(集団内の個人の1~5%以上が保有しているアレル)が明らかになるとはいえ、前立腺がん発生リスクの特定に対するGWAS多型の寄与は小さいと評価している。 [201]

2014年まで、約100の真(bona fide)の前立腺がんリスク多様体がアノテートされている。既知のリスクSNPのすべてと比較した多遺伝子リスクスコアが提案されており、集団平均と比較した前立腺がんリスクが上位10%のリスク層の男性で2.9倍高く、上位1%のリスク層の男性で5.7倍高いことが説明できる可能性がある。おそらく前立腺がんの家族歴のある男性に重点を置いて生殖細胞遺伝子検査を標的とすることは、PSAによるスクリーニングの正確度の改善に役立つ可能性があると著者らは結論した。 [189]

現時点までのGWASの知見では、遺伝性疾患リスクの33~50%のみが説明される。遺伝的リスクの残りの部分を解明する研究が、現在進められている。リスクのORがより高く、よりまれなアレルの発見もその1つである。 [202]

さらに、コピー数多様体などの他の遺伝的多型がますます検査に受け入れられるようになってくる。遺伝性前立腺がんリスクの全容がより完全に明らかになるにつれて、生殖細胞系の情報が臨床的に有用となることが期待される。最後に、GWASによって、前立腺がんリスク機序への見識がより多く得られている。注目すべきことに、報告されている前立腺がんリスクアレルのほぼすべてがゲノムの非蛋白コード領域に存在している;しかしながら、疾患感受性の基礎にある生物学的機序は当初不明であった。現在では、大半のリスク多様体が調節エレメントおよびそれに続いて遠隔遺伝子の活性に影響を及ぼすことが明らかになっている。 [203] [204] [205] [206] [206] [207] [208] [209] [210] [211] GWASにより、これらのネットワークが解明されるのにつれて、新たな治療法および化学予防戦略が続いて現れると期待される。

GWASに対する修正アプローチ

2012年のある研究では、リスクに関連した多型を特定するために新しいアプローチが使用された。 [212] ARが前立腺の腫瘍形成に大きな役割を果たすという十分に確立した法則に基づいて、研究者らはARがDNAに結合する領域に存在するSNPを標的とした。症例1,964人および対照3,172人のJohns Hopkins Hospital コホートおよび症例1,172人および対照1,157人のCancer Genetic Markers of Susceptibilityコホートを対象に、SNPを選択して遺伝型解析するために、前立腺がん細胞株を用いてゲノム全体で数千のAR結合領域をマップした過去の研究から得られたデータを活用した。この修正GWASにより、過去にがん発生への関与が疑われていた12q13.13のKRT8座に位置するSNP(rs4919743)と前立腺がんリスクとの関連性が明らかになり、ORは1.22(95%CI、1.13-1.32)であった。この研究は、妥当な仮説および過去のデータを使用して、リスク多様体に関する全ゲノム探索の指針としているため注目に値する。他のアプローチには、前立腺がんではなく表現型にかかわるSNPの評価がある。 [213] [214]

結論

これらの遺伝子座における遺伝的多様性と前立腺がんリスクとの関連性について、統計的証拠は圧倒的に多いが、これらの多様体の臨床的重要性およびそれがリスクを高めるに至る機序は不明であり、さらに特徴を明らかにする必要がある。その上、これらの遺伝子座に伴うリスク推定値はきわめて小さく、全体的な遺伝的リスクの一部しか説明していない。今後の研究では、1000 Genomes Projectのような塩基配列決定作業を通して分類された比較的まれなアレルのゲノムワイド関連解析が含められる。 [215] その集団で1%未満の頻度しかない疾患関連アレルは、より浸透度が高く、臨床的に有用であることが証明される可能性がある。その上、ヨーロッパ集団以外で遺伝的リスクの全貌について説明するには、さらに研究が必要である。最後に、遺伝的リスクアレルの個人的および集団的な影響がプロスペクティブに評価されるまでは、これらの臨床的有用性を完全に評価するのは依然として困難である。

前立腺がんの侵攻性に関連する遺伝的多様体

前立腺がんは生物学的および臨床的に不均一である。多くの腫瘍は緩慢性であり、観察単独で適切に管理される。他の腫瘍は侵攻性が強く、致命的であることが示されている。診断時に前立腺がんの侵攻性を判定するために、グリソンスコアやPSAなど複数の変数が用いられるが、いずれも完全ではない。治療法の決定は正確な予後情報に左右されると考えられるため、他のマーカーが追加で必要になる。生殖細胞系の遺伝子多様体は、発現がみられ、検出しやすく、生涯を通して変化しないため、魅力的なマーカーである。

現時点までに得られた侵攻性疾患の遺伝的リスクに関する知見は、予備的なものとみなされる。以下に示すように、前立腺がんの侵攻性に関係する生殖細胞系SNPは、主に次の3つの解析法から得られている:1)リスク遺伝子候補内の一般的な多様体のアノテーション、2)侵攻性について既知の前立腺がんリスクSNP全体の評価、3)前立腺がんの侵攻性に関するGWAS。得られた知見を検証し、これらの関連性をプロスペクティブに評価するには、さらなる研究が必要である。

前立腺がんリスク全体の遺伝的研究と同様に、侵攻性前立腺がんの遺伝的リスクに関する初期研究は候補遺伝子の多型に焦点を当てていた。 [166] [216] [217] [218] [219] [220] [221] 続いて、GWASにより前立腺がんのリスクSNPが解明されたことを受け、複数の研究チームが、特定のリスクSNP全体が侵攻性にも関連しているかどうかを検討した。 [222] [223] [224] [225] [226] [227] [228] [229]

緩慢性の前立腺がん vs 侵攻性の前立腺がんに関連する遺伝的多様体の探索を目的とした、より偏りの小さい全ゲノム検索の開始に大きな関心が寄せられている。

遺伝的多様体と前立腺がんの侵攻性との関連が複数報告されている。米国国立がん研究所が主導した多段階症例単独GWASでは、12,518例の前立腺がん症例が検討され、以下の2つの多型で遺伝子型とグリソンスコアとの関連が明らかになった:5q14.3のrs35148638(RASA1P = 6.49 × 10-9)および3q26.31のrs78943174(NAALADL2P = 4.18 × 10-8)。 [230] この研究で明らかになった関連性は、高悪性度疾患の生物学に有益な見識を与える可能性があるが、これにより臨床的な有用性が証明されるかどうかは不明である。この研究では「前立腺がんの侵攻性」の定義に関する問題が生じる。グリソンスコアは、予後マーカーとして使用されているが、前立腺がん特異的生存または全生存の完全な代用ではない。

特に疾患関連転帰が確認された前立腺がん患者に焦点を当てるようデザインされた少数のGWASが開始されている。1件の研究、つまり最大規模の国際的な前立腺がん遺伝子型検査コホートの2つを解析のために統合したゲノムワイド関連解析(前立腺がん症例24,023例、3,513例の疾患特異的死亡を含む)で、前立腺がん特異的生存と有意な関連を示すSNPはなかった。 [231] 同様に、前立腺がん特異的死亡を評価したより小規模な研究(死亡196例、長期生存者368人)で、転帰と有意な関連を示す多様体はなかった。 [232] つい最近、前立腺がん患者24,023人についてGWASが実施され、遺伝子多様体と前立腺がん生存との有意な関係はないことが同様に明らかになった。 [230] これらの研究の著者らは、前立腺がんの転帰に関連するSNPは一般集団においてはかなりまれである(マイナーアレル頻度は1%未満)に違いないと結論付けた。


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前立腺がんリスクに臨床的に関連する可能性のある遺伝子

前立腺がんリスクに何らかの関連を有する遺伝子病原性多様体に対する遺伝子検査が登場し、この検査を利用して前立腺がんのリスクが高い個人を識別することが可能になった。選択されたコホートに基づく研究によると、BRCA1BRCA2、あるいはより小規模であるがミスマッチ修復(MMR)遺伝子に病原性多様体を有する男性では、前立腺がんのリスクが高くなる。臨床的遺伝子検査はこれらの遺伝子を対象とすることができるため、このセクションでは、これらの遺伝子の変化に基づく前立腺がんのリスクに関する情報について記述する。また、HOXB13の病原性多様体が遺伝性前立腺がんの少数例にみられるという報告もある。HOXB13の変異を調べる臨床検査も存在しているため、この遺伝子も本セクションの対象とする。

将来、別の遺伝子に前立腺がんリスクの臨床的関連性が見出される可能性がある。去勢抵抗性前立腺がんの男性から得られた転移腫瘍150例の臨床シークエンシングでは、男性の23%にDNA修復に関連する遺伝子の変化が同定された。 [1] 興味深いことに、これらの多様体の8%は生殖細胞系に存在していた。この成果は未検証ではあるものの、近い将来に何らかの生殖細胞多様体が同定され、臨床的関連性が見出される可能性をもたらす知見である。

BRCA1とBRCA2

BRCA1 [2] およびBRCA2病原性多様体の男性キャリアを対象とした複数の研究で、このような人は前立腺がんおよびその他のがんのリスクが高いことが実証されている。 [3] 男性のBRCA2病原性多様体キャリアでは、特に前立腺がんが一般集団よりも高率に観察されている。 [4]

BRCAに関連した前立腺がんリスク

BRCA病原性多様体キャリアにおける前立腺がんのリスクは、さまざまな設定で研究されている。

BRCA病原性多様体と前立腺がんリスクとの関連を明確にするために、いくつかのケースシリーズから得られた知見を表4に要約する。

表4.前立腺がんにおけるBRCA病原性多様体のケースシリーズ

研究 集団 前立腺がんリスク( 前立腺がんリスク(
BCLC = Breast Cancer Linkage Consortium;CDC = 疾病予防管理センター;CI = 信頼区間;OCCR = 卵巣がん集合領域;RR = 相対リスク;SIR = 標準化発生比。
a 乳がん、卵巣がん、および非黒色腫皮膚がんを除くすべてのがんを含む。
BCLC (1999) [5] BRCA2の連鎖または病原性多様体が陽性の173家系(3,728人、がん333例)を含むBCLC家系セットa 非評価 全体:RR、4.65(95%CI、3.48-6.22)
65歳未満の男性:RR、7.33(95%CI、4.66-11.52)
Thompson et al.(2001) [6] BRCA2病原性多様体が陽性の164家系(3,728人、がん333例)を含むBCLC家系セットa 非評価 OCCR:RR、0.52(95%CI、0.24-1.00)
Thompson et al.(2002) [2] 女性7,106人と男性4,741人を含むBCLC家系セット(うち2,245人がBRCA1病原性多様体キャリア、1,106人が検査で非キャリアが判明、8,496人が未検査) 全体:RR、1.07(95%CI、0.75-1.54) 非評価
65歳未満の男性:RR、1.82(95%CI、1.01-3.29)
Mersch et al.(2015) [4] 1997年から2013年までの単一施設における臨床遺伝学集団。CDCによるU.S. Statistics Reportにおける一般集団のがん発生率とがん発生率が比較された。 SIR = 3.809(95%CI、0.766-11.13)(有意ではない SIR = 4.89(95%CI、1.959-10.075)


Breast Cancer Linkage Consortiumから得られる推定値のデータは、乳がんおよび卵巣がんのリスクの明らかな証拠ならびに連鎖解析の適合性が確認されている厳選された家族集団から算出されているため、過大評価される可能性がある。しかし、BRCA2における生殖細胞病原性多様体と前立腺がんリスクとの関係に関する最近のレビューでは、この遺伝子は遺伝性乳がんおよび卵巣がん家系の男性家系員におけるリスクを有意に増加させるが、部位特異的な前立腺がん多発家系における役割は、あるとしてもごくわずかであろうという見方が支持されている。 [7] さらに、単に遺伝性前立腺がん感受性の証拠のみに基づいたBRCA検査の臨床的妥当性および有用性は、まだ確立されていない。

ある研究で、生殖細胞DNA修復遺伝子の病原性多様体と転移性前立腺がんとの関連が評価されている。がん家族歴または診断時年齢について非選択の男性692人のうち、5.3%(692人中37人)がBRCA2病原性多様体を有しており、0.9%(692人中6人)がBRCA1病原性多様体を有していたことが明らかになった。 [8]

前立腺がん男性におけるBRCA創始者病原性多様体の保有率

アシュケナージユダヤ人集団

イスラエルおよび北米における数件の研究で、前立腺がんのアシュケナージユダヤ人(AJ)男性におけるBRCA 創始者病原性多様体の頻度が解析されている。 [9] [10] [11] 2つの特異的なBRCA1病原性多様体(185delAGおよび5382insC)と1つのBRCA2病原性多様体(6174delT)は、祖先がAJの場合によくみられる。ユダヤ人の一般集団におけるこれらの病原性多様体のキャリア頻度は、185delAG病原性多様体で0.9%(95%信頼区間[CI]、0.7-1.1)、5382insC病原性多様体で0.3%(95%CI、0.2-0.4)、BRCA2の6174delT病原性多様体で1.3%(95%CI、1.0-1.5)であった。 [12] [13] [14] [15] (BRCA1およびBRCA2遺伝子に関する詳しい情報については、乳がんおよび婦人科がんの遺伝学のPDQ要約にある高浸透度の乳がんおよび/または婦人科がん感受性遺伝子のセクションを参照のこと。)これらの研究において、相対リスク(RR)は一般に1を上回っていたが、統計的に有意なものはごく少数であった。これらの研究の多くは、アシュケナージBRCA創始者病原性多様体のキャリアに存在する小さいが臨床的意義のある前立腺がんリスクを除外するには十分な検出力をもっていなかった。

Washington Ashkenazi Study(WAS)では、ワシントンD.C.出身の5,000人を超えるアシュケナージユダヤ系(AJ)アメリカ人ボランティアを対象として血縁コホート解析アプローチが用いられ、BRCAアシュケナージ創始者病原性多様体のいずれかを保有する男性における前立腺がんの累積リスクが推定された。70歳までの累積リスクは、創始者病原性多様体のキャリアで16%(95%CI、4-30)、非キャリアで3.8%(95%CI、3.3-4.4)と推定された。 [15] この4倍高い前立腺がんリスクは、年齢が同じ女性の多様体キャリアにおける卵巣がん累積リスク(70歳までに16%;95%CI、6-28)と(絶対値で)等しかった。WASコホート中の男性キャリアにおける前立腺がんリスクは、50歳までに増加、67歳までに統計的に有意な増加、以後年齢とともに増加を示し、アシュケナージ創始者病原性多様体のキャリアでは前立腺がんリスクが全体的に高く診断時年齢が低いことが示唆された。前立腺がんリスクは遺伝子によって異なり、BRCA1病原性多様体は55~60歳を過ぎてからのリスク増加と関連し、70歳までに25%、80歳までに41%に達した。対照的に、BRCA2病原性多様体と関連する前立腺がんリスクはより高い年齢で上昇し始め、70歳までに5%、80歳までに36%に達した(数値は著者により提供された[WRITTEN COMMUNICATION, April 2005])。

同様のケースコントロールによる方法を用いて表5に要約した研究では、前立腺がんのユダヤ人男性におけるアシュケナージ創始者病原性多様体の保有率が調査され、創始者病原性多様体の状態と前立腺がんリスクには全体的に正相関がみられることが明らかとなった。

表5.アシュケナージユダヤ人集団におけるBRCA1およびBRCA2と前立腺がんリスクに関するケースコントロール研究

研究 症例/対照 病原性多様体の頻度( 病原性多様体の頻度( 前立腺がんリスク( 前立腺がんリスク( コメント
AJ = アシュケナージユダヤ人;CI = 信頼区間;MECC = Molecular Epidemiology of Colorectal Cancer(大腸がんの分子疫学研究);OR = オッズ比;WAS = Washington Ashkenazi Study。
Guisti et al.(2003) 症例:1994年および1995年に前立腺がんと診断された連続登録のイスラエル出身のAJ男性979人 症例:16(1.7%) 症例:14(1.5%) 185delAG:OR、2.52(95%CI、1.05-6.04) OR、2.02(95%CI、0.16-5.72) 病原性多様体が関係する前立腺がんに、独特あるいは特異的な組織病理所見の証拠はなかった。
対照:WAS研究およびイスラエルのMECC研究から年齢でマッチさせた50歳以上で前立腺がんの既往のない対照と比較した創始者病原性多様体の保有率 対照:11(0.81%) 対照:10(0.74%) 5282insC:OR、0.22(95%CI、0.16-5.72)
Kirchoff et al.(2004) 症例:2000年から2002年に前立腺がんの治療を受けた非選択のAJ男性251人 症例:5(2.0%) 症例:8(3.2%) OR、2.20(95%CI、0.72-6.70) OR、4.78(95%CI、1.87-12.25)  
対照:がんの既往のないAJ男性1,472人 対照:12(0.8%) 対照:16(1.1%)
Agalliu et al.(2009) 症例:1978年から2005年(診断年の平均値および中央値:1996年)に前立腺がんと診断されたAJ男性979人 症例:12(1.2%) 症例:18(1.9%) OR、1.39(95%CI、0.60-3.22) OR、1.92(95%CI、0.91-4.07) グリソンスコアが7~10の前立腺がんは、対照よりもBRCA1病原性多様体キャリア(OR、2.23;95%CI、0.84-5.86)およびBRCA2病原性多様体キャリア(OR、3.18;95%CI、1.62-6.24)に多くみられた。
対照:がんの既往のないAJ男性1,251人 対照:11(0.9%) 対照:12(1.0%)
Gallagher et al.(2010) 症例:1988年から2007年に限局性前立腺がんと診断されたAJ男性832人 非キャリア:806(96.9%) 非キャリア:447(98.5%) OR、0.38(95%CI、0.05-2.75) OR、3.18(95%CI、1.52-6.66) このシリーズではBRCA1 5382insC創始者病原性多様体が検査されなかったため、この病原性多様体の一部のキャリアが識別されなかった可能性が高い。その結果、BRCA1関連リスクが過小評価されている可能性がある。グリソンスコアが7~10の前立腺がんは、非キャリア(57%)よりもBRCA2病原性多様体キャリア(85%)に多くみられた;P = 0.0002。BRCA1/2病原性多様体キャリアは、非キャリアよりも再発リスクおよび前立腺がん特異的死亡リスクが有意に高かった。
症例:6(0.7%) 症例:20(2.4%)
対照:がんの既往のないAJ男性454人 対照:4(0.9%) 対照:3(0.7%)


これらの研究は、アシュケナージ系ユダヤ人創始者病原性多様体のキャリアでは過剰に前立腺がんが発生するという仮説を支持しており、BRCA2創始者病原性多様体(6174delT)を有する男性では、BRCA1創始者病原性多様体(185delAG;5382insC)のいずれかを有する男性よりリスクが高くなる可能性を示唆している。BRCA2関連のリスクの大きさはいくぶん異なるが、それは明らかに参加者の確認、カレンダー上の診断時点の違いや解析方法に関係する研究間における差異による。いくつかのデータによれば、BRCA関連前立腺がんは、非キャリアに発生する前立腺がんよりも有意に予後不良であることが示唆されている。 [19]

その他の集団

前立腺がんとBRCA1およびBRCA2の病原性多様体との関係については、他の集団でも研究されている。表6は、他のさまざまな集団に属する前立腺がん男性を対象に、BRCA病原性多様体の保有率をケースコントロールによる方法を用いて調査した研究についてまとめたものである。

表6.さまざまな集団におけるBRCA1およびBRCA2と前立腺がんリスクに関するケースコントロール研究

研究 症例/対照 病原性多様体の頻度( 病原性多様体の頻度 前立腺がんリスク( 前立腺がんリスク( コメント
CI = 信頼区間;OR = オッズ比;RR = 相対リスク;SIR = 標準化発生比。
Johannesdottir et al.(1996) 症例:1983年から1992年に65歳未満で前立腺がんと診断され、保管された組織ブロックが利用可能なアイスランド人男性75人 非評価 症例:999del5(2.7%) 非評価 999del5:RR、2.5(95%CI、0.49-18.4)  
対照:アイスランド全国食事調査(Icelandic National Diet Survey)からランダムに選択されたDNAサンプル499個 対照:(0.4%)
Eerola et al.(2001) 症例:乳がんまたは卵巣がんに罹患した第一度または第二度の近親者がいる家系として定義された、フィンランドの107の遺伝性乳がん家族 非評価 非評価 SIR、1.0(95%CI、0.0-3.9) SIR、4.9(95%CI、1.8-11.0)  
対照:性別、年齢、暦上の期間に固有の発生率に基づくフィンランドの集団
Cybulski et al.(2013) 症例:1999年から2012年に前立腺がんと診断された年齢または家族歴で非選別のポーランド人男性3,750人 症例:14(0.4%) 非評価 任意のBRCA1病原性多様体:OR、0.9(95%CI、0.4-1.8) 非評価 前立腺がんのリスクは、家族性症例および60歳未満で診断された症例で大きかった。
4153delA:OR、5.3(95%CI、0.6-45.2)
対照:がんの既往がない23~90歳のポーランド人男性3,956人 対照:17(0.4%) 5382insC:OR、0.5(95%CI、0.2-1.3)
C61G:OR、1.1(95%CI、1.6-2.2)


これらのデータから、BRCA1/2病原性多様体キャリアにおける前立腺がんリスクは、病原性多様体の位置によって異なる(すなわち、遺伝子型表現型が相関している)ことが示唆される。 [20] [21] [23] さまざまな集団では、特異的な病原性のBRCA1/2病原性多様体を有する人の割合に差がある可能性があるため、これらの関連性を検討した過去の研究で生じた不一致について、以上の観察結果からある程度説明できる可能性がある。

いくつかのケースシリーズで、BRCA1およびBRCA2の病原性多様体と前立腺がんリスクの役割についても調査されている。

表7.BRCA1およびBRCA2と前立腺がんリスクに関するケースシリーズ

研究 集団 病原性多様体の頻度( 病原性多様体の頻度( 前立腺がんリスク( 前立腺がんリスク( コメント
CI = 信頼区間;MLPA = 多重ライゲーション依存性プローブ増幅;RR = 相対リスク;UK = 英国。
a 英国の一般集団におけるRRデータを用いて算定した推定値。
Agalliu et al.(2007) 55歳未満で前立腺がんと診断され、家族歴について非選択の男性290人(白人、n = 257;アフリカ系米国人、n = 33) 非評価 2 (0.69%) 非評価 RR、7.8(95%CI、1.8-9.4) アフリカ系米国人男性に病原性多様体は認められなかった。
病原性多様体が認められた男性2人では、乳がんまたは卵巣がんの家族歴がないことが報告された。
Agalliu et al.(2007) 遺伝性前立腺がんの194家系からの266人で、前立腺がんに罹患した男性253人を含む;前立腺がん診断時年齢の中央値:58歳 非評価 0 (0%) 非評価 非評価 31の非同義の多様体が同定された;切断型多様体または病原性多様体は検出されなかった。
Tryggvadóttir et al.(2007) 1955年から2004年に前立腺がんと診断された男性527人 非評価 30/527(5.7%)がアイスランドの創始者病原性多様体999del5を保有 非評価 非評価 BRCA2の999del5病原性多様体は、前立腺がん診断時年齢の平均値が低いことに関連していた(69 vs 74歳;P = 0.002)。
Kote-Jarai et al.(2011) 36歳から88歳で前立腺がんと診断され、英国Genetic Prostate Cancer Studyに参加した男性1,832人 非評価 全体:19/1,832(1.03%) 非評価 RR、8.6a(95%CI、5.1-12.6) MLPAは使用されなかった;したがって、広範なゲノム再構成を検出できないことを考えると、この病原性多様体の頻度は、実際より低く推定されている可能性がある。
55歳以下で診断された前立腺がん:8/632(1.27%)
Leongamornlert et al.(2012) 英国Genetic Prostate Cancer Studyに参加した前立腺がん男性913人;家族歴にかかわらず、36歳から65歳までに診断された821例、および前立腺がんの家族歴があり、65歳を過ぎて診断された92例を含む 全例:4/886(0.45%) 非評価 RR、3.75a(95%CI、1.02-9.6) 非評価 シークエンシング後の品質管理評価で27例が除外された結果、最終解析には886例が含められた。
65歳以下の症例:3/802(0.37%)


これらのケースシリーズから、遺伝性前立腺がんではBRCA1およびBRCA2の病原性多様体は重大な影響を及ぼさないことが確認される。ただし、BRCA2における生殖細胞病原性多様体が一部の早期発症型前立腺がん症例に認められるが、これは米国における早期発症型前立腺がんの1%未満であると推定されている。 [24]

BRCA病原性多様体キャリアにおける前立腺がんの侵攻性

表8に要約した研究では、同様のケースコントロールによる方法を用いて、BRCA1/BRCA2病原性多様体を保有することが明らかになった前立腺がん男性において、前立腺がん侵攻性の特徴が調べられた。

表8.BRCA1およびBRCA2と前立腺がん侵攻性に関するケースコントロール研究

研究 症例/対照 グリソンスコア PSA 腫瘍の病期または悪性度 コメント
AJ = アシュケナージユダヤ人;CI = 信頼区間;HR = ハザード比;OR = オッズ比;PSA = 前立腺特異抗原;UK = 英国。
a 前立腺がん侵攻性の測定値。
Tryggvadóttir et al.(2007) [26] 症例:前立腺がんと診断され、BRCA2 999del5創始者病原性多様体キャリアである男性30人 グリソンスコア 7~10: 非評価 診断時IV期:  
- 症例:84% - 症例:55.2%
対照:BRCA2 999del5病原性多様体キャリアでないことが確認された生年および診断年でマッチさせた前立腺がん男性59人 - 対照:52.7% - 対照:24.6%
Agalliu et al.(2009) [18] 症例:1978年から2005年(診断年の平均値および中央値:1996年)に前立腺がんと診断されたAJ男性979人 グリソンスコア 7~10: 非評価 非評価  
BRCA1 185delAG病原性多様体:OR、3.54(95%CI、1.22-10.31)
対照:がんの既往のないAJ男性1,251人 BRCA2 6174delT病原性多様体:OR、3.18(95%CI、1.37-7.34)
Edwards et al.(2010) [29] 症例:前立腺がんと診断され、BRCA2病原性多様体を保有する男性21人:英国前立腺がん研究からの早期発症型(55歳以下)の6人と英国臨床試験シリーズからの診断時年齢で非選択の15人 非評価 PSAが25ng/mL以上:HR、1.39(95%CI、1.04-1.86) T3期:HR、1.19(95%CI、0.68-2.05)  
T4期:HR、1.87(95%CI、1.00-3.48)
悪性度2:HR、2.24(95%CI、1.03-4.88)
対照:年齢および病期でマッチさせた前立腺がん男性1,587人 悪性度3:HR、3.94(95%CI、1.78-8.73)
Gallagher et al.(2010) [19] 症例:1988年から2007年に限局性前立腺がんと診断されたAJ男性832人で、そのうちBRCA1病原性多様体キャリアが6人、BRCA2病原性多様体キャリアが20人 グリソンスコア 7~10: 非評価 非評価 このシリーズでは、BRCA1 5382insC創始者病原性多様体は検証されなかった。
対照:がんの既往のないAJ男性454人 BRCA2 6174delT病原性多様体:HR、2.63(95%CI、1.23-5.6;P = 0.001)
Thorne et al.(2011) [30] 症例:オーストラリアおよびニュージーランド出身の家族性乳がんの30家系からのBRCA2病原性多様体キャリアで前立腺がんと診断された男性40人 グリソンスコア 8以上: PSAが10~100ng/mL: 初診時の病期がpT3以上: BRCA2病原性多様体キャリアは、非キャリアよりもD'Amico基準で高リスクの病態である可能性が高い(77.5% vs 58.7%、P = 0.05)。
BRCA2病原性多様体:35%(14/40) BRCA2病原性多様体:44.7%(17/38)
BRCA2病原性多様体:65.8%(25/38) - 対照:27.9%(27/97)
PSAが101ng/mLを超える:
対照:オーストラリアおよびニュージーランド出身の家族性乳がんの89家系から、家系中にBRCA病原性多様体が認められない前立腺がん男性97人 - 対照:33.0%(25/97) BRCA2病原性多様体:10%(4/40) - 対照:22.6%(21/97)
- 対照:2.1%(2/97)
Castro et al.(2013) [31] 症例:英国出身で前立腺がんと診断された男性2,019人で、そのうちBRCA1病原性多様体キャリアが18人、BRCA2病原性多様体キャリアが61人 グリソンスコア 8超: BRCA1のPSA中央値:8.9(範囲、0.7-3,000) 初診時の病期がpT3以上: BRCA病原性多様体を有する男性では、リンパ節転移および遠隔転移が対照より多かった。
BRCA1病原性多様体:27.8%(5/18) BRCA1:38.9%(7/18)
BRCA2病原性多様体:37.7%(23/61) BRCA2のPSA中央値:15.1(範囲、0.5-761) BRCA2:49.2%(30/61)
対照:BRCA1/2非キャリア男性1,940人 - 対照:15.4%(299/1,940) 対照のPSA中央値:11.3(範囲、0.2-7,800) - 対照:31.7%(616/1,940)
Akbari et al.(2014) [32] 症例:PSA高値または検査での異常に対して前立腺生検を受けた男性4,187人、うち26人は少なくとも1つのBRCAコーディング病原性多様体を有する(BRCAの26のコーディングエクソンすべてを配列決定して多型を調査) グリソンスコア 7~10: 症例のPSA中央値:56.3 症例および対照で十分に評価されず BRCA2病原性多様体を有する男性の12年生存率は、BRCA2病原性多様体がみられない男性より低かった(61.8% vs 94.3%;P < 10−4)。高悪性度疾患(グリソンスコア7~9)の男性では、年齢とPSA値で調整後に、BRCA2病原性多様体の存在が4.38というHRに関連していた(95%CI、1.99-9.62;P < 0.0001)。
- 症例:96%
対照:BRCAコーディング病原性多様体がみられない男性1,878人(BRCAの26のコーディングエクソンすべてを配列決定して多型を調査) - 対照:54% 対照のPSA中央値:13.3


以上の研究から、BRCA病原性多様体キャリアにおける前立腺がんは、グリソンスコアが高い、診断時の前立腺特異抗原(PSA)値が高い、診断時の腫瘍の病期および/または悪性度が高いといった侵攻性病態の特徴、つまりがんリスク評価および遺伝カウンセリングを患者が受ける際に考慮が当然必要となる所見と関連している可能性が示唆される。 [33]

BRCA1/BRCA2と生存転帰

BRCA1またはBRCA2の病原性多様体が既知の家系における前立腺がん症例の解析により、生存に関する調査が行われている。1件のケースシリーズで実施された未調整の解析によると、前立腺がん男性の生存期間中央値は、BRCA2病原性多様体が認められた183人で4年、BRCA1病原性多様体が認められた119人で8年であった。この研究から、BRCA2病原性多様体キャリアは、BRCA1病原性多様体キャリアより生存が不良であることが示唆される。 [34] この観察結果を詳しく評価するために、ケースコントロール研究が実施された(表9に要約)。

表9.BRCA1およびBRCA2と生存転帰に関するケースコントロール研究

研究 症例 対照 前立腺がん特異的生存 全生存 コメント
CI = 信頼区間;HR = ハザード比;PSA = 前立腺特異抗原;UK = 英国。
Tryggvadóttir et al.(2007) [26] 前立腺がんと診断され、BRCA2 999del5創始者病原性多様体キャリアである男性30人 BRCA2 999del5病原性多様体キャリアでないことが確認された生年および診断年でマッチさせた前立腺がん男性59人 BRCA2 999del5病原性多様体は、前立腺がんによる死亡リスクが高い(HR、3.42;95%CI、2.12-5.51)ことに関連しており、病期および悪性度について調整後も変わらなかった(HR、2.35;95%CI、1.08-5.11)。 非評価  
Edwards et al.(2010) [29] 前立腺がんと診断され、BRCA2病原性多様体を保有する男性21人:英国前立腺がん研究からの早期発症型(55歳以下)の6人と英国臨床試験シリーズからの診断時年齢で非選択の15人 年齢および病期でマッチさせた前立腺がん男性1,587人 非評価 全生存期間は、BRCA2病原性多様体キャリア(4.8年)の方が非キャリア(8.5年)より短かった;非キャリアでは、HR、2.14(95%CI、1.28-3.56;P = 0.003)。  
Gallagher et al.(2010) [19] 1988年から2007年に限局性前立腺がんと診断されたAJ男性832人で、そのうちBRCA1病原性多様体キャリアが6人、BRCA2病原性多様体キャリアが20人 がんの既往のないAJ男性454人 病期、PSA、グリソンスコア、および受けた治療について調整後: 非評価 このシリーズでは、BRCA1 5382insC創始者病原性多様体は検証されなかった。
BRCA1 185delAG病原性多様体キャリアは、前立腺がんによる死亡リスクが高かった(HR、5.16;95%CI、1.09-24.53;P = 0.001)。
BRCA2 6174delT病原性多様体キャリアでは、前立腺がんによる死亡リスクが高かった(HR、5.48;95%CI、2.03-14.79;P = 0.001)。
Thorne et al.(2011) [30] オーストラリアおよびニュージーランド出身の家族性乳がんの30家系からのBRCA2病原性多様体キャリアで前立腺がんと診断された男性40人 オーストラリアおよびニュージーランド出身の家族性乳がんの89家系から、家系中にBRCA病原性多様体が認められない前立腺がん男性97人 BRCA2キャリアは、前立腺がん特異的死亡のリスクが非キャリア対照と比べて高いことが示された(HR、4.5;95%CI、2.12-9.52;P = 8.9 × 10-5)。 BRCA2キャリアは、死亡リスクが非キャリア対照と比べて高いことが示された(HR、3.12;95%CI、1.64-6.14;P = 3.0 × 10-4)。 得られたBRCA1キャリアがあまりにも少なかったため、解析に含められなかった。
Castro et al.(2013) [31] 英国出身で前立腺がんと診断された男性2,019人で、そのうちBRCA1病原性多様体キャリアが18人、BRCA2病原性多様体キャリアが61人 BRCA1/2非キャリア男性1,940人 前立腺がん特異的5年生存率: 5年全生存率: 限局性前立腺がんでは、対照における無転移生存率も病原性多様体キャリアより高かった(93% vs 77%;HR、2.7)。
BRCA1:80.8%(95%CI、56.9%-100%) BRCA1:82.5%(95%CI、60.4%-100%)
BRCA2:67.9%(95%CI、53.4%-82.4%) BRCA2:57.9%(95%CI、43.4%-72.4%)
- 対照:90.6%(95%CI、88.8%-92.4%) - 対照:86.4%(95%CI、84.4%-88.4%)
Castro et al.(2015) [35] BRCA1/2病原性多様体キャリア67人を含む、局所または局所進行前立腺がんの英国人男性1,302人 BRCA1/2非キャリア男性1,235人 前立腺がん特異的生存: 非評価  
BRCA1/2:10年後に61%
- 非キャリア:10年後に85%


これらの知見から、病原性多様体キャリアでは全生存率および前立腺がん特異的生存率が対照より低い可能性が示唆される。

BRCA領域に関連したその他の試験

University of Michigan Prostate Cancer Genetics Project(UM-PCGP)からの175家系を用いた遺伝性前立腺がんに対する全ゲノムスキャンによって、染色体17qマーカーへの連鎖の証拠が明らかにされた。 [36] 全家系の最大対数尤度比(LOD)スコアは2.36で、罹患が確認された男性が4人以上いる家系のみを解析した場合、LODスコアが3.27に増加した。連鎖のピークはBRCA1遺伝子上に集中した。追跡調査において、これらの研究者は17qマーカーへの前立腺がん連鎖の証拠を有する各93家系の1人から得たDNAを使用して、病原性多様体についてBRCA1遺伝子全体にスクリーニングを実施した。 [37] スクリーニングを受けた人のうち65人が野生型のBRCA1配列を有しており、切断による病原性多様体(3829delT)であることが確認されたのは、前立腺がんおよび卵巣がんがみられる家系出身のわずか1人であった。残りの人は、臨床的意義不明の15のミスセンス多様体を含む1つ以上の生殖細胞系BRCA1多様体を有した。これら2件の報告からの結論は、染色体17q上のBRCA1に近い位置に前立腺がん感受性遺伝子の証拠があるというものであった;しかしながら、BRCA1に広範にみられる有害な不活性化多様体が、染色体17に連鎖のある家系における前立腺がんリスクと関連する可能性は低い。

UM-PCGPの別の研究では、BRCA1において一般的な遺伝的多様性が調査された。 [38] 前立腺がんかどうかにかかわらず817人の男性を含む家族性前立腺がんおよび早期発症型前立腺がんの323家系を対象に、条件付きロジスティック回帰分析および家族ベース関連解析を実施することで、BRCA1の近傍およびそれを含有する200k塩基領域に多くみられるハプロタイプ多様性にタグを付けた一塩基多型(SNP)の関連性が解析された。BRCA1における3つのSNP(rs1799950、rs3737559、rs799923)は、前立腺がんと関連していることが明らかにされた。BRCA1のエクソン11におけるコドン 356(Gln356Arg)でグルタミンからアルギニンへの置換の原因となるSNP rs1799950で最も強い関連性(オッズ比[OR]、2.25;95%CI、1.21-4.20)が確認された。さらに、SNP rs1799950は、UM-PCGPにより最初に報告された染色体17q21上での連鎖シグナルの一因となることが示された。 [36]

ミスマッチ修復(MMR)遺伝子

4つの遺伝子、すなわちMLH1MSH2MSH6、およびPMS2がMMRに関与している。これらの4つの遺伝子における生殖細胞病原性多様体は、リンチ症候群との関連性が指摘されており、家族内の非ポリポーシス大腸がんの他に、子宮内膜がん、卵巣がん、十二指腸がん、尿管および腎盂の移行上皮がんなどのさまざまながん症例にみられる。複数の報告から、前立腺がんがMMR遺伝子病原性多様体を有する男性に観察されうることが示唆されている。 [39] [40] 最初の定量的研究では、106人のノルウェー人男性のMMR病原性多様体キャリアまたは絶対キャリアの集団ベースのコホートに発生した9例の前立腺がんが報告された。 [41] これら男性106人で予想される症例数は1.52(P < 0.01)であった;これらの男性は、Norwegian Cancer Registryから抽出した症例より診断時年齢が若く(60.4歳 vs 66.6歳、P = 0.006)、グリソンスコアが8~10である証拠が多かった(P < 0.00001)。カプラン-マイヤー解析により、70歳までに前立腺がんと診断される累積リスクは、MMR遺伝子病原性多様体を有するキャリアで30%、一般集団で8%であったことが明らかにされた。この知見は追加の集団での確認が待たれる。1件の集団ベースのケースコントロール研究により、3つのMMR遺伝子(MLH1MSH2、およびPMS2)におけるハプロタイプタグSNPが調査された。この研究により、MLH1における遺伝的多様性および前立腺がんの全リスクの寄与を支持する証拠が得られた。 [42] リンチ症候群の特徴としての前立腺がんの寄与を評価するために、前立腺がん家系レジストリーに登録され、結腸がんの家族歴も報告している家系から得られた前立腺がん組織ブロックでマイクロサテライト不安定性(MSI)検査を実施した研究が1件ある。異なった31家系から得られた35の組織ブロックのうち、MMR遺伝子病原性多様体を有する家系から得られた2つの腫瘍が高MSIであることが確認された。著者らは、遺伝性前立腺がんにおけるMSIはまれであるとの結論を下した。 [43] 他の数件の研究で、リンチ症候群家系における前立腺がんの発生率の特徴を明らかにし、分子的特徴を前立腺がんリスクと関連付けようとしている。 [44]

2つの家族性がんレジストリーを含んだ1件の研究では、MMR遺伝子病原性多様体とリンチ症候群がみられる198の独立した家系において、前立腺がんの累積発生率およびリスクの増加が認められた。 [45] 前立腺がんの累積生涯リスク(80歳まで)は、MMR遺伝子病原性多様体キャリアで30.0%(95%CI、16.54-41.30;P = 0.07)であったが、Surveillance, Epidemiology, and End Results Programの推定によると、一般集団では17.84%であった。病原性多様体キャリアでは、50歳までの前立腺がんリスクが高い傾向がみられ、リスクが0.64%(95%CI、0.24-1.01;P = 0.06)であったのに対し、一般集団におけるリスクは0.26%であった。全体的に、併合データセットでは、MMR遺伝子病原性多様体キャリアにおける前立腺がんのハザード比(HR)(80歳まで)が1.99(95%CI、1.31-3.03;P = 0.0013)であった。20~59歳の男性では、HRが2.48(95%CI、1.34-4.59;P = 0.0038)であった。

23件の研究(分子的特徴に関する6件の研究、リスクに関する18件の研究、このうち12件の研究では前立腺がんに対するリスクが定量化された)を含む系統的レビューおよびメタアナリシスでは、前立腺がんとリンチ症候群との関連が報告された。 [46] 解析に含められた6件の分子的研究では、MMR遺伝子病原性多様体キャリアにおける前立腺がんの73%(95%CI、57%-85%)にMMRの欠損がみられた。MMR遺伝子病原性多様体キャリアにおける前立腺がんのRRは、3.67(95%CI、2.32-6.67)と推定された。リスクに関する12件の研究での前立腺がんのRRは、キャリア状態、大腸がんの診断歴、または病原性多様体を有する家系の男性でキャリア状態が不明かどうかに応じて、一般集団にみられるリスクと比較して2.11~2.28の範囲に及んだ。

Colon Cancer Family Registryに参加した3施設による研究で、MMR遺伝子病原性多様体が確認された男性(23人がMSH2キャリア、5人がMLH1キャリア、および4人がMSH6キャリア)における前立腺がんの32症例(診断時平均年齢、62歳;標準偏差、8歳)が検討された。 [47] 72%(n = 23)が以前に大腸がんの診断を受けていた。免疫組織化学検査が用いられ、22腫瘍(69%)に観察されたMMR蛋白喪失が評価された;蛋白発現喪失のパターンは100%で生殖細胞病原性多様体と一致した。前立腺がんのRRは、MSH2病原性多様体キャリアで最も高かった(RR、5.8[95%CI、2.6–20.9]);MLH1およびMSH6病原性多様体キャリアにおけるRRは、それぞれ1.7(95%CI、1.1–6.7)および1.3(95%CI、1.1–5.3)であった。グリソンスコアは5~10の範囲であり;2腫瘍でグリソンスコアが5;22腫瘍でグリソンスコアが6または7;8腫瘍でグリソンスコアが8より高かった。腫瘍の67%(18腫瘍中12腫瘍)で神経周囲への浸潤がみられ、47%(19腫瘍中9腫瘍)で被膜外浸潤が認められた。

リンチ症候群の家系では、前立腺がんリスクが高いと考えられるが、前立腺がん発端者でMMR遺伝子病原性多様体を調べる生殖細胞系検査の戦略はまだ確定していない。

HOXB13

遺伝性前立腺がんの175家系から17q21-22への連鎖がUM-PCGPにより最初に報告された。 [36] この領域のファインマッピングにより、罹患男性が4人以上で、診断時平均年齢が65歳以下の147家系において推定される感受性遺伝子では、連鎖(LODスコア = 5.49)および候補領域が狭い(15.5Mb)ことを示す強力な証拠が得られた。 [48] (UM-PCGPおよびJohns Hopkinsから)遺伝性前立腺がん家系とは非血縁の患者94人のDNAにおいて、17q21-22領域の200遺伝子のエクソンの配列決定が行われた。 [49] 4家系の発端者で、HOXB13に反復病原性多様体(G84E)が認められることが発見され、これら4家系の前立腺がん男性18人がこの病原性多様体を保有していた。この病原性多様体の状態は、同定された症例被験者5,083人と対照被験者2,662人によって特定された。キャリアの頻度および前立腺がんリスクに対するORは次の通りであった:


  • 前立腺がんの家族歴陽性の男性:2.2% vs 陰性の男性:0.8%(OR、2.8;95%CI、1.6-5.1;P = 1.2 × 10-4)。

  • 診断時年齢が55歳未満の男性:2.2% vs 55歳以上の男性:0.8%(OR、2.7;95%CI、1.6-4.7;P = 1.1 × 10-4)。

  • 前立腺がんの家族歴が陽性で診断時年齢が55歳未満の男性:3.1% vs 前立腺がんの家族歴が陰性で診断時年齢が55歳以上の男性:0.6%(OR、5.1;95%CI、2.4-12.2;P = 2.0 × 10-6)。

  • 前立腺がんの家族歴が陽性で診断時年齢が55歳以上の男性:1.2%。

  • 対照被験者:0.1~0.2%。 [49]

International Consortium of Prostate Cancer Geneticsのある確認試験で、HOXB13が前立腺がんリスクの感受性遺伝子として確認された。 [50] 保因家系では、前立腺がんに罹患していない男性よりも前立腺がんの男性にG84E病原性多様体が多くみられた(OR、4.42;95%CI、2.56-7.64)。また、このG84E病原性多様体は、前立腺がんに罹患した子孫に親から有意に過剰伝達されていた(P = 6.5×10-6)。

その後、HOXB13 G84E病原性多様体に関連するキャリア頻度、前立腺がんリスク、および浸透度についてより明確に定義した研究が発表された。 [49] [51] [52] [53] [54] [55] [56] 現在のところ、この病原性多様体は、主にヨーロッパ系の白人男性に限定されると考えられている。 [49] [51] [52] [53] 最も高いキャリア頻度は6.25%で、フィンランドの早期発症型症例で報告された。 [54] ヨーロッパ系米国人の症例9,016人および対照9,678人を含むプール解析により、全体のG84E病原性多様体頻度は症例で1.34%、対照で0.28%であることが明らかになった。 [55]

HOXB13 G84E病原性多様体状態による前立腺がんリスクは、発症時年齢、家族歴、および地理的地域によって変化することが報告されている。アイスランドで遺伝子型がほとんど補完されていた症例4,537人と対照54,444人を含め、ヨーロッパ系男性を対象とした6件の研究から得られた症例9,988人と対照61,994人からなる独立コホートを対象とした検証研究では、G84Eキャリア状態による前立腺がんリスクのORが7.06(95%CI、4.62-10.78;P = 1.5 × 10−19)であることが報告された。 [57] 非キャリアと比較したHOXB13病原性多様体を有する男性における前立腺がんのORが4.86(95%CI、3.18-7.69;P = 3.48 × 10-17)であることを報告したプール解析がある;55歳以下で前立腺がんと診断された男性では、このORが8.41(95%CI、5.27-13.76;P = 2.72 ×10-22)に増加した。前立腺がんの家族歴が陽性の男性では、このORは7.19(95%CI、4.55-11.67;P = 9.3 × 10-21)で、前立腺がんの家族歴が陰性の男性では、3.09(95%CI、1.83-5.23;P = 6.26 × 10-6)であった。 [55] ヨーロッパ系男性の症例24,213人および対照73,631人を含むメタアナリシスでは、キャリア状態による前立腺がんの全体のORが4.07(95%CI、3.05-5.45;P < 0.00001)であることが明らかになった。前立腺がんリスクは、次のように地理的地域によって異なる:米国(OR、5.10;95%CI、3.21-8.10;P < 0.00001)、カナダ(OR、5.80;95%CI、1.27-26.51;P = 0.02)、北欧(OR、3.61;95%CI、2.81-4.64;P < 0.00001)、および西欧(OR、8.47;95%CI、3.68-19.48;P < 0.00001)。 [52] さらに、早期発症型症例では、G84E病原性多様体と前立腺がんリスクとの関連性が強く認められた(OR、10.11;95%CI、5.97-17.12)。このメタアナリシスでは、侵攻性疾患との有意な関連性は認められなかった。11件のケースコントロール研究を含む別のメタアナリシスでも、HOXB13 G84Eキャリアで前立腺がんのリスク推定値が高い(OR、4.51;95%CI、3.28-6.20;P < 0.00001)ことが報告され、HOXB13 G84Eと早発性疾患との関連性が強い(OR、9.73;95%CI、6.57–14.39;P < 0.00001)ことが明らかになった。 [58] 米国で行われた1件の集団ベースのケースコントロール研究では、G84E病原性多様体と前立腺がんとの関連性が確認され(OR、3.30;95%CI、1.21-8.96)、侵攻性疾患との関連性を示唆する報告も行われた。 [59] その他にも、ある研究でアシュケナージユダヤ人家系の男性ではG84E病原性多様体のキャリアがいないことが確認された。 [60] 症例8,652例と対照5,252例を含む英国のケースコントロール研究でもHOXB13 G84Eと前立腺がんとの関連が確認された(OR、2.93;95%CI、1.94-4.59;P = 6.27 × 10-8)。 [61] このリスクは、家族歴を有する男性(OR、4.53;95%CI、2.86-7.34;P = 3.1 × 10−8)および(55歳以下で診断される)早期発症型前立腺がん(OR、3.11;95%CI、1.98-5.00;P = 6.1 × 10−7)において高かった。キャリア状態とグリソンスコア、がんの病期、全生存、またはがん特異的生存との関連は認められなかった。

HOXB13 G84E病原性多様体キャリアにおける前立腺がん発症で推定される浸透度についても報告される予定である。スウェーデンからのある研究では、G84Eキャリアにおける前立腺がんの生涯リスクが33%と推定された。 [62] その他のオーストラリアからの研究では、前立腺がんの年齢別累積リスクが80歳までに最大60%に達することが報告された。 [63]

HOXB13は前立腺がん発症に関与しており、アンドロゲン受容体と相互作用する;しかしながら、この遺伝子が前立腺がんの発生機序に寄与する機序については依然として不明である。この遺伝子は、遺伝性前立腺がんの一部、特に早期発症型の前立腺がんに関与していることが初めて確認された遺伝子である。HOXB13 G84E病原性多様体に関する臨床的有用性および遺伝カウンセリングでの意義については、まだ確定していない。

前立腺がんにおける多重遺伝子(パネル)検査

次世代塩基配列決定法が利用可能になり、特許の制約もなくなったことから、現在ではいくつかの臨床検査施設で多重遺伝子パネルによる遺伝子検査が単一遺伝子検査と同程度の費用で提供されている。留意すべき点として、意義不明の多様体の所見が得られる可能性があり、臨床的意義が依然として不明なことである。(遺伝に関する教育とカウンセリングでの考慮事項および多重遺伝子検査の使用について検討する研究など、多重遺伝子検査に関するより詳しい情報については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングのPDQ要約の多重遺伝子[パネル]検査のセクションを参照のこと。)本セクションでは、前立腺がん感受性パネル検査の対象となる可能性があるその他の遺伝子に関する証拠について要約する。

がん家族歴または診断時年齢について非選択の転移性前立腺がん男性692人を対象とした1件のレトロスペクティブケースシリーズで、16のDNA修復遺伝子における生殖細胞病原性多様体の発生率が評価された。病原性多様体が11.8%(692人中82人)で特定され、限局性前立腺がんの男性(4.6%、P < 0.001)より高い発生率であったことから、疾患が侵攻性の男性で遺伝子異常がより多く観察されることが示唆される。 [8]

ATM

毛細血管拡張性運動失調症(AT)(OMIM)は、常染色体劣性疾患であり、神経学的悪化、末梢血管拡張症、免疫不全状態、電離放射線過敏症を特徴とする。一般集団の1%がATM多様体(OMIM)のヘテロ接合体キャリアと推定される。 [64] DNA損傷の存在下で、ATM蛋白は細胞周期停止、DNA修復、およびアポトーシスの調節に関与している。 [65] ヘテロ接合体キャリアにおける他のがんリスクの証拠を前提として、前立腺がん感受性との関連性の証拠が増え続けている。(ATMと乳がんに関する詳しい情報については、乳がんおよび婦人科がんの遺伝学のPDQ要約の ATM のセクションを参照のこと。)デンマーク人10,317人を対象に36年間追跡したプロスペクティブケースシリーズで、この期間に2,056人ががんを発症し、Ser49Cysが前立腺がんに関連することが明らかになった(HR、2.3;95%CI、1.1–5.0)。 [65] がん家族歴または診断年齢で非選択の男性692人を対象としたレトロスペクティブケースシリーズで、1.6%(692人中11人)がATM病原性多様体を有していたことが明らかになった。 [8]

CHEK2

CHEK2も前立腺がんリスクと関連している可能性があるとして検討されている。(可能性のある前立腺がん感受性遺伝子としてCHEK2を評価しているケースコントロール研究に関する情報については表3を参照のこと。)がん家族歴または診断時年齢で非選択の転移性前立腺がん男性692人を対象としたレトロスペクティブケースシリーズで、1.9%(534人[データのある男性]中10人)がCHEK2病原性多様体を有していたことが明らかになった。 [8]


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家族性前立腺がんにおける介入

背景

あらゆる疾患と同様に、前立腺がんの遺伝的素因を有する患者に対するリスク低減のための介入についての決定は、ランダム化対照比較臨床試験およびこの疾患経過の基礎をなす自然史の知識が最も良い指針となる。しかしながら、高リスクの男性(前立腺がんの家族歴が陽性の男性およびアフリカ系米国人男性)を対象としたスクリーニングに関する既存の研究は、主にレトロスペクティブ・ケースシリーズまたはレトロスペクティブ・コホート解析に基づいている。家族歴陽性の自覚は、がんの精密検査の受診頻度を高め前立腺がんの明らかな早期の発見につながりうるため、疾患診断後の進行率および生存率の評価は、選択バイアス、リードタイムバイアス、およびレングスバイアスにさらされることになる。(詳しい情報については、がんスクリーニングの概要に関するPDQ要約を参照のこと。)このセクションは、前立腺がんの素因がある男性における前立腺がんのスクリーニングおよびリスク低減を対象にしている;高リスク男性のスクリーニングに関するデータは、主に一般集団を対象に実施された研究から抽出されている。

スクリーニング

遺伝的に前立腺がんを発症する素因がある男性における直腸指診(DRE)および血清前立腺特異抗原(PSA)検査などの一般的に利用可能なスクリーニング検査の有効性に関する情報は限られている。さらに、前立腺がんのスクリーニングの有効性を検討している研究の結果を比較することは、PSA検査値の上昇に選択されたカットオフ値が研究間で異なっているため、容易ではない。スクリーニング検査の感度および特異度が一定であれば、疾患の基礎有病率の上昇に伴って、陽性適中率(PPV)が増加する。したがって、理論的には、遺伝的素因を有する男性では、DREおよびPSAに対するPPVおよび診断率が平均リスク集団より高くなる可能性はある。 [1] [2]

前立腺がんスクリーニングコホートを対象としたほとんどのレトロスペクティブ解析によると、DRE実施の有無にかかわらず、PSAのPPVは、高リスク男性で23~75%の範囲であることが報告されている。 [2] [3] [4] [5] [6] スクリーニング戦略(PSA測定の頻度またはDREの組み入れ)および生検に対するPSAカットオフ値は、これらの研究間で異なっており、このPPVの範囲に影響を及ぼしている可能性がある。高リスク男性におけるがん検出率は、4.75~22%の範囲であることが報告されている。 [2] [5] [6] 検出されたほとんどのがんは、中等度のグリソンスコア(5~7)で、8以上のグリソンスコアは、一部の高リスク男性で検出されている。全体的に、前立腺がんリスクがさらに高い男性をスクリーニングする正味の有益性と有害性に関する情報は限られている。さらに、前立腺がんリスクが高い家系において特定のスクリーニングアプローチを支持する証拠はほとんどない。一般集団におけるルーチンのスクリーニングのリスクと有益性については、前立腺がんのスクリーニングのPDQ要約で考察されている。利用可能なデータを基にして、専門医のほとんどの団体および組織が、高リスク男性は医療提供者と意思決定を共有し、その危険因子に基づいて前立腺がんスクリーニングについて個々の計画を策定するよう推奨している。専門医組織による高リスク男性に対する前立腺がんスクリーニングの推奨をまとめたものを表10に示す。

表10. 高リスク男性に対する前立腺がんスクリーニング推奨の要約

スクリーニング推奨の出典 集団 検査 スクリーニング開始年齢 頻度 コメント
United States Preventive Services Task Force(2012) [7] 該当せず 該当せず 該当せず 該当せず 高リスク集団(黒人男性および前立腺がんの家族歴がある男性として定義)に対する特別な推奨はない。
American College of Physicians(2013) [8] アフリカ系米国人男性および特に65歳未満で前立腺がんと診断された第一度近親者をもつ男性 PSA 45歳以上 スクリーニング頻度を確立する明確なエビデンスはない カウンセリングには、前立腺がんスクリーニングに伴う不確実性、リスク、および期待できる有益性を含める。
4年ごとを超える頻度でPSA検査を実施する明確なエビデンスはない
65歳未満で前立腺がんと診断された家系員が複数いる家族歴がある男性 PSA 40歳以上
PSA値が2.5µg/Lを超えると、年1回のスクリーニングが妥当であろう
American Urological Association(2013) [9] アフリカ系米国人男性および前立腺がんの強い家族歴がある男性 PSA 40歳を超え55歳未満 個人的な好みのほか、有益性および関連する有害性の不確実性に関する情報に基づく話し合いを基にした個別化  
American Cancer Society (2014) [10] アフリカ系米国人男性および/または65歳未満で前立腺がんと診断された父親または兄弟がいる男性 DRE実施の有無にかかわらず、PSAa 45歳以上 頻度はPSA値に依存 検査に関して、臨床医の支援により情報に基づいた決断ができるように、カウンセリングには、検査の有益性およびその限界の検討を含める。
65歳未満で前立腺がんと診断された家系員が複数いる男性 DRE実施の有無にかかわらず、PSAa 40歳以上 頻度はPSA値に依存
NCCN(2016) [11] アフリカ系米国人男性および前立腺がんの家族歴がある男性 該当せず 該当せず 該当せず アフリカ系米国人男性および前立腺がんの家族歴がある男性に対する具体的な推奨事項はない(しかし、委員会はそのような個人については比較的高度な注意を払う必要およびスクリーニング検査の結果の分析時の考慮事項が異なる可能性があることを認識している)。
NCCN(2016) [12] BRCA1 病原性多様体を有する男性 記載なし 40歳以上でスクリーニング開始を検討 記載なし  
BRCA2病原性多様体を有する男性 記載なし 40歳以上 記載なし
NCCN(2016) [11] BRCA1/2病原性多様体の家族歴を有する男性 ベースラインPSA値;ベースラインDREを考慮 45~75歳 PSA値が1ng/mL未満で、DREが正常の場合は、2~4年ごと PSA値が3ng/mLを超える男性および75歳を超える男性に対する追加の推奨。(詳しい情報については、NCCNガイドラインのPROSD-2のページを参照のこと。) [11]
PSA値が1~3 ng/mLで、DREが正常の場合は、1~2年ごと


証拠レベル:5

BRCA病原性多様体キャリアにおけるスクリーニング

BRCA1/2病原性多様体キャリアと非キャリアを対象とした前立腺がんスクリーニングに焦点を合わせた国際研究で、初期のスクリーニング結果が報告された。 [13] この研究では、男性2,481人を募集した(BRCA1キャリアが791人、BRCA1非キャリアが531人、BRCA2キャリアが731人、BRCA2非キャリアが428人)。計199人(8%)の男性が3.0ng/mLを超えるPSA値を示し、この値は生検が推奨される研究のPSAカットオフ値であった。全体のがん検出率は36.4%であった(162例の生検で、59例が前立腺がんと診断された)。BRCA病原性多様体の状態別の前立腺がんは、以下の通りであった:BRCA1キャリア(n = 18)、BRCA1非キャリア(n = 10);BRCA2キャリア(n = 24)、BRCA2非キャリア(n = 7)。公表されたリスク分類の病期および悪性度基準 [14] を用いると、中リスクまたは高リスクの腫瘍と診断されたのは、BRCA1キャリア18例中11例(61%)、BRCA1非キャリア10例中8例(80%)、BRCA2キャリア24例中17例(71%)、BRCA2非キャリア7例中3例(43%)であった。生検の閾値を3.0ng/mLとしたPSAのPPVは、BRCA2病原性多様体キャリアで48%、BRCA2非キャリアで33.3%、BRCA1キャリアで37.5%、BRCA1非キャリアで23.3%であった。95%の男性が白人であった;そのため、この結果は、すべての民族に一般化できるわけではない。この研究の追跡が進行中である。

証拠レベル(BRCA病原性多様体キャリアにおけるスクリーニング):3

フィナステリドおよびデュタステリドによる前立腺がんの化学予防

一般集団における前立腺がんの予防に対するフィナステリドおよびデュタステリドの使用に関する有益性、有害性、および裏付けデータについては、前立腺がんの予防に関するPDQ要約で考察している。


参考文献
  1. Sartor O: Early detection of prostate cancer in African-American men with an increased familial risk of disease. J La State Med Soc 148 (4): 179-85, 1996.[PUBMED Abstract]

  2. Matikainen MP, Schleutker J, Mörsky P, et al.: Detection of subclinical cancers by prostate-specific antigen screening in asymptomatic men from high-risk prostate cancer families. Clin Cancer Res 5 (6): 1275-9, 1999.[PUBMED Abstract]

  3. Catalona WJ, Antenor JA, Roehl KA, et al.: Screening for prostate cancer in high risk populations. J Urol 168 (5): 1980-3; discussion 1983-4, 2002.[PUBMED Abstract]

  4. Valeri A, Cormier L, Moineau MP, et al.: Targeted screening for prostate cancer in high risk families: early onset is a significant risk factor for disease in first degree relatives. J Urol 168 (2): 483-7, 2002.[PUBMED Abstract]

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  6. Giri VN, Beebe-Dimmer J, Buyyounouski M, et al.: Prostate cancer risk assessment program: a 10-year update of cancer detection. J Urol 178 (5): 1920-4; discussion 1924, 2007.[PUBMED Abstract]

  7. Moyer VA; U.S. Preventive Services Task Force: Screening for prostate cancer: U.S. Preventive Services Task Force recommendation statement. Ann Intern Med 157 (2): 120-34, 2012.[PUBMED Abstract]

  8. Qaseem A, Barry MJ, Denberg TD, et al.: Screening for prostate cancer: a guidance statement from the Clinical Guidelines Committee of the American College of Physicians. Ann Intern Med 158 (10): 761-9, 2013.[PUBMED Abstract]

  9. Carter HB, Albertsen PC, Barry MJ, et al.: Early detection of prostate cancer: AUA Guideline. J Urol 190 (2): 419-26, 2013.[PUBMED Abstract]

  10. Smith RA, Manassaram-Baptiste D, Brooks D, et al.: Cancer screening in the United States, 2014: a review of current American Cancer Society guidelines and current issues in cancer screening. CA Cancer J Clin 64 (1): 30-51, 2014 Jan-Feb.[PUBMED Abstract]

  11. National Comprehensive Cancer Network: NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Prostate Cancer Early Detection. Version 2.2016. Fort Washington, PA: National Comprehensive Cancer Network, 2016. Available online with free subscription. Last accessed May 02, 2016.[PUBMED Abstract]

  12. National Comprehensive Cancer Network: NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast and Ovarian. Version 2.2016. Fort Washington, PA: National Comprehensive Cancer Network, 2016. Available online with free registration. Last accessed October 6, 2016.[PUBMED Abstract]

  13. Bancroft EK, Page EC, Castro E, et al.: Targeted prostate cancer screening in BRCA1 and BRCA2 mutation carriers: results from the initial screening round of the IMPACT study. Eur Urol 66 (3): 489-99, 2014.[PUBMED Abstract]

  14. National Collaborating Centre for Cancer (UK): Prostate Cancer: Diagnosis and Treatment. Cardiff, UK: National Collaborating Centre for Cancer, 2008. Available online. Last accessed July 14, 2016.[PUBMED Abstract]

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前立腺がんリスクの評価

本セクションの目的は、前立腺がんへの感受性について患者を評価しカウンセリングするための現在のアプローチを記述することである。前立腺がんリスクが高い男性に対する遺伝カウンセリングには、他の遺伝性がんに対する遺伝カウンセリングの要素がすべて含まれる。(詳しい情報については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングに関するPDQ要約を参照のこと。)遺伝カウンセリングの内容には、前立腺がんリスクの概念、家族歴を詳細に調べる重要性を強調すること、年齢に関係したリスクを導き出すための家系図の分析、および罹患している家系員が複数いる人に調査研究への参加を提案することが含まれる。 [1] [2] 研究以外の状況では前立腺がん感受性に対する遺伝子検査は利用できない。前立腺がんの家系が現在実施中の研究に紹介されることがあるが、これらの研究は参加者に個人的な遺伝子の結果を提供しない。

米国人男性では、生涯の間に8人に1人が前立腺がんに罹患すると推定されている。 [3] 現在、全前立腺がんの約5~10%はまれな常染色体優性の前立腺がん感受性遺伝子が原因であるという仮説を支持する証拠がある。 [4] [5] 遺伝的感受性と関連する前立腺がんの割合ははるかに大きい可能性がある。 [6] [7] [8] 前立腺がんの家族歴を有する男性は、一般的に前立腺がんリスクに関する遺伝カウンセリングの候補と考えられる。Hopkinsの基準により遺伝性前立腺がん家系の実用的な定義が可能となる。 [9] 以下の3つの基準がある:

  1. 第一度近親者(父親、兄弟、息子)が3人以上、または
  2. 母方または父方家系のどちらかでの3世代連続、または
  3. 発症年齢55歳以下の近親者が少なくとも2人以上。

これらの基準のうち1つでも満たせば、遺伝性前立腺がん家系であるとみなされる。1件の研究で、前立腺がんの男性の息子において前立腺がん感受性に関する態度が調査された。 [10] 息子の90%が、前立腺がんに対する遺伝的感受性があるかどうかを知ることに関心があり、前立腺がんの家族歴があれば彼らはスクリーニングを受け、遺伝子検査を検討するだろうということが明らかにされた;しかしながら、他の遺伝性がん症候群の遺伝子検査への同じような高いレベルの関心は一般的に、臨床的遺伝子検査が利用可能になり受診率を検証すると裏付けられていない。

リスクの評価および解析

前立腺がんの遺伝的リスクが懸念される男性の評価には、詳細な家族歴の聴取;年齢、人種、ならびに脂肪および乳製品の食事摂取量などの個人的な前立腺がんの危険因子に関する情報を聞き出すこと;他の医学的問題を記録すること;遺伝学関係の心理社会的問題を評価することを含めるべきである。

家族歴の資料作成は家系の構成に基づき、一般的に以下を含む:


  • 母方と父方血統の両方におけるがんの病歴。

  • すべての原発がん(前立腺がんだけでなく)の診断および診断時年齢。

  • 人種および民族。

  • 良性の前立腺肥大症を含むその他の健康問題。 [11]

(家族歴の聴取に関するより詳しい記述については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングのPDQ要約の家族歴の文書化のセクションを参照のこと。)

家族歴の分析は一般的に以下の4要素で構成される:

  1. 既知の遺伝性がん症候群を示唆しうるがん多発を同定するため、家系内におけるがんパターンを評価すること。部位特異的な前立腺がんに加えて、その他のがん感受性症候群にも構成腫瘍の1つとして前立腺がんが含まれる(例えば、[BRCA1およびBRCA2における病原性多様体と関連する]遺伝性乳がん/卵巣がん症候群)。
  2. 遺伝的伝達の評価。家系は、前立腺がんに対する遺伝的感受性のより高い可能性と関連しうる常染色体優性遺伝とX連鎖遺伝の両方の証拠について評価されるべきである。常染色体優性伝達は連続した世代における罹患家系員の存在を特徴とし、各世代の男性の約50%が前立腺がんに罹患している。X連鎖遺伝は母系の罹患男性から感受性が明らかに伝達されることにより示唆される。(詳しい情報については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングのPDQ要約の家族歴の分析のセクションを参照のこと。)
  3. 家系における前立腺がんの診断時年齢。前立腺がんに対する遺伝的感受性は、早期発症型(定義は一貫していない)前立腺がんの家系において可能性が高い。 [12] しかしながら、遺伝子研究はまた、前立腺がんがより高齢で発症している家系においても進行中である。総じて、遺伝性前立腺がんがルーチンに通常より若い診断時年齢を特徴とするかどうかに関するデータは一貫していない。
  4. 家系および疫学的研究に基づいたリスク評価複数の研究によって、前立腺がんに罹患した男性の第一度近親者は、一般集団の男性と比べて前立腺がんを発症する可能性が2~3倍高いと報告されている。数件の研究において、前立腺がんの相対リスク(RR)は低い年齢で前立腺がんを発症する家系において最も高く、早期の発症年齢が一般的な特徴である他のがん感受性症候群と一致している。53歳未満で前立腺がんと診断された男性の男性近親者において、前立腺がんを発症する生涯累積リスクは40%と推定されている。 [13] 症例1,500人および対照1,600人を上回る集団ベースのケースコントロール研究では、白人、アフリカ系米国人、およびアジア系米国人を対象に解析し、罹患した第一度近親者がいる男性で、年齢および民族について調整した後のオッズ比が2.5であったことが報告された。 [14] 兄弟および父親または息子が前立腺がんに罹患している男性に対する相対リスクは6.4と推定された。

多くの研究が、前立腺がんの男性から提供された前立腺がんの家族歴の正確度について調査している。これは、リスクの評価が未検証の家族歴情報に基づいている場合に臨床的重要性を有する。前立腺がんの家族歴をもつ非罹患男性154人を対象としたオーストラリアの研究では、自己報告型の家族歴が症例の89.6%においてがん登録データで検証された。 [15] 3年以内の診断時年齢の正確度は症例の83%で正しく、5年以内の診断時年齢の正確度は症例の93%で正しかった。55歳未満の男性からの自己報告型の家族歴および第一度近親者に関する報告が最も正確度が高かった。 [15] しかしながら、前立腺がんの自己報告型の家族歴は時間の経過とともに報告の信頼性が低くなることがあるため [16] 、患者に明らかな家族歴があるかどうかを決定したい場合には、報告された前立腺がんの診断を客観的に検証する必要が強調されている。

個人の健康および危険因子の病歴は以下を含むが、以下に限定されない:


  • 家族歴。

  • 年齢

  • 人種

  • 脂肪の摂取を含む現在および過去の食事。

  • ステロイド(例えば、フィナステリド[Proscar])など、前立腺の増殖に影響しうる薬物の現在および過去の使用。(フィナステリドおよび前立腺がんに関する詳しい情報については、前立腺がんの予防に関するPDQ要約を参照のこと。)

  • 補完および代替の薬物療法(例えば、Saw Palmetto[ノコギリヤシ]、PC-SPES)の現在および過去の使用。 [17] (詳しい情報については、PC-SPESに関するPDQ要約を参照のこと。)

前立腺がんに対する最も決定的な危険因子は年齢、人種および家族歴である。 [18] 他の危険因子と前立腺がんリスク間の相関は明確には確立されていない。こうした限界にもかかわらず、がんリスクのカウンセリングは、前立腺がん危険因子の知識状態に関して詳細を提供している啓蒙段階である。これらの他の危険因子に関する話し合いは、患者の個人的な健康および危険因子の病歴を組み込んで個別に対応すべきである。(前立腺がん危険因子の詳しい記述については、本要約の前立腺がんの危険因子のセクションを参照のこと。)

この状況における心理社会的評価には、以下の査定が含まれる:


  • 心理的苦悩のレベル。

  • 前立腺がんの認識されたリスク。

  • うつ病、不安、またはその他の精神病の過去の病歴。

1件の研究により、前立腺がんの家族歴があり前立腺がんスクリーニングに参加した男性は、特に前立腺がんリスクを過剰評価して報告した場合に、心理的苦悩が大きいことが明らかにされた。心理的苦悩および高いリスク認識は、がんスクリーニングへの指示遵守度およびリスク管理戦略に影響しうる。重大な心理社会的問題が認識される場合には、メンタルヘルス専門家と相談することが有用である。 [19]

遺伝子検査

現時点では、遺伝性乳がん/卵巣がん(HBOC)症候群の証拠がある家族内の前立腺がんを除いて、遺伝性前立腺がん素因を検出する臨床遺伝子検査はない。(HBOCにおける前立腺がんに関する詳しい情報については、本要約の BRCA1とBRCA2 のセクション、および乳がんおよび婦人科がんの遺伝学に関するPDQ要約を参照のこと。)候補となっている感受性遺伝子はいずれも、前立腺がん素因との関連があいまいである。前立腺がんに対して遺伝的感受性をもつと疑われている家系には、遺伝性前立腺がん感受性の遺伝子的根拠を研究している、現在実施中の調査研究への参加が検討されることがある。


参考文献
  1. Nieder AM, Taneja SS, Zeegers MP, et al.: Genetic counseling for prostate cancer risk. Clin Genet 63 (3): 169-76, 2003.[PUBMED Abstract]

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  3. American Cancer Society: Cancer Facts and Figures 2017. Atlanta, Ga: American Cancer Society, 2017. Available online. Last accessed January 13, 2017.[PUBMED Abstract]

  4. Steinberg GD, Carter BS, Beaty TH, et al.: Family history and the risk of prostate cancer. Prostate 17 (4): 337-47, 1990.[PUBMED Abstract]

  5. Carter BS, Beaty TH, Steinberg GD, et al.: Mendelian inheritance of familial prostate cancer. Proc Natl Acad Sci U S A 89 (8): 3367-71, 1992.[PUBMED Abstract]

  6. Lesko SM, Rosenberg L, Shapiro S: Family history and prostate cancer risk. Am J Epidemiol 144 (11): 1041-7, 1996.[PUBMED Abstract]

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  8. Schaid DJ, McDonnell SK, Blute ML, et al.: Evidence for autosomal dominant inheritance of prostate cancer. Am J Hum Genet 62 (6): 1425-38, 1998.[PUBMED Abstract]

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  12. Giovannucci E: How is individual risk for prostate cancer assessed? Hematol Oncol Clin North Am 10 (3): 537-48, 1996.[PUBMED Abstract]

  13. Neuhausen SL, Skolnick MH, Cannon-Albright L: Familial prostate cancer studies in Utah. Br J Urol 79 (Suppl 1): 15-20, 1997.[PUBMED Abstract]

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  18. Stanford JL, Stephenson RA, Coyle LM, et al., eds.: Prostate Cancer Trends 1973-1995. Bethesda, Md: National Cancer Institute, 1999. NIH Pub. No. 99-4543. Also available online. Last accessed July 14, 2016.[PUBMED Abstract]

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家族性前立腺がんにおける心理社会的問題

現在までの研究には、前立腺がんリスクに関係した心理社会的問題に関する調査、フォーカスグループ、および相関研究が含まれている。(がんリスク評価遺伝カウンセリングに関係した心理的問題に関する詳しい情報については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングのPDQ要約を参照のこと。)前立腺がんリスクに何らかの関連を有する遺伝子病原性多様体に対する遺伝子検査が登場し、この検査を利用して前立腺がんのリスクが高い個人を識別することが可能になった。遺伝性の前立腺がん感受性について遺伝子検査を検討する男性の動機を理解することは、臨床家および研究者が検査への関心を予想する助けとなるだろう。さらにこれらのデータから、男性や家族が遺伝子検査に関するリスク、有益性、意思決定の問題、インフォームド・コンセントに関する考慮事項といったカウンセリング戦略の性質や内容を知ることもできる。

リスクの認識

前立腺がんのリスクに関する知識は、男性が前立腺がんスクリーニングおよび可能であれば遺伝子検査を受診する意思決定に影響する因子であると考えられる。 [1] アフリカ系米国人男性79人(このうち38人が前立腺がんと診断され、残りは非罹患であったが、前立腺がんのリスクが高かった)を対象とした研究で、遺伝性前立腺がんに関する知識を評価する9項目の質問が電話で行われた。0~9のスコアで満点を9としたスコアの範囲は3.5~9となり、平均スコアは6.34であった。遺伝子検査に関する3つの質問は、不正解となる可能性が最も高かった。対照的に、前立腺がんリスクの遺伝に関係した質問は、被験者の大部分が正答した。 [2] 全体的に遺伝性前立腺がんの知識は低く、特に遺伝的感受性の概念に関する知識が乏しかったことは、教育を充実する必要性を示している。文献の明らかになりつつある主要部分で現在、家族歴があるおよび家族歴がない男性における前立腺がんに対するリスクの認識が探索されている。表11では、前立腺がんリスクの認識について調査した研究の要約を示している。

表11.前立腺がんのリスクの認識に関する横断研究の要約

研究の対象集団 サンプルサイズ 研究の対象集団の内でリスクを正確に報告した割合 その他の所見
FDR = 第一度近親者。
前立腺がんの家族歴がある非罹患男性 [3] 40~72歳の男性120人 40%  
前立腺がん男性の第一度近親者 [4] 40~70歳の男性105人 62%  
前立腺がんに罹患した兄弟が複数いる男性 [5] 33~78歳の男性111人 入手不可 38%の男性が、自身の前立腺がんリスクを平均的男性と比較して同じか、または低いと報告した。
前立腺がん男性の第一度近親者および地域集団 [6] 全員が40歳以上で、前立腺がんの第一度近親者が1人いる男性56人および前立腺がんの第一度近親者がいない男性100人 57% 第一度近親者が1人いる男性の29%が自身は平均的男性とリスクが同じであると考えており、14%は平均よりもいくぶんリスクが低いと考えていた。


前立腺がん患者の第一度近親者(FDR)が自身の前立腺がんリスクを正確に推測しているかどうかについては、諸研究でさまざまな結論が得られている。数件の研究により前立腺がんの家族歴がある男性は、自身のリスクを平均的男性と比較して同じか、または低いと考えていたことが明らかにされた。 [5] [6] 結婚しているなど、その他の因子は前立腺がんリスクのより高い認識と関連している。 [7] 前立腺がんリスクの認識における交絡因子は良性前立腺肥大症と前立腺がんとの混同である。 [3]

前立腺がんリスクに関する遺伝子検査において予想される関心

表12に要約された多くの研究は、このような遺伝子検査が臨床用途で利用可能になった場合の遺伝子検査に対する参加者の関心を調査している。遺伝子検査への関心に肯定的に影響することが明らかにされている因子には以下のものがある:


  • プライマリケア医の助言。 [8]

  • 情動的苦痛および前立腺がんの治療効果に関する心配が一緒になったもの。 [9]

  • 複数の子供をもつこと。 [10]

人種、教育、婚姻の有無、雇用状態、家族歴、および年齢の遺伝子検査に対する関心への影響に関して、これらの研究の所見は一貫しなかった。研究参加者は、雇用主、保険者、および家族の間での検査結果の機密;汚名を着せられること;保険喪失の可能性;および検査の費用に関する心配を表明した。 [8] これらの心配は、乳がん素因の遺伝子検査を検討している女性において報告されている心配とほぼ同じである。 [11] [12] [13] [14] [15] [16] 検査で前立腺がん感受性遺伝子の病原性多様体がみつかった場合の懸念を調査すると、がんの診断後に性生活に支障が出て生活の質が低下することや不安の増大、ストレス増加などを心配する声が挙がった。 [8]

表12.前立腺がん感受性遺伝子検査において予想される関心の横断研究の要約

研究の対象集団 サンプルサイズ 遺伝子検査への関心を示す割合 その他の所見
FDR = 第一度近親者;PSA = 前立腺特異抗原
前立腺スクリーニングクリニック参加者 [17] 40~97歳の男性342人 89% 28%は、がんに対する遺伝的素因の概念に理解を示さなかった。
一般集団;9%が家族歴陽性 [8] 12のフォーカスグループで、18~70歳の男性計90人 すべてのフォーカスグループ  
アフリカ系米国人男性 [18] 21~98歳の男性320人 87% ほとんどの参加者が遺伝的感受性検査と前立腺特異抗原血液検査を区別できなかった。
前立腺がんに罹患した第一度近親者が複数いる、またはいない男性 [9] 40歳を超える男性126人;平均年齢52.6歳 24%が明確に;50%がおそらく関心を示した  
前立腺がんの第一度近親者が1人いるスウェーデン人男性 [3] 40~72歳の男性110人 76%が明確に;18%がおそらく関心を示した 89%が、自分の息子が遺伝子検査を受けることを明確に、またはおそらく希望した。
前立腺がんのスウェーデン人男性の息子 [10] 21~65歳の男性101人 90%;前立腺がんに罹患した家系員が2~3人いる息子では100% 60%が前立腺がんのリスクが高いことについて、懸念を示した。
前立腺がんの既往がない健康な外来患者の男性 [19] 40~69歳の男性400人 82%  
前立腺がんの既往がない健康なアフリカ系米国人男性 [20] 40~70歳のアフリカ系米国人男性413人 87% 前立腺がんスクリーニングの効果への信用および前立腺がんスクリーニングを受ける意思は、検査への関心と関連していた。
前立腺がんの既往がない健康なオーストラリア人男性 [21] 成人男性473人 66%が明確に;26%がおそらく関心を示した 73%が食事は前立腺がんリスクに影響すると考えていると報告した。
前立腺がんの男性および非罹患男性家系員 [22] 前立腺がん男性559人;370人の非罹患男性近親者 がんに罹患した男性の45%;罹患男性の56% 罹患男性においては、より年齢が低いことおよび遺伝子検査への心安さが検査への関心の予測因子であった。非罹患男性においては、高齢、検査の熟知度、および過去5年以内のPSA検査が遺伝子検査への関心の予測因子であった。


全体として、これらの報告、および遺伝子検査を受ける意志と関連する因子を調べるために概念モデルを開発した研究 [23] により、機密性および差別の可能性についての心配にもかかわらず、前立腺がん感受性の遺伝子検査への明らかな関心が示されている。これらの知見は、検査が利用可能となり、実際の前立腺がん遺伝子検査の受診を予測する場合に慎重に解釈する必要がある。ハンチントン舞踏病と遺伝性乳がんおよび卵巣がんの両方において、検査が可能になる前の仮定的な関心は、検査が利用可能になった後の実際の受診よりもはるかに高かった。 [24] [25]

前立腺がんに罹患した第一度近親者を有するおよび有さない診断されていない男性から成るサンプルにおいて、年齢が高く教育水準が低いほど、前立腺がん特異的苦痛(Memorial Anxiety Scale for Prostate Cancerの11項目のProstate Cancer Anxiety Subscaleで測定)のレベルが低かった;泌尿器症状が多いほど、苦痛のレベルが高かった。 [26] 同じ研究で、前立腺がんに罹患した第一度近親者を有し、近親者のがんを脅迫的に感じる男性および前立腺がんにより死亡した近親者がいる男性は、より高い苦痛を報告した。一般的に、前立腺がん特異的な苦痛のレベルは、どちらの集団の男性でも低かった。

家系的リスクの高い個人における前立腺がんスクリーニング

遺伝的原因による前立腺がんの割合は5~10%と推定されており [27] 、前立腺がんのリスクは、血縁者内での前立腺がんの患者数が多いほど、また家系内における前立腺がん発症年齢が低いほど高くなっている。 [28] 一般集団を対象に前立腺がんの早期発見のために血清PSA測定および直腸指診を実施することについては大きな論争があり、さまざまな団体からかなり異なるスクリーニングアルゴリズムおよび推奨年齢が提唱されている。(一般集団における前立腺がんに関する詳しい情報については、前立腺がんの治療のPDQ要約を参照し、遺伝性の前立腺がん感受性に関する詳しい情報については、本要約の介入のセクションを参照のこと。)この差異は、遺伝性がんの家系員または前立腺がん患者の第一度近親者のスクリーニングに関する推奨において患者および医療提供者に混乱を招く可能性が高い。関心の高い心理社会的問題には、リスクの高い人が遺伝性のリスクに関して何を理解しているか、情報介入は前立腺がんスクリーニング受診行動の増加と関連しているかどうか、およびリスクの高い人に対してスクリーニングと関連する生活の質への意味合いとは何か、などがある。リスクの高い人がそのリスクを同定し、年齢および家族歴に適したスクリーニングを受ける支援をする場合にプライマリケア提供者の役割もまた興味深い。

スクリーニング行動

ほとんどのがんに対して共通にいえるが、遺伝的リスクに関する知識の向上という目標は、簡単に言い換えれば、承認され推奨されている(実証されていない場合)スクリーニング行動を遵守する人の増加が望まれているということである。前立腺がんのスクリーニングでは、高リスク集団と一般集団のどちらについても明確な推奨が行われていないために、この点はより複雑になっている。(詳しい情報については、本要約のスクリーニングのセクションを参照のこと。)また、前立腺がんの早期発見にはその価値に関して論争が続いている。この論争により、患者と医療提供者の双方にためらいが生じており、またスクリーニング行動と関係する心理社会的因子が問題になっている。

いくつかの小規模な研究で、家族歴に基づいて前立腺がんリスクが平均および高い男性が受けた前立腺がんスクリーニングの行動的な関連性が調査されている;これらは、表13に要約している。一般に、家族歴のある男性はリスクのない男性よりスクリーニングを受ける可能性が高いかどうか、また、そのスクリーニングがその男性のリスク状態に対して適切かどうかに関して、結果は相反しているようである。さらに、ほとんどの研究で被験者が比較的少数であり、スクリーニング基準は統一されていなかったことから、一般化は困難である。

表13.前立腺がんスクリーニングに関する行動的相関の研究の要約

研究の対象集団 サンプルサイズ スクリーニングを受ける割合 スクリーニング行動が予測される相関事項
AAHPC = African American Hereditary Prostate Cancer Study Network;DRE = 直腸指診;FDR = 第一度近親者;NHIS = 国民健康聞き取り調査(National Health Interview Survey);PSA = 前立腺特異抗原。
前立腺がんの第一度近親者が1人以上の非罹患男性 [29] 男性82人(40歳以上;平均年齢50.5歳)

PSA:

年齢が50歳を超える。
年収U.S. $40,000以上。
50%が過去14ヵ月内にPSAスクリーニングを報告した。 研究登録前のPSAスクリーニング受診歴。
前立腺がんスクリーニング受診に対する高いレベルの自己効力感および反応効力。
前立腺がん男性の息子 [30] 男性124人(38~84歳の前立腺がんの病歴を有する男性60人、年齢中央値59歳;31~78歳の非罹患男性64人、年齢中央値55歳)

PSA:

39.4%の患者が要求。
- 非罹患男性:95.3%が以前にPSA検査を受けたことがあると報告した。
- 罹患男性:71.7%が診断前にPSA検査を受けたことがあると報告した。

DRE:

- 非罹患男性:96.9%が以前にDREを受けたことがあると報告した。
- 罹患男性:91.5%が診断前にDREを受けたことがあると報告した。 35.6%の医師が要求。

PSAとDREの両方:

- 非罹患男性:93.8%が両方の検査を受けていた。
- 罹患男性:70.0%が診断前に両方の検査を受けたことがあると報告した。
前立腺がんの第一度近親者が1人いる、およびいない非罹患男性 [6] 40歳以上の男性156人(前立腺がんの第一度近親者が1人いる男性56人;前立腺がんの第一度近親者がいない男性100人)

PSA:

より高い年齢。
以前にPSA検査を受けたことがあると63%が報告した。
第一度近親者は疾患に対するより高い脆弱性および疾患予防におけるより低い確信を報告したが、このことは前立腺がんの第一度近親者がいない男性と比較した場合に、前立腺がんスクリーニングの増加につながらなかった。

DRE:

以前にDREを受けたことがあると86%が報告した。
優性の前立腺がん感受性遺伝子における病原性多様体を保有する確率が50%の家系の非罹患スウェーデン人男性 [3] 50~72歳の男性110人 50歳以上の男性の68%が前立腺がんのスクリーニングを受けた。 前立腺がんの近親者が多い。
Impact of Event Scaleの回避サブスケールでのスコアの低さ。 [31]
前立腺がん男性の兄弟または息子 [32] 40~70歳の男性136人(72%がアフリカ系米国人男性であった)

PSA:

前立腺がんの近親者が多い。
以前にPSA検査を受けたことがあると72%が報告した。
- 1年以内に73%。 より高い年齢。
- 1~2年前に23%。
- 2年より前に4%。

DRE:

泌尿器症状。
以前にDREを受けたことがあると90%が報告した。
- 1年以内に60%。
- 1~2年前に23%。 71%が、医師が彼らに前立腺がんスクリーニングに関する話をしたと報告した。
- 2年より前に17%。
前立腺がんの第一度近親者が1人いる、およびいない非罹患男性 [33] 40~80歳の男性166人(第一度近親者が1人いる男性83人;家族歴がない男性83人)

PSA:

前立腺がんの家族歴。
- 第一度近親者:72%が以前にPSA検査を受けたことがあると報告した。
- 家族歴なし:53%が以前にPSA検査を受けたことがあると報告した。 前立腺がん発現に対する脆弱性の認識の高さ。
前立腺がん男性のフランス人の兄弟または息子 [34] 40~70歳の男性420人

PSA:

より若い年齢。
前立腺がんの近親者が多い。
不安の増大。
88%が年一回のPSAスクリーニングを遵守した。 既婚。
より高い教育レベル。
前立腺がんスクリーニングの以前の経歴。
AAHPCに参加した非罹患アフリカ系米国人男性からのデータおよび1998年および2000年のNHISからのデータ [35] 40~69歳の非罹患男性:

PSA:

より若い年齢。
AAHPCコホート:
- 45%が以前にPSA検査を受けたことがあると報告した。
- AAHPCコホート:男性134人 2000年のNHISにおけるアフリカ系米国人男性:
- 65%が以前にPSA検査を受けたことがあると報告した。

DRE:

- NHISの1998年のコホート:男性5,583人(アフリカ系米国人683人、白人4,900人) AAHPCコホート: 前立腺がんの近親者が少ない。
- 35%が以前にDREを受けたことがあると報告した。
1998年のNHISにおけるアフリカ系米国人男性:
- NHISの2000年のコホート:男性3,359人(アフリカ系米国人411人、白人2,948人) - 45%が以前にDREを受けたことがあると報告した。
2000年NHISに参加した非罹患アフリカ系米国人男性 [36] 45歳以上の男性736人

PSA:

高齢(50歳以上)。
民間または軍隊の健康保険。
以前にPSA検査を受けたことがあると48%が報告した。 健康状態が普通または不良。
前立腺がんの家族歴。


家系的リスクの高い個人におけるスクリーニングの心理社会的アウトカム

前立腺がんを発症することについての心配:

数件の研究において、前立腺がん患者の第一度近親者である男性の最大50%が前立腺がんを発症することについて、多少の心配を表明したが [5] 、報告される不安のレベルは一般的に比較的低く、短期のリスクよりもむしろ生涯リスクと関係している。 [3] [5] 同様に、この心配は、患者が前立腺がんと診断された時点の年齢よりも若い第一度近親者の男性の方が高くなっている。 [5] 未婚の第一度近親者では、既婚男性よりも前立腺がんを発症することについての心配が強かった。 [5] 前立腺がんを発症することについての心配の程度が大きい男性は、個人的な前立腺がんリスクの推定値も高く、前立腺がんと診断された近親者の数も多かった。 [5] スウェーデンの研究では、調査を受けた男性110人中、前立腺がんに関する心配が日常生活に「非常に」影響していると話したのはわずか3%であり、28%が前立腺がんに関する心配が日常生活に「わずかに」影響していると話した。 [3]

ベースラインの苦悩レベル:

無料の前立腺がんスクリーニングに自ら応募した男性で、前立腺がん患者の第一度近親者の男性とそうではない男性の間には、一般的な苦悩および前立腺がんに関連する苦悩について大きな違いはみられなかった。 [37] この研究で前立腺がんの家族歴をもつ男性は、より高いレベルのリスクの認識を示した。スウェーデンの研究では、前立腺がんを発症することについてのより強い心配を報告した、前立腺がん患者の第一度男性近親者は、心配のレベルがより低い男性よりも病院不安およびうつ尺度(HADS)のうつ病および不安スコアが高かった。この研究において、第一度近親者のHADSうつ病および不安スコアの平均は75パーセンタイルであった。うつ病は、より高いレベルの個人的リスクの過大評価と関連していた。 [3]

前立腺がんスクリーニング中に経験される苦悩:

1件の研究で、PSA検査を用いた前立腺がんスクリーニングを受けている間に、前立腺がんの家族歴がある男性220人が経験する不安および一般的な生活の質が測定された。 [32] このグループにおいて、男性の20%が不安スコアの中等度の悪化を経験し、20%が健康に関連した生活の質(HRQOL)における最低限の悪化を経験した。評価の平均期間は35日であったが、これには平均15.6日のPSA検査および結果待ちの期間が含まれた。PSA値が正常(4ng/mL以下)な男性だけが評価された。HRQOLの悪化と関連する因子は、50~60歳の年齢、前立腺がんの近親者が3人以上いること、心配症であること、十分な教育を受けていること、および現在同居の子供がいないことであった。これらの著者は、第一度近親者に対するスクリーニングの影響の分析は、「スクリーニング中に悪化する被験者の割合によって示されるような反応の多様性を隠す」可能性のあるスコアの平均的変化にのみ依存すべきではないということを強調している。これらは正常な結果と考えられるものを受け入れていた男性であること、および一部の男性がスクリーニングに関連した苦悩を経験したことを考慮して、この研究は、遺伝的リスクが高い男性がスクリーニングについて繰り返される要求に従うように促すためには、スクリーニングに関係する苦悩を緩和するための介入が必要な場合があるということを示唆している。

英国の1件の研究で、PSAスクリーニング研究に参加した前立腺がん男性の第一度近親者における心理学的な病的状態およびスクリーニングへの遵守度の予測因子が評価された。128人の第一度近親者が、PSAスクリーニングの心理学的な病的状態、障害、有益性、知識、および前立腺がん感受性の認識を評価する測定を完了した。全体では、18人の男性(14%)でスコアが心理学的な病的状態に対する閾値を越え、正常な集団の範囲と一致した。がんの心配は、健康への不安、認識されたリスク、および主観的なストレスと正の相関を示した。しかしながら、心理学的な病的状態はPSAスクリーニングへの遵守を予測しなかった。過去のスクリーニング行動だけがPSAスクリーニングへの遵守と関連することが明らかにされた。 [38]


参考文献
  1. Weinrich SP, Weinrich MC, Boyd MD, et al.: The impact of prostate cancer knowledge on cancer screening. Oncol Nurs Forum 25 (3): 527-34, 1998.[PUBMED Abstract]

  2. Weinrich S, Vijayakumar S, Powell IJ, et al.: Knowledge of hereditary prostate cancer among high-risk African American men. Oncol Nurs Forum 34 (4): 854-60, 2007.[PUBMED Abstract]

  3. Bratt O, Damber JE, Emanuelsson M, et al.: Risk perception, screening practice and interest in genetic testing among unaffected men in families with hereditary prostate cancer. Eur J Cancer 36 (2): 235-41, 2000.[PUBMED Abstract]

  4. Cormier L, Kwan L, Reid K, et al.: Knowledge and beliefs among brothers and sons of men with prostate cancer. Urology 59 (6): 895-900, 2002.[PUBMED Abstract]

  5. Beebe-Dimmer JL, Wood DP Jr, Gruber SB, et al.: Risk perception and concern among brothers of men with prostate carcinoma. Cancer 100 (7): 1537-44, 2004.[PUBMED Abstract]

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  8. Doukas DJ, Fetters MD, Coyne JC, et al.: How men view genetic testing for prostate cancer risk: findings from focus groups. Clin Genet 58 (3): 169-76, 2000.[PUBMED Abstract]

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本要約の変更点(02/10/2017)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

前立腺がんリスクに関連する遺伝子および遺伝的変異体の同定

前立腺がんの侵攻性に関連する遺伝的多様体のサブセクションは包括的に見直され、広範囲にわたって改訂された。

前立腺がんリスクに臨床的に関連する可能性のある遺伝子

本文に、生殖細胞DNA修復遺伝子の病原性多様体と転移性前立腺がんとの関連が評価され、がん家族歴または診断時年齢について非選択の男性692人のうち、5.3%がBRCA2病原性多様体を有しており、0.9%がBRCA1病原性多様体を有していた研究に関する記述が追加された(引用、参考文献8としてPritchard et al.)。

本文に以下の記述が追加された;他の数件の研究で、リンチ症候群家系における前立腺がんの発生率の特徴を明らかにし、分子的特徴を前立腺がんリスクと関連付けようとしている(引用、参考文献44としてDominguez-Valentin et al.)。

参考文献56としてBeebe-Dimmer et al.が追加された。

本文に以下の記述が追加された;11件のケースコントロール研究を含む別のメタアナリシスでも、HOXB13 G84Eキャリアで前立腺がんのリスク推定値が高いことが報告され、HOXB13 G84Eと早発性疾患との関連性が強いことが明らかになった(引用、参考文献58としてHuang et al.)。

新規のサブセクションとして前立腺がんにおける多重遺伝子(パネル)検査が追加された。

本要約はPDQ Cancer Genetics Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

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本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、前立腺がんの遺伝学について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は、編集に関して米国国立がん研究所(NCI)から独立しているPDQ Cancer Genetics Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:


  • 会議での議論、

  • 本文の引用、または

  • 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

前立腺がんの遺伝学に対する主要な査読者は以下の通りである:


    本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

    証拠レベル

    本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Cancer Genetics Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

    本要約の使用許可

    PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

    本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

    PDQ® Cancer Genetics Editorial Board.PDQ Genetics of Prostate Cancer.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: http://www.cancer.gov/types/prostate/hp/prostate-genetics-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389227]

    本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

    免責条項

    これらの要約内の情報は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

    お問い合わせ

    Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。

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