医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、腎がんの遺伝学について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Cancer Genetics Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
要旨
この要旨では、本PDQ要約で扱う腎がん(腎細胞がん)の遺伝学の話題について概要を示すとともに、各話題に関するエビデンスを記述した以下の詳細セクションへのハイパーリンクを提供する。
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臨床管理
VHL、FH、FLCN、またはMETにおいて病原性多様体を保有しているか、保有するリスクがあると明らかになった個人では、定期的なサーベイランスが中心である。サーベイランスの推奨には、腎臓と腎臓以外の両方で疾患が発現していないかの定期的なスクリーニングが含まれる。
大きさが3cmのVHL関連腎腫瘍は一般的に、手術で管理される。腎温存技術は、腎機能を維持できることが示されているため一般的に用いられている。ラジオ波焼灼術や凍結アブレーションなどのアブレーション技術は、手術でのリスクが高い比較的小さい腫瘍を有する患者において用いられることがある。VHL患者の治療においてスニチニブなどの化学療法薬が研究されており、VHL関連RCCの治療(ただし、血管芽腫ではない)において有効であることが明らかにされている。網膜血管芽腫、中枢神経系病変、褐色細胞腫、膵嚢胞および膵神経内分泌腫瘍など、VHLの腎以外の症状はしばしば下位専門領域(subspeciality)の評価を必要とし、外科的介入が必要な場合もある。
HLRCC関連RCCは生物学的に侵攻性が強いため、早期の広範な外科的管理(例、切除断端を広くした根治的腎摘出術または腎部分切除術)が必要な場合がある。併用レジメンにおいてベバシズマブ/エルロチニブを利用する標的療法およびバンデタニブが研究段階にある。HLRCC関連皮膚病変は一般的に介入を必要としない。症状がある場合は、手術、凍結アブレーション、および/またはレーザー療法を検討してもよい。1件の小規模なランダム化比較試験では、A型ボツリヌス毒素により、皮膚病変に痛みが伴うHLRCC患者の生活の質が改善する可能性が示された。子宮平滑筋腫関連の痛みを緩和するためにホルモンおよび疼痛管理の医薬品が投与される場合がある。平滑筋腫もまた外科的に切除可能である。
BHD関連RCCおよびHPRC関連RCCはいずれも一般的に、これらが3cmに達したら腎部分切除術で管理される。HPRC関連RCCの個人では、潜在的な標的療法の1つとしてMET阻害が研究されている。BHD関連皮膚病変は一般的に介入を必要としない。BHD患者はまた、自然気胸のリスクも高く、これは一般集団と同様に管理される。
序
[注: 本要約で用いられている医学および科学用語については、NCI Dictionary of Genetics Termsに解説が用意されている。リンクが張られた用語をクリックすれば、別のウインドウにその定義が表示される。]
[注: 現在、遺伝学的多様性を記載するための用語体系を変化させるべく、遺伝学のコミュニティにおいて協調的な取り組みが進められている。その変化とは、研究対象の個人または集団と参照配列との間に存在する遺伝学的な差異を記載する際に、従来の「mutation(突然変異ないし変異)」ではなく、「variant(多様体ないしバリアント)」という用語を使用するというものである。多様体はさらに、良性(無害)(benign [harmless])、おそらく良性(likely benign)、意義不明(of uncertain significance)、おそらく病原性(likely pathogenic)、病原性(疾患を引き起こす)(pathogenic [disease causing])のいずれかに分類することができる。本要約では、全体を通じて、疾患を引き起こす突然変異に対して病原性多様体(pathogenic variant)という用語を使用する。多様体の分類に関する詳しい情報については、がん遺伝学の概要に関する要約を参照のこと。]
腎細胞がん(RCC)は、男女を問わず比較的よく診断されるがんの1つである。米国では、2018年には約65,340例の腎がんおよび腎盂がんが発生し、推定14,970例の死亡が予測されている。
[1]
このがんはすべての成人悪性疾患の約4%を占める。男女比は1.5:1である。
[2]
RCCは腎盂または腎髄質に発生する腎がんとは異なり、腎床部の内層(すなわち、尿細管)に形成されるがんにのみ適用される。RCC以外の腎がん(腎盂と腎髄質のがんなど)は、本要約で取り扱わない。一部のRCC好発家系における遺伝性発がんリスクの原因として、複数の遺伝子の病原性多様体が同定されている;これらの病原性多様体はRCC症例全体の5~8%を占めるに過ぎないと推定される。
[3]
[4]
その他のまだ解明されていない遺伝子および遺伝的背景因子が、非遺伝的危険因子とともに家族性RCCの発生に関与している可能性が高い。
RCCは散発性と遺伝性の両方の型で発生する。常染色体優性遺伝形式をとる以下の4つの主要なRCC症候群が同定されている:
- フォン・ヒッペル-リンダウ病(VHL)。
- 遺伝性平滑筋腫症および腎細胞がん(HLRCC)。
- 遺伝性乳頭状腎細胞がん(HPRC)。
- バート・ホッグ・デュベ症候群(BHD)。
本要約は、これらの遺伝的症候群に焦点を当てて構成されている。(散発性腎がんに関する詳しい情報については、腎細胞がんの治療および腎盂と尿管の移行上皮がんの治療に関するPDQ要約を参照のこと。)
自然史
各症候群の自然史は異なっており、組織学的特徴および基礎にある遺伝子変化などのいくつかの因子より影響される。報告されている各症候群の主な自然史を参考にすることは有用であるが、ときに認められる個別の変動について罹患者それぞれを評価しモニタリングする必要がある。個々の患者の予後は、発見および介入時の腎腫瘍の特徴次第であり、各症候群(VHL、HPRC、BHD、およびHLRCC)で異なる。診断時の予後規定因子として、RCCの病期、腫瘍が腎臓に限局しているかどうか、原発腫瘍の大きさ、Fuhrmanの核異型度、および多病巣性が挙げられる。
[5]
[6]
[7]
RCCの危険因子としての家族歴
RCCは、米国ですべての成人悪性疾患の約4%を占める。
[8]
RCCの疫学研究により、RCCの家族歴がこの疾患の危険因子であることが示唆されている。
[4]
[9]
[10]
Sweden Family-Cancer Database(1931年以降に出生したすべてのスウェーデン人とその生物学上の両親が含まれる)における2000年までの腎がんの分析により、RCCのリスクはRCC罹患者の同胞で特に高いことが観察された。親-子のペアよりも同胞ペアの方が相対リスク(RR)が高いことから、劣性遺伝子が散発性腎がん発症の一因であることが示唆される。
[9]
アイスランドの研究者らは、1955年から1999年にRCCを発症したすべてのアイスランド人患者(1,078例)を調査した。さらに研究者らは広範なコンピュータ化されたデータベースを用いて、60万人以上のアイスランド人を含む特有の家系図研究を実施した。その結果、この期間中にRCCを発症したアイスランド人患者の60%近くがRCCの第一度近親者または第二度近親者を有し、RCCに罹患した患者の同胞で推定されるRRは2.5であったことが明らかにされた。
[4]
デンマーク、フィンランド、ノルウェー、およびスウェーデンにおける一卵性双生児80,309人および性別が同じ二卵性双生児123,382人を評価した研究で、片方ががんと診断された双生児で過剰ながんリスクが明らかになった。
[10]
片方もがんを発症した双生児で推定される累積リスクは、コホート全体(32%)よりも二卵性双生児(37%;95%CI、36%-38%)で絶対値が5%(95%信頼区間[CI]、4%-6%)高く、一卵性双生児(46%;95%CI、44%-48%)で絶対値が14%(95%CI、12%-16%)高かった。共有された環境との比較での遺伝の相対的寄与を評価することで算出したがんの全遺伝率は33%と推定された。腎がんの遺伝率は38%(95%CI、21%-55%)と推定され、共有された環境因子は全リスクに対し有意な寄与を示さなかった。
発症時年齢が低いこともまた、遺伝的病因の可能性を示す手がかりである。一般的に40代から60代の間に診断される散発性RCCに対して、一般的に遺伝性腎がんはより早い年齢で診断される。米国国立がん研究所による600例を超える遺伝性腎がんを対象とした1件のレビューによると、診断時年齢の中央値は37歳であり、70%の症例が46歳以下で診断されていたのに対し
[3]
、全集団における診断時年齢中央値は64歳であった。
[11]
ほとんどの遺伝性RCCでは、両側性および多病巣性が一般的である。遺伝子検査を受けたRCC患者1,235人のレトロスペクティブ解析では、この集団の6.1%が遺伝子検査の結果が陽性、75.5%が陰性、18.4%が意義不明の多様体であることが明らかになった。検査結果陽性と相関する唯一の変数がRCC診断時の年齢であった。
[12]
以下の組織がガイダンスを提供しているが、どのような対象者を遺伝性腎がん症候群の可能性についての遺伝カウンセリングに紹介するかに関するコンセンサスは得られていない:
- American College of Medical Genetics and Genomics、およびNational Society of Genetic Counselors。
[13]
-
VHL Alliance。
- Kidney Cancer Research Network of Canada。
[14]
RCCに対するこの他の危険因子
RCCのリスクに寄与する環境因子および生活様式の因子に関する研究では、ほぼ例外なく散発性(すなわち、非遺伝性)RCCに焦点が当てられている。喫煙、高血圧、および肥満がRCCに関連する主要な環境および生活様式の危険因子である。
[15]
これに加えて、環境的発がん物質であるトリクロロエチレンに曝露した労働者も散発性淡明細胞型RCCを発症したことが報告されており、これはおそらくVHL遺伝子における体細胞多様体によるものであると考えられる。
[16]
野菜と果物の食事摂取はRCCと逆相関している。赤身肉および乳製品の摂取の増加は、一貫性はないもののRCCリスクの増大に関連している。
[17]
参考文献
-
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主要な遺伝性腎細胞がん症候群
常染色体優性遺伝形式をとる4つの主要な遺伝性腎細胞がん(RCC)症候群(フォン・ヒッペル-リンダウ病[VHL]、遺伝性平滑筋腫症および腎細胞がん[HLRCC]、バート・ホッグ・デュベ症候群[BHD]、および遺伝性乳頭状腎細胞がん[HPRC])について、その感受性遺伝子とともに表1に示す。これらの症候群については、本要約の後のセクションで詳述する。
表1.遺伝性腎細胞がん(RCC)症候群と感受性遺伝子
症候群(遺伝様式) | 遺伝子 | 腎腫瘍の病理学(累積がんリスク) | 腎以外の腫瘍と関連する異常 |
AD = 常染色体優性;ccRCC = 淡明細胞型腎細胞がん;CNS = 中枢神経系。 |
フォン・ヒッペル-リンダウ病(VHL)(AD)
[1]
[2]
| VHL 3p26、腫瘍抑制(pVHL) | ccRCC(多病巣性)(24~45%) | CNS血管芽腫、網膜血管芽腫、褐色細胞腫、膵神経内分泌腫瘍、内リンパ嚢腫瘍、膵臓、精巣上体、および子宮広間膜の嚢胞腺腫 |
遺伝性平滑筋腫症および腎細胞がん(HLRCC)(AD)
[3]
[4]
[5]
[6]
| FH 1q42.1、腫瘍抑制(フマル酸ヒドラターゼ) | 「HLRCC型RCC」は新たな疾患実体の可能性がある(以前は乳頭状タイプ2と呼ばれていた)(最大32%) | 皮膚平滑筋腫、子宮平滑筋腫(子宮筋腫) |
バート・ホッグ・デュベ症候群(BHD)(AD)
[7]
[8]
[9]
[10]
| FLCN 17p11.2、腫瘍抑制(フォリクリン) | 嫌色素性-膨大細胞性複合型(chromophobe oncocytic hybrid)、乳頭状淡明細胞型膨大細胞腫(papillary clear cell oncocytoma)(15~30%) | 皮膚:線維毛包腫/毛盤腫 |
肺:肺嚢胞、自然気胸 |
遺伝性乳頭状腎細胞がん(HPRC)(AD)
[11]
[12]
| MET 7q34、プロトオンコジーン(肝細胞増殖因子受容体) | papillary type 1(100%に近い) | 知見なし |
常染色体優性遺伝は、これらの主要なRCC症候群に罹患した家族に報告されている伝達のパターンである。常染色体優性は、変化した遺伝子が片親のみにあれば十分であり、この遺伝子および本疾患が子孫に伝播する可能性は1回の妊娠当たり50%であることを意味している。VHL、BHD、HLRCC、およびHPRCに関連する遺伝子について、臨床検査室改善法(CLIA)による認定を受けている検査施設で実施される遺伝子検査が利用可能である。遺伝子検査には、遺伝カウンセリングが必須である。(詳しい情報については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングに関するPDQ要約を参照のこと。)
参考文献
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フォン・ヒッペル-リンダウ病
序
フォン・ヒッペル-リンダウ病(VHL)(OMIM)は、新生物多発の素因を有する常染色体優性 遺伝疾患である。VHL 遺伝子に生殖細胞 病原性多様体を有する個人は、さまざまな臓器系で特定の種類の良性および悪性の腫瘍や嚢胞が発生しやすい。これらの疾患には、中枢神経系(CNS)血管芽腫;網膜血管芽腫;淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)および腎嚢胞;膵臓の褐色細胞腫、嚢胞、嚢胞腺腫、および神経内分泌腫瘍(NET);内リンパ嚢腫瘍(ELST);ならびに精巣上体(男性)および子宮広間膜(女性)の嚢胞腺腫がある。
[1]
[2]
[3]
[4]
VHL患者の評価、そして場合によっては管理のために集学的アプローチが必要である。VHL患者のケアに携わる専門家として、泌尿器腫瘍外科医、脳神経外科医、一般外科医、眼科医、内分泌医、神経内科医、腫瘍内科医、遺伝カウンセラー、および遺伝専門医が挙げられる。
遺伝学的情報
VHL遺伝子
VHL遺伝子は、3番染色体短腕3p25-26のバンドに位置する腫瘍抑制遺伝子である。
[5]
VHLの病原性多様体は、この遺伝子の3つすべてのエクソンで起こる。ほとんどの罹患者は、罹患した親からVHLの生殖細胞病原性多様体と、もう1人の非罹患者の親から正常な(「野生型」の)VHLのコピーを受け継いでいる。VHL関連腫瘍は、Knudsonの「2ヒット」仮説と一致しており、
[6]
[7]
細胞内の両方のVHL アレルが不活性化した場合にのみ、腫瘍のクローン起源または最初の形質転換細胞が発生する。VHLの生殖細胞病原性多様体の遺伝が最初の「ヒット」に相当し、体内のすべての細胞に存在する。2番目の「ヒット」は体細胞病原性多様体であり、出生後のある時点で特定の組織に発生する。これにより正常な野生型のVHLアレルが損傷することで、腫瘍の起源となるクローナルな細胞が発生し、これが増殖して腫瘤を形成することがある。
有病率とまれな創始者効果
一般集団におけるVHLの発生率は、生児出生27,000人に1人から43,000人に1人と推定される。
[8]
[9]
[10]
有病率は31,000人に1人から91,000人に1人と推定されている。
[9]
[10]
[11]
[12]
この数値の正確な測定は、VHLを診断された個人の潜在的リスクを有する血縁者に対して包括的なスクリーニングを実施する必要があるため、困難である。3つのエクソンからなるこの小さな遺伝子における固有の病原性多様体の数が多いことから、この集団内ではほとんどの家族が単一の創始者から発生したのではないことが示唆される。
病原性多様体の浸透度
VHL病原性多様体は浸透度が高く、65歳までに90%を超える発現がみられる。
[8]
ほぼすべてのキャリアにこの症候群に関連する一種類以上の新生物が発生する。
VHLの危険因子
VHL患者の子供それぞれが、罹患した親からVHL病原性多様体アレルを受け継ぐ可能性は50%である。(詳しい情報については、本要約の遺伝子診断のセクションを参照のこと。)
遺伝子型と表現型の相関
臨床症状のあるVHLに至る特定の病原性多様体のタイプとしては、ミスセンス、ナンセンス、フレームシフト、挿入、部分および完全欠失、VHLのスプライス部位に生じた多様体が挙げられる。特定の変化が臨床症状に影響している可能性がある。VHLでは主要な臨床表現型が2つ報告されている。タイプIは、大規模な遺伝子欠失を伴うことが多く、褐色細胞腫を除くすべてのVHL関連病変の発生を特徴とする。タイプIIは、ミスセンス多様体を伴うことがはるかに多く、褐色細胞腫を含むすべての臨床症状の発生を特徴とする。タイプIIの臨床的表現型は、タイプIIA(腎細胞がん[RCC]のリスクが低い)、タイプIIB(RCCのリスクが高い)、およびタイプIIC(RCCが発生せず、その主な臨床像はCNS血管芽腫および褐色細胞腫の発生を特徴とする)に細分される。全体として、RCCのリスクは、特定のVHL 生殖細胞多様体による低酸素誘導因子(HIF)2α調節の喪失と相関している。
[13]
[14]
[15]
[16]
特定の変化はリスク分類に有用な可能性がある;しかしながら、著しい重複が存在し、表現型に従って設定されたサーベイランスは一般に勧められない。
de novo病原性多様体とモザイク現象
祖先(生物学上の両親およびその家系)にVHLが認められない人がVHLと診断された場合、罹患者におけるVHL遺伝子のde novo(新規の)病原性多様体が原因である可能性がある。VHLの家族歴がなくVHLを診断された患者がVHL家系の一員である可能性は約23%であると推定されている。
[17]
定義上、新規の多様体は親から伝達されたものではないため、接合後のイベントである。
新規の多様体が発生する胚形成期に基づいて、その多様体を保因するさまざまな体細胞系列が存在しうる;このことがモザイク現象の程度に影響を及ぼす。モザイク現象とは、遺伝子型が異なるものの単一接合子から発生した2つ以上の細胞系列が個人に混在している状態である。
[18]
接合後のde novo多様体が性腺細胞系列に発生すると、子孫に生殖細胞多様体を伝えるリスクが生じる。
[17]
アレルに応じた障害
VHL関連多血症(家族性2型赤血球増多症またはChuvash多血症としても知られる)は、VHL遺伝子のホモ接合性または複合ヘテロ接合性病原性多様体によって起こるまれな常染色体劣性の血液疾患であり、罹患者の赤血球数が異常に多くなる(赤血球増加症)。罹患者はVHL遺伝子に両アレル性病原性多様体を有する。これらの罹患者に、VHL症候群に典型的な腫瘍は発生しないと当初は考えられていた。
[19]
[20]
[21]
その他の遺伝子変化
散発性RCCで、VHL遺伝子の変異性不活性化は、最も頻度の高い分子的イベントである。VHLの不活性化に加えて、散発性ccRCC腫瘍は、PBRM1、SETD2、およびBAP1など、他の遺伝子に高頻度の多様体を有する。
[22]
[23]
PBRM1、SETD2、およびBAP1の変異性不活性化は、散発性RCCにおけるVHL変化後に生じる「二番目のヒット」のイベントであり、ccRCCの発生および増殖に関与している。
[24]
[23]
PBRM1およびBAP1における生殖細胞病原性多様体は、遺伝型のccRCCの発生をもたらす。
[25]
VHL関連ccRCCの増殖および進行におけるPBRM1、BAP1、およびSETD2の役割は研究段階である。
分子生物学
VHL腫瘍抑制遺伝子は2つの蛋白をコードしている:アミノ酸が213個の蛋白(pVHL30)と内部翻訳の産物であるアミノ酸が154個の蛋白。
[26]
最もよく研究されたpVHLの機能は、腫瘍形成を抑制する能力に関係するHIF活性の調節である。他に報告されたpVHLの機能には、細胞外基質形成の調節、微小管および中心体の成熟、p53の不活性化などがある。
[27]
[28]
[29]
[30]
以下のパラグラフで、これらの機能についてさらに詳述する。
HIF1-αおよびHIF2-α
pVHLは、E3ユビキチンリガーゼ複合体の一部としてHIFに対する基質認識部位として作用することでHIF1-αおよびHIF2-αの蛋白レベルを調節する。
[30]
正常酸素圧下において、HIF1-αおよびHIF2-αは、細胞内プロリルヒドロキシラーゼにより酵素学的にヒドロキシル化される。ヒドロキシル化したHIFサブユニットはVHL蛋白複合体により結合されており、ユビキチンと共有結合し、S26プロテアソームにより分解される。
[31]
[32]
低酸素下では、プロリルヒドロキシラーゼが不活性化し、HIFヒドロキシル化の欠乏に至る。ヒドロキシル化していないHIF1-αおよびHIF2-αは、ユビキチン化のためにVHL蛋白複合体に結合しないことから、蓄積する。その結果として構成的に高いレベルのHIF1-αおよびHIF2-αにより、増殖および血管新生因子、中間代謝の酵素、stemness様細胞表現型を促進する遺伝子など、さまざまな遺伝子の転写が増加する。
[33]
HIF1-αおよびHIF2-αは、明確で部分的に対照的な機能的特徴を有している。RCCとの関連では、HIF2-αはがん遺伝子として働き、HIF1-αは腫瘍抑制遺伝子として働くと考えられる。HIF2-αはMyc活性を優先的に上方制御する可能性があるが、HIF1-αはMyc活性を抑制する可能性がある。
[34]
低酸素関連因子によって、HIF2-αトランス活性化
[35]
およびHIF1-α不安定性
[36]
が増加することが示されている。HIF1-αの遺伝子座である染色体14qの優先的消失により、HIF1-α蛋白のレベルが低下する。
[37]
異種移植または遺伝子導入動物モデルを用いた数多くの研究で、pVHL蛋白による腫瘍抑制には、pVHLによるHIF2-αの不活性化が必要かつ十分であることが示されている。HIF2-αは、現在VHL関連の悪性腫瘍に対して確立された治療標的である。
[38]
[39]
[40]
特定のHIF2-α阻害薬が非臨床試験および臨床試験で検討中である。
[41]
[42]
[43]
微小管の制御およびシリア(繊毛)・中心体の制御
pVHLが媒介する一次繊毛(primary cilium)の制御およびシリア・中心体サイクルの制御の重要性を示すデータが得られつつある。非運動性の一次繊毛はメカノセンサーとして作用し、細胞内信号伝達の制御因子であり、細胞の有糸分裂開始を調節する。
[44]
一次繊毛機能が消失すると、細胞は平面内細胞極性を維持できなくなり、その結果嚢胞が形成される。
[45]
pVHLの消失は一次繊毛を消失させる。
[46]
pVHLはグリコーゲン合成酵素キナーゼ3依存性
[48]
に微小管に結合して安定化させる。
[47]
細胞内でのpVHLの消失または多様体したpVHLの発現は、不安定な星状微小管、紡錘体形成チェックポイントの調節不全、および異数性の増加も招く。
[29]
細胞周期制御
pVHLの再導入は細胞周期停止を誘導し、VHLヌル細胞系列における血清除去後にp27が上方制御される。
[27]
また、pVHLはDNA損傷に応答してSkp2を不安定化し、p27を上方制御する。
[49]
核局在化とp27の強度は腫瘍の悪性度と逆相関している。
[50]
pVHLは、ATM依存性でp53に結合し
[51]
、p53のリン酸化を促進する。
[52]
細胞外マトリックス制御
機能性pVHLは細胞外フィブロネクチンマトリックスの適切な形成に必要である。
[53]
さらに、pVHLのリン酸化は、フィブロネクチンの結合および細胞外空間への分泌を調節する。
[54]
発がん性オートファジーの調節
ccRCCで、微小管関連蛋白1軽鎖3αおよびβ(LC3AおよびLC3B)依存性の発がん性オートファジーは、複数の補完的機序を介した一過性受容器電位メラスタチン3(TRPM3)チャネルの活性化により刺激される。VHL腫瘍抑制遺伝子は、TRPM3をコードしている遺伝子のイントロン6から発現するmiR-204の活性と協調して、この発がん性オートファジーを抑制する。TRPM3は、ccRCC治療のアクション可能な標的である。
[55]
[56]
VHLの動物モデル
VHLノックアウトマウスは子宮内で死亡する。ヘテロ接合性VHLマウスは、血管芽腫を暗示する肝血管病変を発症する。
[57]
マウス腎臓で、条件で標的化したVhlh遺伝子の不活性化により、VHLに似た嚢胞が発生したが、RCCはみられなかった。VhlhとPtenの協調した不活性によって、比較的高い割合で嚢胞が形成されたが、明らかなRCCはみられなかった。
[58]
VHL R200W病原性多様体のマウス相同体により、Chuvash多血症の表現型に類似した多血症がマウスにおいて誘導された。
[59]
PBRM1
[60]
、SETD2
[61]
、BAP1
[62]
など、RCCにおいて不活性化している新たな潜在的な腫瘍抑制遺伝子がいくつか発見されたことにより、少なくともいくつかのVHL症状発現に関連する動物モデルを開発するための新しい道筋が得られる。
臨床症状
症候群に関連したさまざまな新生物の年齢範囲と累積リスク
VHLの発症時年齢は、家族によっても、また同じ家族のメンバーによってもさまざまである。この事実から、発症前のサーベイランス検査の開始年齢と頻度の指針に関する情報が得られる。VHLの特定の構成疾患のうち、発症時年齢が最も低いものとして網膜血管芽腫および褐色細胞腫が観察されている;したがって10歳未満の小児における標的化スクリーニングが推奨される。少なくとも1つの研究で、患者の年齢、基礎にある病原性多様体、発生する臓器により新しい病変の発生率が異なることが実証されている。
[63]
VHLの臨床症状について報告されている平均年齢と年齢範囲の例を表2に要約する。
表2.フォン・ヒッペル-リンダウ病における新生物:罹患者の診断時平均年齢および累積リスクa、b
新生物 | 平均年齢:歳(範囲) | 累積リスク(%) |
a出典:Choyke et al.
[1]
およびLonser et al.
[2]
|
b子宮広間膜/子宮円索および精巣上体の嚢胞腺腫について利用可能なデータは限られている。 |
腎細胞がん
| 37 (16–67) | 24–45 |
褐色細胞腫
| 30 (5–58) | 10–20 |
膵腫瘍または膵嚢胞
| 36 (5–70) | 35–70 |
網膜血管芽腫
| 25 (1–67) | 25–60 |
小脳血管芽腫
| 33 (9–78) | 44–72 |
脳幹血管芽腫
| 32 (12–46) | 10–25 |
脊髄血管芽腫
| 33 (12–66) | 13–50 |
内リンパ嚢腫瘍
| 22 (12–50) | 10 |
(詳しい情報については、本要約の臨床診断のセクションを参照のこと。)
家族性のVHL表現型
VHLでは4つの臨床型が報告されている。VHLは研究者らにより1991年に1型(褐色細胞腫が認められない)と2型(褐色細胞腫が認められる)に分類された。
[11]
VHL 2型は1995年にさらに2A型(褐色細胞腫が認められるが、RCCは認められない)と2B型(褐色細胞腫とRCCが認められる)に細分された。
[64]
最近になって、血管芽腫またはRCCを伴わずに孤立性の褐色細胞腫患者で構成されるVHL 2C型が報告された。
[65]
これらの特異的VHL表現型を表3に要約する。
表3.フォン・ヒッペル-リンダウ病(VHL)家族の遺伝子型-表現型の分類a
型 | 特徴定義 |
RCC = 腎細胞がん。 |
aVHLの各亜型には、中枢神経系血管芽腫;網膜血管芽腫;腎嚢胞;膵臓の嚢胞、嚢胞腺腫、および神経内分泌腫瘍;内リンパ嚢腫瘍;ならびに精巣上体(男性)および子宮広間膜(女性)の嚢胞腺腫など、他の症状が含まれる場合がある。 |
1 | 褐色細胞腫を認めない |
RCC |
2A | 褐色細胞腫 |
RCCリスク低 |
2B | 褐色細胞腫 |
RCCリスク高 |
2C | 褐色細胞腫 |
RCCを認めない |
組織における発現
VHL罹患者の55%以上は、多発性腎嚢胞のみを発症する。VHL関連RCCは発症する場合、特徴的に多発性および両側性であり、嚢胞と充実性腫瘤とが複合して現れる。
[66]
VHLの個人におけるRCCの累積リスクは全体として、24~45%と報告されている。この疾患における3cm未満のRCCは低悪性度(Fuhrmanの核異型度で2)の傾向があり、浸潤性がきわめて低く
[67]
、増殖速度は大きく異なる。
[68]
少なくとも1年間追跡された28人の患者における228個の腎病変を調査したところ、単純嚢胞から充実性病変への移行は低頻度であることが示された。
[66]
嚢胞と充実性病変が複合している場合は、一律に腫大した腫瘍組織が含まれていた。これらのデータを用いると、VHLにおける腎病変増悪の予測に役立つ可能性がある。図1はVHL患者における両側性腎腫瘍を示している。
図1.フォン・ヒッペル-リンダウ病に関連する腎細胞がんは特徴的に多発性および両側性であり、嚢胞性腫瘤および固形腫瘤が複合して現れる。赤色の矢印は固形および嚢胞性の成分を示しており、白色の矢印は主に固形の病変を示している。
3cm超の腫瘍は増殖するにつれて悪性度が増し、転移する可能性がある。
[68]
[69]
RCCはしばしば長期間、無症状のままである。
患者に膵嚢胞、嚢胞腺腫、膵NETが発生することもある。
[2]
膵嚢胞および嚢胞腺腫は悪性ではないが、膵NETは悪性の特徴を有し、大きさが3cm以上の場合、通常は切除される(病変位置が膵頭部の場合は2cm)。
[70]
膵NETの自然史に対するレビューは、これらの腫瘍に非線形の増殖特性を認める場合があることを示している。
[71]
網膜血管芽腫
網膜での症状発現が最初に報告されたのは1世紀以上前であり、最初に認識されたVHLの特徴の1つであった。網膜血管芽腫(網膜毛細血管腫症とも呼ばれる)は最も頻繁に発生するVHLの症状発現の1つであり、患者の50%以上にみられる。
[72]
網膜浸潤はVHLの最初の症状発現の1つであり、発症時の平均年齢は25歳である。
[1]
[2]
これらの腫瘍は罹患者の80%近くでVHLの最初の症状発現であり、1歳という若い小児に発生することもある。
[2]
[73]
[74]
網膜血管芽腫の最頻発部位は網膜の辺縁部であるが、視神経などのはるかに治療が困難な部位に発生することもある。網膜血管芽腫は明るいオレンジ色の球状腫瘍であり、蛇行血管による供給を受けている。患者のほぼ50%に両眼性の網膜血管芽腫がみられる。
[72]
罹患した眼1個当たりの平均病変数は約6個である。
[75]
VHLの他の網膜病変には、網膜表層に位置する平坦型脈管腫瘍である網膜血管過誤腫などがある。
[76]
縦断的研究はこれらの腫瘍の自然史を理解するために重要である。未治療で放置すると、網膜血管芽腫はVHLにおける死亡の主要原因になり、約8%の患者には、
[72]
網膜剥離に寄与するまたは網膜神経変性の直接の原因になりうる二次的な黄斑症などの、各種のメカニズムによって失明が起こる。
[77]
症候性病変を呈する患者には一般に、より大型で数多くの網膜血管芽腫が生じる。長期追跡調査研究によると、ほとんどの病変は緩徐に増殖し、新しい病変は頻繁には発生しない。
[75]
[78]
小脳および脊髄の血管芽腫
血管芽腫はVHL患者に発現する最も一般的な症状であり、罹患者はそれらの個人の70%を超える。1件のプロスペクティブ研究で、血管芽腫の自然史が評価された。
[79]
CNS血管芽腫の発症時平均年齢は29.1歳(範囲、7~73歳)である。
[80]
平均7年間の追跡後に、研究された225人の患者の72%において新たな病変が発生した。
[81]
既存の血管芽腫の51%には変化が見られなかった。残りの病変は不均質な増殖速度を呈し、小脳および脳幹の病変は脊髄または馬尾の病変よりも増殖速度が速かった。血管芽腫の約12%では腫瘍周囲または腫瘍内嚢胞が発生し、6.4%に症状があり、治療を要した。腫瘍負荷の増大または発見される腫瘍の総数増加は男性、より長期の追跡、および遺伝子型と関連した(いずれもP < 0.01)。部分的な生殖細胞欠失では、ミスセンス多様体よりも患者当たりの腫瘍数が多かった(P < 0.01)。比較的若年の患者で1年当たりの腫瘍発生数が多かった。血管芽腫の増殖速度は女性よりも男性の方が高かった(P < 0.01)。図2および図3は、それぞれVHL患者における小脳および脊髄の血管芽腫を示している。
図2.血管芽腫はフォン・ヒッペル-リンダウ病患者に発現する最も一般的な症状である。左図は脳幹および小脳病変の矢状方向像を示している。中央図は脳幹病変の軸方向像を示している。右図は嚢胞性成分(白色の矢印)が優勢な小脳病変(赤色の矢印)を示している。
図3.血管芽腫はフォン・ヒッペル-リンダウ病患者に発現する最も一般的な症状である。複数の脊髄血管芽腫が示されている。
褐色細胞腫と傍神経節腫
VHL患者における褐色細胞腫の形成率は25~30%である。
[82]
[83]
VHL関連の褐色細胞腫の患者のうち、44%は両側副腎に病変が発生した。
[84]
悪性形質転換率はきわめて低い。VHL病の患者においては、通常、血漿および尿ノルメタネフリン濃度が上昇し
[85]
、約3分の2の患者は、高血圧、頻脈、動悸などの身体症状を経験する。
[82]
VHL機能が部分的に欠失した患者(タイプ2疾患)は、VHL機能が完全に欠失したVHL患者(タイプ1疾患)よりも褐色細胞腫のリスクが高い;後者の患者が褐色細胞腫を発症することはきわめてまれである。
[13]
[14]
[82]
[86]
患者182人のコホートにおいて、無症候性の褐色細胞腫および傍神経節腫でのVHL生殖細胞病原性多様体率は非常に低く、最終的にVHLと診断されたのは患者182人中1人のみであった。
[87]
傍神経節腫はVHL患者にはまれであるが、頭頸部または腹部にみられることがある。
[88]
褐色細胞腫および/または傍神経節腫が発生したVHL患者の1件のレビューは、患者の90%に褐色細胞腫を認め、19%に傍神経節腫を認めたことを明らかにした。
[84]
1件のシリーズにおいて、VHL関連褐色細胞腫および傍神経節腫の診断時平均年齢は約30歳であり
[83]
[89]
、多発性腫瘍を有する患者は孤立性病変を有する患者より10年以上早く診断されていた(19歳 vs 34歳;P < 0.001)。
[89]
褐色細胞腫の診断は1つのコホートで5歳程度の若年患者に下されており、
[83]
これが早期検査の原理的な根拠になる。この患者273人を含むコホートでは、褐色細胞腫の小児患者21人すべてに血漿ノルメタネフリンの上昇を認めた。
[83]
膵臓症状
VHL患者は、多発性漿液性嚢胞腺腫、膵NET、および単純性膵嚢胞を発症することがある。
[1]
VHL患者で膵腺がんのリスク増加はみられない。漿液性嚢胞腺腫は良性の腫瘍で、介入を必要としない。単純性膵嚢胞は多数存在することがあるが、症状を伴う胆管閉塞を引き起こすことはまれである。ほとんどの場合、内分泌機能は維持される;しかしながら、ときに膵臓手術を要する広範性嚢胞病(extensive cystic disease)患者では、最終的に膵外分泌補給が必要になる場合がある。
膵NETは通常非機能性であるが、(リンパ節や肝臓に)転移を来すことがある。膵NETの診断時平均年齢が38歳(範囲、16~68歳)であった大規模な患者コホートで、膵NET転移のリスクが解析された。
[90]
転移のリスクは原発病変が小さい(3cm以下)患者、エクソン3の病原性多様体が認められない患者、および腫瘍の倍加時間が遅い(500日超)患者では比較的低かった。非機能性膵NETは画像検査によるサーベイランスで経過観察でき、腫瘍が3cmになった時点で介入する。膵頭部の病変は手術での複雑性を抑えるため、より小さいサイズでの手術が検討されることがある。
内リンパ嚢腫瘍(ELST)
ELSTは、錐体骨後部内の内リンパ管または嚢から発生する腺腫である。
[91]
ELSTは散発例としてはまれであるが、VHL患者の11~16%では画像検査で明らかになる。これらの腫瘍は転移しないが、局所的に浸潤し、錐体骨と内耳構造を侵食する。
[91]
[92]
ELSTを有するVHL患者の約30%では両側性病変を認める。
[91]
[93]
ELSTはVHL患者の罹病の重大な原因である。画像検査で判明したELSTの証拠は、難聴(患者の95%)、耳鳴(92%)、前庭症状(めまいまたは平衡失調など)(62%)、耳閉塞感(29%)、および顔面麻痺(8%)などのさまざまな症状に関連している。
[91]
[92]
患者の約半数では症状(特に難聴)が突発し、これはおそらく迷路内での急性出血の結果である。
[92]
VHL患者における難聴または前庭機能障害は放射線診断的にELSTが明らかでない場合(すべての症候性患者の60%)にも存在することがあり、これらは顕微鏡的ELSTの結果生じた症状と考えられている。
[91]
ELST関連の難聴は通常、不可逆的である;無症候性の患者におけるELSTの早期発見を可能にする連続画像検査と放射線学的に明らかな病変の切除は、VHL患者の管理にとって重要な要素である。
[94]
[95]
retrolabyrinthine posterior petrosectomyによる外科的切除は通常、治癒的であり、難聴の発症または増悪を予防し、前庭症状を改善することができる。
[92]
[94]
子宮広間膜または子宮円索の嚢胞腺腫
子宮広間膜の腫瘍がVHLの女性に発生することがあり、それらは乳頭状嚢胞腺腫として知られる。これらの腫瘍はきわめてまれで、文献での報告数も20例未満である。
[96]
乳頭状嚢胞腺腫は、VHLの男性に一般的に認められる精巣上体嚢胞腺腫と組織学的に同一である。
[97]
1点の重要な相違は、男性の精巣上体嚢胞腺腫が散発的に発生することがあるのに対して、乳頭状嚢胞腺腫はほぼVHL患者に限定して認められることである。
[98]
これらの腫瘍は嚢胞性であることが多く、また大型になるが、一般的には非常に緩徐な挙動を示す。
精巣上体嚢胞腺腫
文献で報告されている精巣上体嚢胞腺腫全例のうち3分の1以上、および両側性嚢胞腺腫のほとんどの症例は、VHL患者において報告されている。
[99]
症候性の患者は多くの場合、無痛で増殖が緩徐な陰嚢の腫脹を呈する。精巣上体腫瘍の鑑別診断には、腺腫様腫瘍(この部位に最もよく発生する腫瘍)、転移性ccRCC、および乳頭状中皮腫などがある。
[100]
1件の小規模シリーズでは、組織学的解析で、悪性腫瘍に典型的に伴う有糸分裂像、核多形性、壊死などの特徴が明らかにならなかった。病変はCK7が強い陽性で、RCCが陰性であった。すべての腫瘍で炭酸脱水酵素IX(CAIX)は陽性であった。PAX8はほとんどの例で陽性であった。これらの特徴は、既知の転移能が認められていない比較的良性型のRCCである淡明細胞型乳頭状RCCを暗示していた。
[97]
管理
VHLのリスク評価
VHL(または検討されている遺伝性腎がんのいずれか)に対する第一の危険因子は、この疾患に罹患した家系員の存在である。VHLに関連した特定の腫瘍に対するリスク評価では、性別および年齢についても考慮すべきである。例えば、褐色細胞腫は8歳
[101]
という若年で発症することがある。
[1]
VHLの性特異的臨床所見として男性における精巣上体嚢胞腺腫(10~26%)がある。この疾患は特に両側性の場合は実質的にVHLに疾病特徴的であり、一般男性集団ではまれである。精巣上体嚢胞もまたVHLによくみられるが、一般男性集団の23%で報告されていることから、診断のための判断基準としては弱い。
[1]
女性では、子宮広間膜に発生する嚢胞腺腫に組織学的に類似した病変がみられる。
[1]
VHL患者の子供それぞれが、罹患した親からVHL多様体アレルを受け継ぐ可能性は50%である。VHLの診断は、臨床基準に基づくことが多い。VHLの家族歴がある場合、VHLに特異的なタイプの腫瘍(例、CNSまたは網膜の血管芽腫、褐色細胞腫、またはccRCC)を1つ以上有する患者ではVHLが診断される可能性がある。
遺伝子検査
リスクがある家系員には、VHLに対する遺伝子検査を利用できることを知らせるべきである。VHLが臨床的に診断されるか、VHLの徴候および症状を示す家系員には、最初に遺伝子検査が提供される。VHL罹患家族の99%以上でVHLの生殖細胞病原性多様体が検出される。3つすべてのエクソンのシーケンス解析で、VHL遺伝子における点多様体(すべての病原性多様体の最大72%)が検出される。
[102]
欠失は主に次世代シークエンシング(NGS)を用いて検出され、標的染色体マイクロアレイ検査および/または多重ライゲーション依存性プローブ増幅を用いて確認される。ゲノム不均衡を同定するためにアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションも用いられている。VHL遺伝子検査陰性でモザイクが疑われる症例では、NGSが有用であることを示す逸話的証拠が存在する。
[103]
最初に提供される遺伝カウンセリングでは、患者とその血統の近親者に対する医学的、経済的、および心理社会的意味合いについて話し合われる。カウンセリング後、患者は自由意思でインフォームドコンセントに署名後、検査の受診を選択する。患者に検査結果を報告する際に、追加のカウンセリングが行われる。1人の家系員にVHL病原性多様体が同定された場合、続いて行われる同じ病原性多様体に対する検査でその近親者が陰性であれば、彼らはその形質のキャリアではなく(すなわち、真の陰性であり)、VHL症状を発症する素因は
ない
。同様に重要なこととして、真の陰性であった家系員の子供もVHLのリスクはない。したがって、こうした小児においては生涯にわたって臨床検査は不要である。
[
3]
遺伝子診断
VHL遺伝子における生殖細胞病原性多様体は、遺伝子診断の確定を意味する。臨床症状のあるVHLの素因を有し、子供にVHL病原性多様体が遺伝するリスクは50%であると予想される。VHL遺伝子における約400の固有の病原性多様体が臨床症状のあるVHLと関連しており、それらの存在は、その多様体が疾患を引き起こすものであることを意味している。一般的に遺伝子検査未実施の家族における診断的遺伝学的評価は、臨床的に診断された個人から開始される。VHL病原性多様体が同定されれば、その特異的な病原性多様体は、他の生物学的近親者を検査するためのDNAマーカーとなる。末梢血リンパ球の通常の検査でVHL病原性多様体が認められず、かつ生物学的両親または両親の家系においてVHLの病歴がない場合にVHLの明らかな臨床診断が下された症例では、de novo病原性多様体またはモザイク現象が原因の可能性がある。後者は、皮膚線維芽細胞や頬の剥離細胞など、他の体組織を用いて遺伝子検査を実施することで検出される場合がある。
臨床診断
VHLの診断は、臨床基準に基づくことが多い(表4を参照のこと)。VHLの家族歴がある場合は、以前に評価されていない家系員がVHLに関連する特異的な腫瘍(例、CNSまたは網膜の血管芽腫、褐色細胞腫、ccRCC、または内リンパ嚢腫瘍)を1つ以上発症した場合に、その家系員は臨床的にVHLと診断される。VHLの家族歴がない場合には、臨床的診断には、患者が2つ以上のCNS血管芽腫を有するか、1つのCNS血管芽腫と内臓腫瘍または内リンパ嚢腫瘍を有する必要がある。診断の詳細については、表4を参照のこと。
[2]
[3]
[4]
すべての生殖細胞病原性多様体が同定された93のVHL家族コホートが報告された1998年以降、診断には家族内での臨床検査と遺伝子検査を複合したアプローチが用いられている。診断戦略は、個別の家系員によって異なる。表4に、遺伝子検査と臨床診断を複合したアプローチを要約する。
表4.家族歴を有する個人と家族歴のない個人におけるフォン・ヒッペル-リンダウ病(VHL)に対する診断的アプローチ
VHLの家族歴 | 遺伝子検査 | 臨床診断 | 臨床診断の必要条件 |
CNS = 中枢神経系;ccRCC = 淡明細胞型腎細胞がん。 |
出典および記述の更新:Glenn et al.、Pithukpakorn & Glenn. |
VHLの家族歴あり
| 罹患した生物学的近親者で以前に同定されたものと同じVHL遺伝子病原性多様体についてDNAを検査する | 生物学的近親者におけるVHL遺伝子病原性多様体が不明の場合 |
臨床診断には以下の疾患の1つ以上が必要である:
|
- 精巣上体または子宮広間膜の嚢胞腺腫 |
- CNS血管芽腫 |
-多病巣性のccRCC |
- 褐色細胞腫 |
- 網膜血管芽腫 |
- 膵神経内分泌腫瘍 |
- 膵嚢胞および/または膵嚢胞腺腫 |
- 内リンパ嚢腫瘍 |
VHLの家族歴なし
| VHL病原性多様体が接合後に発生した場合は陰性の可能性がある(例、VHLモザイク現象) | VHL病原性多様体が不明であるか、生殖細胞変異陰性であるが、VHLと適合する臨床徴候が認められる場合 |
臨床診断には以下の疾患のいずれかまたは両方が必要である:
|
- CNS血管芽腫 |
- 網膜血管芽腫 |
上記の1つしか認められない場合は、さらに以下の疾患の1つが必要である:
|
- ccRCC |
- 褐色細胞腫 |
- 膵嚢胞および/または膵嚢胞腺腫 |
- 内リンパ嚢腫瘍 |
- 精巣上体または子宮広間膜の嚢胞腺腫 |
サーベイランス
VHLのさまざまな症状について提唱されているサーベイランスの指針を表5に要約する。一般的に、これらの推奨は専門家の意見とコンセンサスに基づいており、大部分は証拠に基づいていない。これらの方法は最初の臨床診断検査のために用いられることがあり、またリスクのある個人に発生している新生物を早期発見するための定期的サーベイランスとして用いられることもある。リスクのある個人には、発症前の定期的スクリーニングが奨励される。リスクのある個人とは、VHL病原性多様体に対する検査が陽性である個人、およびVHL病原性多様体に対する検査を受けないことを選択しているがVHLに罹患した生物学的近親者がいる個人のことである。このような個人がVHLの素因を受け継いでいるリスクは50%に及ぶ。
表5.フォン・ヒッペル-リンダウ病(VHL)のサーベイランスのための診療ガイドライン
診察/検査 | スクリーニング対象の病態 | 開始年齢/頻度 |
CNS = 中枢神経系;CT = コンピュータ断層撮影;IAC = 内耳道;MRI = 磁気共鳴画像法。 |
a診察または検査の頻度は、モニタリングするVHL病変の臓器部位で増加しうる。 |
b内リンパ嚢腫瘍(ELST)の徴候の確認のために、IAC領域を診察するために脳MRIが用いられることがある。ELSTの徴候または症状が認められれば、CTおよびMRIによりIACが診察される。 |
出典:VHL Alliance。
[104]
|
検眼鏡検査 | 網膜血管芽腫 | 1歳から年1回 |
血漿または24時間尿中カテコールアミンおよびメタネフリン | 褐色細胞腫 | 5歳から;年1回および血圧が高くなり臨床的に適応となる場合 |
脳/脊髄の造影MRIb | CNSおよび末梢神経の血管芽腫 | 16歳から;2年ごとおよび症状発生時 |
腹部の造影MRIおよび非造影MRI | 腎、膵、および副腎の新生物および嚢胞 | 16歳から;超音波検査と交互に年1回 |
腹部超音波検査 | 腎、膵、および副腎の新生物および嚢胞 | 16歳から;MRIと交互に年1回 |
聴力検査;IACのMRIおよびCT;神経学的検査 | 内リンパ嚢腫瘍 | 5歳から聴力検査;2~3年ごと、ただし難聴、耳鳴、またはめまいがみられる場合は年1回。年齢に関係なく、難聴、耳鳴、めまいに対して必要に応じて画像検査。5歳から年1回の神経学的評価 |
証拠レベル:5
腎腫瘍の治療
外科的介入
腎臓の罹病を最小限に抑えながら、がんが播種するリスクを調整する方法を臨床家が知るようになるにつれて、VHLの管理は大きく変化している。初期の一部の外科シリーズでは、腎腫瘍に対する両側根治的腎摘出術に続いて実施する腎移植に焦点が当てられていた。
[105]
[106]
いくつかのグループにより、比較的根治性の低い外科的アプローチでがんが播種するリスクが低かったことが実証された後の1980年代に、VHLに対する腎保存手術(NSS)が紹介された。
[107]
[108]
1995年には、1件の大規模多施設シリーズにより、RCC患者においてNSSは非常に優れたがん特異的生存率をもたらしたことが実証された。
[109]
非常に優れた治療成績が多く報告されていることから、現在では実施可能であればNSSが標準の外科的治療と考えられている。この集団におけるNSSの技術は、時間の経過とともに隣接する正常な腎実質に対する損傷を最小限に抑えるように洗練されている。NSSで報告された従来の広範な切除断端をとる代わりに、核摘出術(enucleation)が開発され、腫瘍と偽被膜を周囲の隣接する正常な腎実質から取り出せるようになっている。
[110]
VHL患者は数十もの腎腫瘍を有しうる;したがって、すべての病変の切除は行えない可能性がある。複数回の外科的手技による罹病、腎機能の喪失、および遠隔での進行のリスクを最小限にするため、過剰治療と過少治療のバランスを調整する方法が検討された。米国国立がん研究所(NCI)により、外科的介入のきっかけとなる特異的な腫瘍の大きさの閾値が評価された。最大の固形病変が3cmに達した場合に治療された患者52人の評価では、追跡期間中央値60ヵ月の時点で遠隔転移の証拠も腎機能代替療法の必要もないことが示された。
[68]
その後のレトロスペクティブ・シリーズで、腫瘍が3cm以下に管理された患者108人で遠隔転移の証拠が示された者はなかったことから、これは重要な閾値であることが補強された。
[111]
腫瘍が3cmを超えた患者では、計27.3%(73人中20人)が遠隔再発を来した。
[111]
この閾値は、現在ではVHL関連ccRCCに対する外科的介入のきっかけとして広く使用されている。VHL患者で手術を行う場合、臨床的に実施可能な限り多くの腎腫瘍を切除することで、さらなる外科的介入の必要時期を遅らせる可能性がある。
[112]
より小さな病変を特定して切除するためには、術中の超音波検査の使用が有用である。
[113]
VHL患者の多くが継続的に新たなRCCを発症し、追加の介入が必要となりうる。癒着と腎周囲の瘢痕はその後の外科的手技をより困難にする。根治的腎摘出術を検討できるが、NSSは可能であれば依然として望ましいアプローチである。合併症の発生率が高いものの、再度および救援のNSSにより、患者は中程度の追跡期間で優れた腎機能の転帰を維持し、有望な腫瘍転帰が得られる可能性がある。
[114]
[115]
これらの手術は、遺伝性腎がんの管理に関する経験が豊富な専門施設で最も良く処置できる。
[116]
証拠レベル:3di
アブレーション技術
ラジオ波焼灼術(RFA)および凍結アブレーション(CA)
サーマルアブレーション技術では、腫瘍を破壊するため腫瘤が過剰に加熱または冷却される。CAおよびRFAは1990年代後期に小さい腎腫瘤の管理に導入された。
[117]
[118]
散発性の腎腫瘤に対して、両サーマルアブレーション技術は90%近い無再発生存率をもたらし、American Urologic Associationではこの技術を小さい腎腫瘤(4cm以下)を有する高リスク患者における推奨の1つとして考えるようになった。
[119]
VHL患者に対するアブレーション技術の臨床応用についてはまだ明確に定義されておらず、手術が依然として最も研究された介入である。アブレーション技術は、病変の切除時にアブレーションの効果を検討した1件の第II相試験において、VHL関連RCCの管理に最初に導入された。この研究では、11例の腫瘍が治療され、術中超音波検査で腫瘍への血流の完全な遮断が示された;最終的な病理学検査で、すべての腫瘍に対する治療効果の証拠が得られた。
[120]
それ以降、一部の施設でVHL患者における一次管理および救助管理としてサーマルアブレーション技術が採用され、成功を収めている。
[121]
他の複数の施設により、RFAなどの技術は失敗率が高く、腎機能が限界に近い患者にのみ用いるべきであることが明らかにされた。
[122]
長期のデータは不足しているものの、これらの技術はVHL患者におけるRCCの治療に次第に採用されている。1件の単一施設の研究で、VHL患者113人におけるRCCの治療の傾向が評価された。2004年から2009年にこのセンターでは、症例の43%がRFAにより管理された。
[123]
サーマルアブレーションは、手術による罹病のリスクが高い個人における救助療法の設定において果たす役割が増えつつある。患者14人のシリーズにおいて、再度のNSSによる罹病を避けるための救助療法としてのCAが評価された。腎機能の変化はごくわずかであった;追跡期間中央値37ヵ月の時点で、病変の再発が疑われたのは33の腫瘍のうち、わずか4つ(12.1%)であった。
[124]
しかしながら、サーマルアブレーション後の手術は非常に困難な試みであり、特にアブレーションプローブの軌跡に沿って発生する癒着と瘢痕による術後合併症の発生率が有意に高いことに注意が必要である。
[125]
[126]
[127]
生涯において追加の外科的管理が必要になりうる比較的若年の個人では、臨床医はサーマルアブレーションが将来RCCの管理にどのように影響するかを考慮する必要がある。
[116]
[128]
VHLにおけるアブレーション技術の臨床応用については明確に定義されておらず、手術が依然として最も研究された介入である。利用可能な臨床的証拠によると、手術でのリスクが高い高齢患者(特に、合併症率が高いために救助腎手術に直面している患者)ではアブレーション技術は造影効果を認める小径(3cm以下)の腎腫瘤にのみ選択すべきであると示唆されている。若年、4cmを超える腫瘍サイズ、腎門部腫瘍、および嚢胞性病変は相対禁忌とみなされている。
[129]
[130]
証拠レベル:3di
化学療法
現在の全身治療戦略の基礎を形成する前臨床データの多くは、VHLの変化に関する研究から得られている。aldesleukin、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体チロシンキナーゼ阻害薬、mTOR阻害薬、およびチェックポイント阻害薬について研究している大規模ランダム化第III相試験はいずれも、散発性淡明細胞型腎がんの治療から得られたデータに基づいている。転移性腎がんを有するVHL集団においてこれらの薬物について検討した研究は少数であるにもかかわらず、これらは効力があると考えられ、治療法の選択肢として利用できる。VHL症状の発現または増悪を抑えるための全身療法は多くのグループの関心を集めている。
2011年の1件の研究で、患者を対象にスニチニブの安全性および効力がプロスペクティブに評価された。
[131]
15人の患者が、主要エンドポイントを毒性作用として50mgのスニチニブを毎日、28日間、その後14日間休薬し、最大4サイクル投与された。グレード3の毒性作用として5人の患者(33%)に疲労がみられた;10人の患者(75%)で投与量が減量された。RCCにおいて有意な反応が観察されたが、血管芽腫では反応は観察されなかった。RCCの18の病変および血管芽腫の21の病変が評価可能であった。これらのうち、RCCの6病変(33%)で部分奏効が得られたが、血管芽腫では得られなかった(P = 0 .014)。スニチニブの関連する標的の発現を明らかにするため、保管されたVHL関連腫瘍の標本が評価された。血管芽腫組織におけるpFRS2の発現がRCCにおけるものよりも高いことが観察されたことから、線維芽細胞増殖因子経路を遮断する薬物による治療が血管芽腫患者に有益な可能性があるという仮説が提起されている。
[131]
RCCを伴うVHL患者14人(このうち10人に転移性病変が認められた)を対象にした1件のレトロスペクティブ研究により、転移性および原発RCC病変において有意な反応が示された。11人の患者に小脳血管芽腫が認められ、8人に脊髄血管芽腫が認められた。血管芽腫の患者で反応は示されなかった。
[132]
VHL関連網膜血管芽腫患者5人において、硝子体内にペガプタニブを投与する抗VEGF療法に関する研究が評価された。
[133]
意図された治療を完了できた患者は2人のみで、原発腫瘍における反応は示されなかった。2人の患者では網膜厚が低下し、硬性白斑が減少した。この薬物は黄斑変性に対して米国食品医薬品局により承認されているが、VHLの網膜病変の治療には承認されていない。
証拠レベル:2
網膜血管芽腫の治療
網膜血管芽腫の治療には、レーザー治療、光線力学療法、および硝子体切除が挙げられる。局所療法または全身療法のいずれかを用いる取り組みもなされている。
VHL病の患者における網膜血管芽腫には、レーザー光凝固術が広く用いられている。100個の眼球において治療された304箇所の網膜血管芽腫に関する1件のレトロスペクティブ・レビューにより、レーザー光凝固術の制御率が90%を超え、1乳頭径までの比較的小さい病変において最も有効であったことが示された。
[134]
重度の網膜剥離が認められた21人の患者は、網膜血管芽腫を切除するため、経扁平部硝子体切除術(後部硝子体剥離について)、黄斑上膜剥離術、網膜切除または光凝固術/凍結療法と併用するシリコンオイルまたはガス注入で治療された場合にさまざまな程度の視力保持を達成した。
[135]
進行したVHLの眼球病変における経扁平部硝子体切除術は患者23人の2つ目のグループにおいて視機能を改善または維持することが示されたが、網膜切開術が実施された症例では眼球VHL病の術後の進行が加速した可能性がある。
[136]
両眼性の網膜血管芽腫病変を有する患者2人のケースシリーズにおいて、光線力学療法により黄斑浮腫が減少したが、視力における有益性はあるとしてもごくわずかであった。
[137]
VHL病を有する4人を含めて5人の患者を対象にした2つ目のシリーズでは、光線力学療法が6つの眼球に実施され、すべての症例で腫瘍の退縮または安定化および網膜下液および脂質滲出の改善が得られた。しかしながら、視力の安定化または改善が観察されたのは症例の50%のみであった。
[138]
ベバシズマブを用いる硝子体内治療の症例報告では、1件の症例報告で2年を超える安定化が得られ
[139]
、2件目の症例報告では治療を受けた5つの眼球の1つに視覚の改善が得られた。
[140]
硝子体内ラニビズマブは5人の患者のケースシリーズにおいて一貫した有益性をもたらさなかった。
[141]
全身性のベバシズマブによる治療は、個別の症例報告においてあったとしてもごくわずかな有益性しかもたらさなかった。
[142]
[143]
スニチニブによる治療は3人の患者で視覚の安定化が得られた可能性があるが、同時にかなりの毒性作用が認められた。
[144]
8人の患者における8つの眼球の陽子線治療に関する症例報告により、8人中7人の患者における黄斑浮腫の消退および追跡期間中央値84ヵ月後に治療されたすべての眼球で視力保持が実証された。
[145]
CNS血管芽腫の治療
小脳または脊髄の血管芽腫の外科的切除は標準治療アプローチとなっている。神経学的症状の発症前に腫瘍の外科的切除を実施すべきであると一般的に受け入れられている一方
[146]
、症状のない個人に対して介入を行う時期については施設によって差があり、患者の要因と浮腫、位置、水頭症、増殖速度など、腫瘍の要因による影響を受ける可能性がある。脊髄病変はしばしば後方からアプローチされ、椎弓切除術が必要となる。患者はしばしば生涯で複数回の手術を受ける必要があるため、装具の取り外しは、安定化/融合が必要な進行性の脊椎不安定につながることがある。
[147]
小脳病変に対するアプローチは腫瘍の側方への向きに依存するが、多くの腫瘍は正中線後頭下開頭術(midline suboccipital incision)でアプローチ可能である。出血を減らすために術前塞栓術を実施できるが、このアプローチは外科医の好みに依存している。
[148]
患者が複数の腫瘍を有し、数回の外科的手技を必要とする場合があるため、外科的切除が実施できない場合の代替として外照射療法が登場している。定位放射線手術は血管芽腫を治療するために一般的に利用されるアプローチとなっている。
[149]
レトロスペクティブ・シリーズで、治療は治療された病変の50%以上でサイズの縮小に関連し、合併症の発生率が低かったことが実証されている。
[149]
NCIのプロスペクティブ研究により、治療を受けた病変の局所制御が評価された。腫瘍は跳躍的な増殖パターンを示すことがあるため、この治療法の有効性を評価するために長期のシリーズが必要であろう。このシリーズでは、1cm未満で無症状の治療された腫瘍の33%が追跡期間中に進行した。長期の局所制御に関する懸念から、著者らは、定位放射線手術による治療は外科的切除が行えない腫瘍の治療にのみ実施すべきであると結論付けた。
[150]
CNS血管芽腫に対してパゾパニブによる全身療法が選択された症例で用いられており、外科的選択肢が実行不能の場合に成功を収めている。
[151]
[152]
VHL患者15人を対象にした第II相試験において、別のチロシンキナーゼ阻害薬であるスニチニブの使用は小脳または脊髄の血管芽腫の治療に有効でないことが示された。
[131]
これらの良性ではあるものの、しばしば問題が起こる腫瘍の合併症を引き続き減らすためにさらなる研究が必要である。
ELSTの治療
ELSTの管理に関するデータは限られており、主に散発性およびVHL関連腫瘍の外科的管理について詳述したケースシリーズで構成される。最大規模のシリーズでは、サーベイランスと外科的切除で治療された患者31人の転帰が詳しく述べられている。
[153]
このレトロスペクティブ解析では、ほとんどの患者で聴覚機能および前庭機能が維持されながら外科的完全切除が実施可能であった;完全切除が達成された場合、再発リスクは低かった。聴覚前庭障害は腫瘍のサイズに依存せず、小さい腫瘍でも起こる可能性があるため、一般的に早期の介入が望ましい。早期の介入はまた周辺組織に転移するリスクを最小限に抑え、完全切除の確率を高めることができる。このシリーズでは、周術期の罹病および出血のリスクを最低限に抑えるため、選択された症例で術前塞栓術が効果的に用いられた。
妊娠中のVHL
2件の研究で、VHL患者における妊娠の血管芽腫進行への影響が調査されている。
[154]
[155]
1件の研究では、1966年から2010年(40%が1990年より前に妊娠)に48件の妊娠(新生児49人)が確認されたオランダのVHL患者29人の記録がレトロスペクティブに調査された;妊婦の31%で画像記録が得られた。研究者らの報告では、すべての妊婦のうち17%にVHL関連合併症がみられ、その中には、妊娠前後の進行スコアに有意な変化(P = 0.049)が認められた脳脊髄血管芽腫患者が3例含まれていた。
[154]
この研究の結果は、小規模なプロスペクティブ研究とは対照的である。
[155]
大規模な国際共同プロスペクティブ研究が実施されるまでは、すべての研究が妊娠中に医学的監視を含む控えめなアプローチの使用を勧めている。
予後
VHLの罹病率および死亡率はさまざまであり、個人および家族のVHLの表現型(例、1型、2A型、2B型、または2C型)の影響を受ける。(詳しい情報については、本要約の家族性のVHL表現型のセクションを参照のこと。)
以前は、転移性RCCがVHL患者における死亡の約3分の1を引き起こしており、一部の報告では死亡の主因であった。
[101]
[156]
[157]
[158]
病原性多様体陽性の個人のサーベイランスが増加するにつれて、3cmルールを含むRCC治療の推奨を遵守するためにRCCの死亡率は有意に低下したと考えられる。
CNS血管芽腫は組織学的には良性であるが、罹病の主要原因であり、脳幹を含む頭蓋脊髄軸に沿ったいずれの部位にも発生する。
[2]
以前は膵島細胞腫瘍と呼ばれていた膵NETは、症例によっては増殖が速く、肝および骨に転移しうる。
[156]
[159]
VHL腫瘍の結果として聴力および視力も低下または喪失することがある。定期的なスクリーニングにより早期発見が可能で、進行疾患を予防できる可能性がある。
将来の方向性
現在、VHLの腎症状には外科手術または熱アブレーションによる管理が一般的である。より良い管理戦略および標的全身療法の開発のニーズは明らかに満たされていない。こうした戦略には、分子生物学および腎がん発生の遺伝学の定義が含まれており、これにより効果的な予防法または早期の介入療法が開発される可能性がある。また、確立した腎がんの分子生物学の理解の進歩により、残りのVHL機能を調整し、新たな標的を同定し、または効果的にRCCを根絶できる致死性の総合戦略を発見することで、表現型により腎がんを基準化する機会がもたらされるであろう。
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遺伝性平滑筋腫症および腎細胞がん
序
遺伝性平滑筋腫症および腎細胞がん(HLRCC)(OMIM)は、皮膚平滑筋腫、女性の子宮平滑筋腫(子宮筋腫)、腎細胞がん(RCC)のいずれかまたは複数の存在を特徴とする。フマル酸ヒドラターゼ(FH)遺伝子における生殖細胞 病原性多様体は、HLRCCに対する感受性に関与している。FHは、トリカルボン酸回路(クレブス回路)におけるフマル酸のリンゴ酸への変換を触媒する酵素フマル酸ヒドラターゼをコードしている。
命名法
歴史的に、皮膚平滑筋腫を発症しやすい素因は、多発性皮膚平滑筋腫症と呼ばれていた。1973年に2つの家系が報告され、その中の3世代にわたる複数の家系員が常染色体優性形式で遺伝する皮膚平滑筋腫および子宮平滑筋腫および/または平滑筋肉腫を示した。
[1]
この報告では、子宮平滑筋肉腫および転移性RCCを有する20歳の女性も報告された。その後、皮膚平滑筋腫と子宮平滑筋腫の関連がリード症候群として知られるようになった。しかしながら、皮膚平滑筋腫とRCCの明らかな関連性は、2001年まで報告されず、2001年の研究で、皮膚および子宮の平滑筋腫と乳頭状タイプ2のRCCが同時分離したフィンランドの2家系が報告され
[2]
、遺伝性平滑筋腫症および腎細胞がん(HLRCC)という名称が発表された。
遺伝学的情報
FH遺伝子
FH遺伝子は10のエクソンからなり、22.15 kbのDNAを包含する。この遺伝子は、複数種にわたって高度に保存されている。ヒトFH遺伝子は、染色体1q42.3-43上に位置する。
HLRCCは、常染色体優性遺伝症候群である;多様体化したFH アレルの片方の遺伝のみで、その個人は本疾患を発症しやすくなる。
[3]
遺伝性両アレル性病原性多様体は、低緊張、痙攣発作、および大脳萎縮を含む新生児の神経学的障害が急速に進行する特徴がある疾患の常染色体劣性フマル酸ヒドラターゼ欠乏症(FHD)を引き起こす。(詳しい情報については、本要約の遺伝的に関連のある疾患のセクションを参照のこと。)
FHにおける生殖細胞病原性多様体を受け継いでいる個人に発生する腎腫瘍は、二次的なFH 体細胞病原性多様体のため、典型的にヘテロ接合性の消失を示す。この知見は、フマル酸ヒドラターゼ蛋白の機能喪失がHLRCCにおける腫瘍形成の基礎であることを示唆しており、FHの腫瘍抑制遺伝子としての機能を支持している。
[2]
[4]
HLRCCの家系では、FHにさまざまな病原性多様体が特定されている。ほとんどがミスセンス病原性多様体であるが、ナンセンス、フレームシフト、およびスプライス部位の多様体も報告されている。
[4]
[5]
[6]
[7]
最近では、全遺伝子または部分的な欠失が特定されている。
[8]
有病率
HLRCCの有病率は不明である。米国国立衛生研究所や世界中の他の施設で確認されているHLRCCの家系は数百と推定されるが、HLRCCは依然として認識不足の疾患である可能性が高い。
FH病原性多様体の浸透度
HLRCC患者のほとんどが主要な3つの臨床症状の少なくとも1つを有すると観察されていることから、FH病原性多様体のキャリアにおけるHLRCCの浸透度は非常に高いようである。しかしながら、RCCの推定される累積生涯発生率は変動性が大きく、ほとんどの推定では、確認方法および使用する画像診断法にもよるが、生殖細胞系FH病原性多様体の家系で15~30%である。
[2]
[5]
[6]
[9]
[10]
[11]
遺伝子型と表現型の相関
遺伝子型と表現型の関連性は報告されていない。したがって、特定のFH多様体とHLRCCにおける皮膚病変、子宮平滑筋腫、またはRCCの発生との間に関連性は認められていない。
[6]
比較的小規模な研究によると、FHDおよびHLRCCでは異なる多様体スペクトルが認められることが示唆されているが
[4]
[5]
、より大きな患者コホートを含む研究によると、これらの2つの疾患では多様体の分布がかなり似ていることが示された。
[3]
HLRCC vs FHDに対する素因は、最初に示唆されたようなFH多様体の位置よりも、遺伝子量の違いからもたらされる可能性が高い。
[4]
シーケンス解析
DNAの二方向配列決定法を用いて、85%超のHLRCCの個人でFHにおける病原性多様体が検出されている。
[5]
[6]
[12]
遺伝的に関連のある疾患
フマル酸ヒドラターゼ欠乏症(フマル酸尿症、FHD)
FHDは、FHにおける両アレル性病原性多様体の遺伝に起因し、低緊張、痙攣発作、および大脳萎縮を含む神経学的障害が急速に進行することを特徴とする常染色体劣性の先天性代謝異常である。FHD患者では、FHにホモ接合型または複合ヘテロ接合型の生殖細胞病原性多様体がみられる。
[13]
[14]
現在まで、FHD罹患者においてRCCは報告されていないが、それはおそらくFHD患者のほとんどは、2~3ヵ月しか生きられず、成人早期まで生存する人はきわめて少ないためであろう。
[15]
それでも、FHD患者の親(ヘテロ接合型キャリア)がHLRCCでみられるものと類似した皮膚平滑筋腫を発症した例がある。
[4]
FH体細胞病原性多様体
早期発症型の散発性子宮平滑筋腫の2例および下肢の軟部肉腫の1例において、FHの両アレル性体細胞消失が特定されており、遺伝性疾患の特徴を示す他の関連腫瘍は認められていない。
[16]
[17]
腎がんの散発型では、FHにおける体細胞病原性多様体はきわめて低い頻度でのみ特定されている。
[16]
[18]
分子生物学
FHにおける変化がHLRCCを引き起こす機序は、現在研究段階にある。FHの両アレル性不活性化は、酸化的リン酸化の喪失および細胞エネルギー需要を満たすための好気的解糖への依存を引き起こすことが示されている。フマル酸ヒドラターゼ活性の低下または欠如のためにクレブス回路が遮断されると、細胞内フマル酸のレベルが上昇して低酸素誘導因子(HIF)プロリルヒドロキシラーゼの活性が阻害され、その結果、HIF-αが蓄積される。
[19]
[20]
FHの不活性化多様体も活性酸素種の生成をもたらし、さらにHIF-αの安定化に寄与すると考えられる。
[21]
このHIF経路の活性化は、偽低酸素状態および転写プログラムのアップレギュレーションにつながり、侵攻性の腫瘍増殖に寄与する。
[22]
さらに、蓄積されたフマル酸は、がん細胞が酸化ストレス環境で生存できるようにする抗酸化応答経路を活性化させうる。親電子性物質のフマル酸は、翻訳後にシステインスルフヒドリルでのコハク酸化によりKEAP1を修正でき
[23]
、これによりKEAP1によるNRF2の抑制が解放される。これに伴うNRF2の安定化により、アルド・ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(AKR1B10)のような抗酸化応答要素制御遺伝子の転写アップレギュレーションがもたらされ、腫瘍形成過程に寄与すると考えられる。
[24]
臨床症状
HLRCCの臨床的特徴には、皮膚平滑筋腫、子宮平滑筋腫(子宮筋腫)、RCCなどがある。罹患者には、複数の皮膚平滑筋腫または単独の皮膚平滑筋腫がみられたり、皮膚病変がみられなかったりする場合;典型的には孤立性であるRCCがみられたり、腎腫瘍がみられなかったりする場合;および/または子宮平滑筋腫がみられる場合がある。HLRCCの表現型は多様である;疾患の重症度には、著しい家系内および家系間変動がみられる。
[2]
[5]
[6]
皮膚平滑筋腫
皮膚平滑筋腫は、固いピンク色または赤褐色の丘疹および結節を呈し、体幹および四肢に広く認められ、ときは顔面に現れることもある。これらの病変は、平均年齢が25歳(範囲、10~47歳)で現れ、年齢とともにサイズおよび数が増加する傾向がある。病変は軽い接触かつ/または冷温に敏感であり、痛みを伴うこともある。疼痛は皮膚病変の重症度に相関している。
[5]
複数の皮膚平滑筋腫の存在は、別の原因が証明されない限り、HLRCCに関係しており、精密な遺伝子検査を早急に実施すべきである;孤立性の平滑筋腫では、家族歴の綿密な調査が必要である。(詳しい情報については、以下の臨床診断および鑑別診断のセクションを参照のこと。)
子宮平滑筋腫
HLRCCの女性における子宮平滑筋腫の発症は、一般集団の女性より若い年齢でみられる。診断時の年齢は、18~52歳(平均年齢30歳)である。子宮平滑筋腫は、通常サイズが大きく、多数発生する。ほとんどの女性患者に不規則または重度の月経および骨盤痛などの症状がみられるため、一般集団における平滑筋腫の女性より若い年齢で治療が必要となる。HLRCCおよび子宮平滑筋腫の女性は、一般集団における女性(年齢中央値45歳)よりも若い年齢(30歳未満)で症候性子宮平滑筋腫に対して子宮摘出術または筋腫核出術を受ける。
[5]
[12]
[25]
[26]
RCC
RCCの症状には、血尿、下部背部痛、および触知腫瘤が考えられる。しかしながら、RCCの大多数の患者は無症候性である。さらに、HLRCCのすべての患者が診察を受けたり、RCCを発症したりするわけではない。ほとんどのRCCが片側性および孤立性である;少数の患者に多病巣性のRCCがみられる。罹患患者における正確なRCC発生率は、まだ確定しておらず、さまざまなグループにより広範にわたる推定値(1~60%)が提供されている。この発生率は、研究が実施された地域、個々のグループの紹介パターン、およびRCCについて個人がスクリーニング受けた程度により異なると考えられる。米国国立がん研究所(NCI)による研究では、評価された家系の約32%でRCCが特定された。
[5]
[6]
RCCが発見された年齢の中央値は37歳であったが
[27]
、一部には、10歳という若い年齢で発症した症例が報告されている。
[28]
他の遺伝性腎がん症候群とは対照的に、HLRCCに関連するRCCは、多くの症例でFuhrmanの核異型度が3または4の侵攻性であり
[11]
[29]
、13例中9例が診断から5年以内に転移性疾患により死亡した。
[5]
図4はHLRCC患者におけるRCCを示している。
図4.遺伝性平滑筋腫症および腎細胞がんに関連する腎腫瘍は一般に片側性および孤立性である;少数の患者で多発性である。赤色の矢印は後腹膜リンパ節を示している。白色の矢印は左腎の腫瘤を示している。
子宮平滑筋肉腫
HLRCCの女性では、子宮平滑筋肉腫を発症するリスクが一般集団における同様な年齢の女性で予想されるリスクより高いかどうかは不明である。HLRCCの最初の報告では、子宮平滑筋腫の女性11人中2人が、初期の段階で発見し、治療しなければ、臨床的に侵攻性となる可能性のあるがんである子宮平滑筋肉腫も発症したことが報告された。
[2]
これまで、FHにおける生殖細胞病原性多様体が子宮平滑筋肉腫の女性6人で報告されている。
[30]
[31]
FH病原性多様体陽性のほとんどの家系は、子宮がんの素因が高くないと考えられるが、少数の個人および家系は高リスクであるとみられる。北米の研究で、HLRCCの個人または家系に子宮平滑筋肉腫がみられなかったことが報告されている。
[5]
したがって、HLRCCの女性における子宮平滑筋肉腫のリスクは不明確である。これは、確定的な回答が至急必要な問題である。
その他の症状発現
FH陽性の乳がん患者が4例、膀胱がん患者が1例、およびクッシング症候群を合併した両側性大結節性副腎皮質疾患の患者が1例報告されている。NCIによる1件のシリーズでは、HLRCC患者255人中20人(7.8%)に副腎結節がみられたが、そのうちの一部は画像所見で腺腫の特徴が確認されなかった。これらの病変の多くにフルオロデオキシグルコースの集積がみられたため、切除を実施したところ、全例で小結節性および大結節性の両方の副腎過形成の証拠を認めたことから、副腎結節もHLRCCの症状発現である可能性が示唆された。
[32]
これらの疾患が真にHLRCC表現型の一部であるかどうかは、まだ確定していない。
[12]
[30]
[33]
病理組織学
皮膚平滑筋腫
皮膚平滑筋腫は、毛包に付着している立毛筋から発生すると考えられている。組織学的に、これらは、表皮を温存する皮膚腫瘍である。形態学的に、これらの腫瘍は、コラーゲン線維が点在する交錯した平滑筋線維を有する。
[34]
子宮平滑筋腫
NCIのHLRCC関連子宮平滑筋腫に関する経験のレビューによると、これらの症例のほとんどが境界明瞭な神経束腫瘍であり、偶発症例では細胞充実性および異型性の増加を示すことが報告された。これらの症例で顕著な特徴は、HLRCCの腎がんでみられるものと類似している:すなわち、核周辺光輪により囲まれた好オレンジ色染色性の明瞭な核小体の存在。非定型性の特徴を示す例も一部にはみられたが、悪性腫瘍または平滑筋肉腫が示唆される腫瘍壊死または異型分裂を示す例はみられなかった。
[35]
RCC
HLRCCに関連するRCCでは、両染性の細胞質が豊富な細胞で、封入体様の好酸性核小体を伴う大きな核を有する細胞の存在など、ユニークな組織学的特徴がみられる。これらの細胞学的特徴は、最初の報告におけるタイプ2の乳頭状腫瘍に起因していた。
[2]
しかしながら、HLRCCは、タイプ2の乳頭状腫瘍から尿細管乳頭状腫瘍および集合管がんに及ぶ一連の腎腫瘍に関係していることが初期の研究で報告された。
[6]
[36]
HLRCCに関連するRCCは、腎臓の新たな病理学的疾患またはユニークなHLRCCタイプを構成する可能性がある。2件の研究で、生殖細胞系FH病原性多様体およびHLRCCの家族歴を有する38人の患者から40のRCC標本を組織学的に検査したところ、HLRCC症候群におけるRCCの一連の形態学的特徴が報告された。
[36]
[37]
嚢胞性、尿細管乳頭状、尿細管固形性など、多くの組織学的パターンがみられ、複合パターンも多くみられた。
[36]
[37]
管理
診断および検査
FH遺伝子の遺伝子検査が臨床で利用可能で、臨床検査室改善法(CLIA)認定の検査施設で実施される。FHは、現状でHLRCCに関連していることが知られている唯一の遺伝子である。HLRCC患者のほとんどが、FHに生殖細胞病原性多様体を有している。
HLRCCの遺伝子解析は複雑なため、意義不明の多様体の結果を解釈する場合、理想的には、この疾患に関して豊富な経験を有する施設で、臨床がん遺伝学専門医に相談して実施する必要がある。
臨床診断
現時点では、HLRCCの診断基準に関してコンセンサスが得られたものはない。
[38]
一部の専門家による提案では、HLRCCの皮膚科的臨床診断には、以下の
いずれか
が必要である:
[
39]
- 複数の皮膚平滑筋腫では、1つ以上が平滑筋腫であると組織学的に確認されている。
- 単独の平滑筋腫では、HLRCCの家族歴陽性が認められる。
最近になって総合的な診断基準が提案されており、この分野の専門家により、しばしば使用されている。提案された基準には、上述の皮膚科的症状または以下の症状のうち2つの組み合わせが含まれている:
[40]
- 40歳前の症候性子宮平滑筋腫に対する外科治療。
- 40歳前のタイプ2の乳頭状RCC。
- これらの基準のいずれかを満たす第一度近親者。
40歳前の集合管RCCが追加の基準として提案されている。
[41]
家族歴が陰性で組織学的に確認された単一の皮膚平滑筋腫を有し、散発性腫瘍と思われる患者が、生殖細胞系FH病原性多様体の存在に対する検査で陽性となる場合がある。これらの患者集団における生殖細胞系病原性多様体の割合は不明であるが、単一の皮膚平滑筋腫であっても家族歴に関係なくすべての患者を遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査に紹介する施設が多い。
[5]
鑑別診断
皮膚病変
皮膚平滑筋腫はまれである。HLRCCでは、特異的に複数病変が検出される。平滑筋腫は、臨床的にさまざまな皮膚病変と類似しているため、その病変の特徴を客観的に証明するには、組織学的診断が必要である。
子宮平滑筋腫
子宮平滑筋腫は、一般集団の女性に最も多くみられる良性の骨盤腫瘍である。子宮平滑筋腫のほとんどが散発性および無症候性である。
[26]
RCC
この症候群の診断の手がかりは、さまざまな臓器(皮膚、子宮、および腎臓)にいくつかの表現型の特性が認められることが頼りになる可能性がある。この症候群では、このような特性の1つ以上が患者に認められたり、罹患した生物学的近親者の1人以上に認められたりする場合がある。
家族性RCCは、かなり特異的な腎臓の病理学的特徴に関連しているが、これらの症候群がまれなことから、その組織学的特徴を認識するのに十分な経験が得られた病理医はほとんどいない。
鑑別診断としては、他に特異的な腎臓病理学的特徴を伴うまれな家族性RCC症候群が考えられ、以下のものがある:
-
遺伝性乳頭状腎細胞がん(HPRC)
。タイプ1乳頭状腎細胞がんに対する素因を生じる。遺伝は常染色体優性である。
[42]
-
バート・ホッグ・デュベ症候群(BHD)
。一連の腎腫瘍で、腎膨大細胞腫(良性)、嫌色素性腎細胞がん(悪性)、および両細胞型の複合でいわゆる膨大細胞性複合型腫瘍がある。
[43]
BHDの患者は、皮膚線維毛包腫/毛盤腫および/または多発性肺嚢胞と自然気胸を呈することがある。遺伝は常染色体優性である。
[29]
[44]
遺伝子検査
遺伝子検査は、リスクのある個人の診断確定のために臨床で使用される。生殖細胞病原性多様体の検査を意図している人に対しては、検査前および検査後に遺伝カウンセリングを提供することが推奨される。
[45]
臨床的な意思決定に使用するための遺伝子検査を提供する検査施設は、CLIAの法律下で認可を受けなければならない。
[46]
検査戦略
生殖細胞系FH病原性多様体に対する遺伝子検査は、HLRCCの家族歴の有無にかかわらず、HLRCCが確認された人またはそれが疑われる人で全例が適応となり、これには本要約の臨床診断のセクションに記載しているような皮膚平滑筋腫の人、または組織学的特徴がHLRCCに一致した腎腫瘍の人も含まれる。
[36]
[47]
[48]
(詳しい情報については、本要約の病理組織学のセクションを参照のこと。)
家系員に対するリスク
HLRCCは、常染色体優性形式で遺伝する。
[2]
発端者の片方の親が臨床的に罹患していたり、病原性多様体を保有していたりする場合、その発端者の同胞に病原性多様体が遺伝している確率は50%である。HLRCC患者の各子供に病原性多様体が遺伝する確率は50%である。臨床的重症度がどうなるかは予測できない。罹患した家系員に病原性多様体が特定されている家系に対して個別に出生前の検査を提供している検査施設で、出生前の遺伝子検査が利用可能な場合がある。
発端者の両親
- HLRCCと診断された人の中には、罹患した親をもつ人がいる一方で、罹患していない親をもつ人もいることから、一部には、de novoの病原性多様体または親のモザイク現象の結果としてHLRCCを発症した人がいることが示唆される。
- de novoの病原性多様体により発生した症例の割合は、親のわずかな症状発現が系統的に評価されていないため、不明である;同様に、罹患していないすべての親がFH検査を受けるわけではない。
- 発端者にFHの病原性多様体が特定されている場合は、de novoの病原性多様体が疑われる発端者の両親の評価として、遺伝子検査を含めてもよい。
HLRCCと診断された人の中には、罹患した親をもつ人もいるが、限定的な家族歴、家系員における疾患の非認識、症候性関連症状が発現する前の罹患した親の早期死亡、または罹患した親における疾患の晩期発症のために、家族歴が陰性とみなされる場合もある。
[49]
発端者の同胞
- 発端者の同胞のリスクは、発端者の親の遺伝的状態に依存する。
- 発端者の片方の親が臨床的に罹患していたり、病原性多様体を保有していたりする場合、その発端者の各同胞には、多様体が遺伝するリスクが50%ある。
- いずれの親のDNAにも病原性多様体が検出できない場合は、同胞のリスクは低いが、生殖細胞系モザイク現象の可能性があるため、一般集団よりは高くなる。
リスクのある家系員の検査
リスクのある家系員の早期発見のために遺伝子検査を使用することで、診断の確実性が改善するとともに、その家系の病原性多様体が遺伝していないリスクのある家系員では、高価でストレスを伴うスクリーニングの受診が減少する。
[46]
[50]
[51]
臨床症状を早期に認識することで、時宜を得た介入が可能になり、理論的には、転帰が改善する可能性がある。そのために、無症候性のリスクのある血縁者では、RCCの早期発見のための臨床的サーベイランスが妥当であるが、症候群関連死亡に対するスクリーニング効果に関する追加の客観的データが必要である。
関連する遺伝カウンセリングの問題
病原性多様体が遺伝した人における表現型の予測
病原性多様体がある人において、HLRCC関連症状が認められるか、また認められるのであれば、その発症年齢、種類、重症度、または臨床的特徴がどうなるかについては、予測できない。新たな21家系内で臨床的および遺伝的特徴を解析した徹底的な特性解析では、表現型に広範囲の臨床像がみられ、明らかな遺伝子型と表現型の関連性は認められなかった。
[6]
常染色体優性疾患の発端者で、いずれの親にも病原性多様体または疾患の臨床的証拠が認められない場合、その発端者はde novoの病原性多様体である可能性が高い。しかしながら、非医学的な説明として、もう一方の父系または未公表の養子縁組などの可能性が含まれる。リスクがある家系員の遺伝子検査は、生涯にわたる継続的な臨床的サーベイランスの必要性を特定するために適切である。病原性多様体検査結果の解釈は、罹患した家系員に病原性多様体が特定されている場合に最も正確となる。病原性多様体がある人は、生涯にわたり定期的にサーベイランスを受けることが推奨される。一方、病原性多様体が遺伝していない家系員およびその子孫は、RCCリスクが一般集団と同程度であると考えられ、これらの個人に対して推奨される特別な管理はない。
医学的管理に影響を与えるリスクがある人の早期発見
HLRCCにおいて早期疾患の症状発現がないかのスクリーニングは、罹患者の臨床ケアにおける重要な側面である。特定の腎がんスクリーニングの実践を比較したプロスペクティブ研究は存在しないが、HLRCCの侵攻的な性質
[40]
から腫瘍細胞が播種する前にがんの早期発見に向けた努力が正当化される。腫瘍が小さく限局性の場合、腎部分切除術は実施可能な選択肢であろう;しかしながら、これらの腫瘍は浸潤性の性質のため一部のグループでは、完全切除を達成するために広範な切除縁をとる必要があると提唱している。
[52]
子宮筋腫は出血および腫瘤による影響に関連してしばしば重大な症状を引き起こすが、小さい子宮筋腫は無症状の場合がある。HLRCCの子宮筋腫では子宮摘出術および若年の罹患女性において妊孕性の喪失につながるため、妊孕性の保持に関心のある女性におけるスクリーニングの目標はこれらの不可逆性の合併症を限定することである。HLRCC関連子宮筋腫に関する特異的管理の推奨はないが、散発性子宮筋腫の治療ではさまざまな管理戦略が有効であることが証明されている。これらの戦略には、ホルモン療法、鎮痛薬、経皮的および血管内手技、外科的選択肢の使用などが挙げられる。不妊治療専門医への早期紹介は家族計画を支援するために役立つことがある。
サーベイランス
適切な臨床的サーベイランスの構成に関して、コンセンサスが得られたものはない。
臨床的にHLRCCと診断された人、臨床症状に関係なくFHにヘテロ接合型病原性多様体がある人、およびリスクがあるが遺伝子検査を受けたことがない家系員は、HLRCCの臨床症状に詳しい医師が実施する以下の定期的なサーベイランスを受けることが提案されている。
-
皮膚。
いくつかの公開された推奨で定期的な皮膚検診の実行が勧められているが、皮膚検診の頻度についてはコンセンサスが得られておらず、各推奨に対するプロスペクティブな検証もこれまでに実施されていない。
-
子宮。
子宮が損なわれていない女性では、年1回の婦人科への受診が推奨され、その際には骨盤の磁気共鳴画像法(MRI)または超音波検査などの定期的な画像検査により、子宮平滑筋腫の重症度を評価し、平滑筋肉腫の発生を示唆する変化がないか検査する。
[2]
[5]
[26]
[53]
-
腎臓。
この疾患の侵攻的な性質を考慮すると、初期(ベースライン)の評価で腎臓が正常なことが明らかな場合でも、造影剤を用いるコンピュータ断層撮影(CT)スキャンまたはガドリニウム造影MRIのいずれかによる年1回の画像診断検査が妥当である。複雑嚢胞などの微細な所見がときに侵攻性の悪性疾患を表していることがあるため、この集団では画像検査に対する特別な配慮が必要である。ただし、HLRCCは10歳という若い小児でも報告されているため、腎臓のスクリーニング開始年齢は不明確である。HLRCC Family Allianceは、HLRCCのリスクがある小児およびHLRCCの患児では、8歳から年1回の画像診断検査を開始するよう推奨している。
[38]
MRIは患者の放射線曝露を免れさせるという利点があり、このため、HLRCC患者の生涯のサーベイランスにはCTよりも好ましい。
以前の検査で疑わしい腎病変(確定できない、疑いのある、または複雑な嚢胞)があれば、定期的な画像検査(比較が可能なように同じ方法を用いるのが望ましい)で綿密に追跡すべきである。横断的画像検査で確認された嚢胞性病変の定性評価には、腎臓の超音波検査を使用すると有用な場合がある。超音波検査単独では決して十分ではないことに注意すべきである。腎腫瘍は、HLRCC関連の腎がんに詳しい臨床医が評価すべきである。
[11]
[29]
これらの腫瘍は侵攻的に増殖するため、固形腎病変に対する早期の外科的介入への閾値を下げた、定期的なサーベイランスが患者に必要となる。この戦略は、他のいくつかの遺伝性腎がん症候群に対して記述したものとは異なり、この場合は、腫瘍の挙動がより緩徐で、これに対する観察は実行可能な選択肢であろう。
[10]
[11]
[29]
証拠レベル(皮膚のサーベイランス):5
証拠レベル(子宮のサーベイランス):4
証拠レベル(腎臓のサーベイランス):4
症状の治療
皮膚病変
皮膚平滑筋腫は、皮膚科医による検査が最も適切である。一般的に、無症状の皮膚平滑筋腫は治療の必要がない。広範囲にわたるびまん性病変が患者に認められる場合、症候性の皮膚平滑筋腫の治療は困難なことがある。孤立性の痛みを伴う病変では、外科的切除を実施してもよい。凍結アブレーションおよび/またはレーザーにより病変の治療が可能である。カルシウムチャネル遮断薬、α遮断薬、ニトログリセリン、抗うつ薬、および抗てんかん薬といったいくつかの薬物により、平滑筋腫関連痛が緩和されたとの報告がある。
[54]
小規模なランダム化臨床試験(09-C-0072 [NCT00971620])では、A型ボツリヌス毒素(Botox)の病巣内注射により生活の質が改善する可能性が示された。
[55]
証拠レベル:5
子宮平滑筋腫
子宮平滑筋腫は、婦人科医による評価が最善である。HLRCCの子宮平滑筋腫は、散発性平滑筋腫と同様な方法で治療する。ただし、HLRCC関連の子宮平滑筋腫では、その多様性およびサイズのほか、急激な増殖の可能性が確認されているため、ほとんどの女性で、一般集団で予想されるより早期に、またより頻繁に内科的および/または外科的介入が必要になる場合がある。外科的切除の準備としてそのサイズを縮小させるとともに、平滑筋腫関連痛の一時的緩和を得るために、内科的治療(現時点では、ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬、抗ホルモン薬、および鎮痛薬など)により、子宮平滑筋腫の最初の治療を実施してもよい。女性が妊孕性の保持を希望する場合は、子宮を温存して平滑筋腫を摘出する筋腫核出術が選択すべき治療法となる。子宮摘出は、必要な場合にのみ実施すべきである。
[5]
[26]
証拠レベル:4
RCC
RCCの生物学的な侵攻性のために、HLRCC関連のRCCを早期に発見することを目指した努力が賢明であるが、現時点では、この状況で早期発見により明らかに生存が改善されるという証明はなされていないことを理解しておかなければならない。他の遺伝性がん症候群の管理とは異なり、疾患の最初の徴候がみられた時点でのこれらの悪性腫瘍の外科的切除が推奨される。小さい腎腫瘍であってもリンパ節転移の傾向があるため、より適切な病期分類のためのリンパ節郭清術が必要となることがある。
[52]
小さな1cm未満の腫瘍を含めて、腎腫瘤が検出できた患者では、切除断端を広くした根治的腎摘出術または腎部分摘出術を検討すべきである。
[10]
[11]
[29]
証拠レベル:4
検討段階の治療法
HIF1-αの過剰発現がHLRCCの腫瘍形成に関与していることが示唆されている。
[19]
[20]
そのため、HLRCC関連腫瘍に対して期待できる標的療法として、HIF1-α標的薬(こうした薬物が臨床的に利用できるようになった場合)が含まれる可能性がある。
FHの両アレル性不活性化により酸化的リン酸化の喪失が生じると、HLRCC腫瘍は、ほぼ完全に好気的解糖に依存して細胞のアデノシン三リン酸および他の生体エネルギーに関する需要を満たすようになる。そのため、治療戦略として好気的解糖を標的にした研究が行われている。
[56]
[57]
進行したHLRCCの治療に対してベバシズマブとエルロチニブの併用を検討する第II相研究(10-C-0114 [NCT01130519])が進行中であるが、この研究はこれらの薬剤の併用が腫瘍細胞への有効なグルコース供給を阻害しうるという前提に部分的に基づいている。
[58]
HLRCC腎がんにおけるFH不活性化の既知の結果を評価した他の研究
[59]
により、VHLからのccRCCおよびHPRC家系からのタイプ1乳頭状RCCといった遺伝性RCCの他の2つのタイプで見られるものと比較すると、HLRCC腎腫瘍におけるNAD(P)H脱水素酵素キニーネ1(NQO1)の発現が非常に高いことが確認されている。NQO1の転写を制御する転写因子の1つであるNRF2が媒介する酸化ストレス反応経路の活性化により、これらの腫瘍におけるNQO1の過剰発現を説明できる。Abl-1キナーゼに対する追加的な活性を有するVEGFR2およびEGFRの経口阻害薬であるバンデタニブは、in vitroでFH欠損細胞に対して強力な活性を有し、マウスにおいてHLRCC由来異種移植片を退縮させる。このモデルにおけるバンデタニブの活性は、少なくとも一部には、NRF2が媒介する細胞保護的な酸化ストレス反応経路をAbl依存性に破壊する能力によってもたらされている。さらに、5'-AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化物質であるメトホルミンは、in vitroでもFH欠損ヒト腎がんからマウスへの異種移植片においてもバンデタニブとの相乗効果がみられた。
[60]
これらのデータは、進行性腎がんが認められるHLRCC患者に対するこの併用の効力を評価する新たに実施される臨床試験(NCT02495103)の基礎となっている。
臨床試験に関する一般情報は、NCIウェブサイトからも入手することができる。
予後
HLRCCの皮膚および子宮の症状では、予後がきわめて良好である。これらの部位では、必要であれば皮膚症状に対する局所的な管理、および適応があれば子宮摘出術により対応可能であり、かなり有効で、長期の合併症が最低限に抑えられる。子宮平滑筋肉腫の発生率は、きわめて低い可能性が高く、実質的にコホートレベルで生存中央値に影響を与える可能性は低い。HLRCCの場合におけるRCCは、かなり不吉さが増す徴候であり、RCCを発症するHLRCC患者の15~30%
[2]
[5]
[12]
[27]
では、転移性病変が発生するリスクが高い。
[11]
HLRCCに伴う転移性RCCは、侵攻的な臨床経過をたどる特徴があり、一様に致死性である。この集団では、現時点で十分に大きな患者コホートまたはデータベースが得られておらず、生存の正確な推定ができない;しかしながら、レトロスペクティブ・コホートにより、これらのがんの転帰は他の従来の形態の腎がんよりも不良であることが実証されている。
[61]
将来の方向性
HLRCC患者の管理では、転移性疾患に対する有効な医学的療法の利用可能性以外に2つの重大なアンメットニーズがある。1つ目は、RCCを発症するであろう個人を予測してRCCを早期に、かつ高い精度で検出する能力である。HLRCC患者の腎臓について費用対効果の高いサーベイランスが可能な血液検査ツールまたは画像診断検査を開発することで、これらの患者の転帰に対して重要な好ましい効果が得られる。2つ目の重大なアンメットニーズは、FH遺伝子にみられるさまざまな遺伝子異常に関して、遺伝子型と表現型の関連性をより正確に判定することである。FH遺伝子で新たに発見される多型は、意義不明の頻度が高く、これらの臨床的意義を決定するには、相当な努力を費やす必要がある。in silicoの予測ツールを考案し、これらを頑健な患者データベースおよびレジストリーと関連付けることは、FH遺伝子の特定の多様体がもたらす結果への理解を広げることに役立つ。
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バート・ホッグ・デュベ症候群
序
バート・ホッグ・デュベ症候群(BHD)(OMIM)は、フォリクリン(FLCN)遺伝子の生殖細胞 病原性多様体により生じる常染色体優性の遺伝性過誤腫性障害である。
[1]
BHDは1977年にBirtによって最初に報告され、線維毛包腫/毛盤腫として知られる皮膚過誤腫を特徴とする。
[3]
BHDの臨床的特徴には、皮膚症状(線維毛包腫/毛盤腫)だけでなく、肺嚢胞/自然気胸の病歴、およびさまざまな組織型の腎腫瘍が含まれる。
[4]
アクロコルドンはBHDでみられることがあるが、一般集団でも多く発生し、診断指標とはならない。
[5]
[6]
[7]
疾患の重症度は多岐にわたる。皮膚病変は通常、20代または30代で発現し、年齢に伴い大きさと数が増す。肺嚢胞は通常両側性で多病巣性である;ほとんどの個人は無症状であるが、自然気胸を発症するリスクが高い。BHDの個人の約15~30%に腎腫瘍が発生し、通常は両側性、多病巣性であり、緩徐に増殖する;腫瘍診断時の年齢中央値は46~50歳。
[8]
[9]
[10]
よくみられる腫瘍には、複合型膨大細胞腫瘍(膨大細胞腫と嫌色素性の組織学的細胞型の特徴を有する)(50%)、嫌色素性腎細胞がん(RCC)(34%)、および膨大細胞腫(9%)がある。淡明細胞型腫瘍および乳頭状腫瘍は、報告されているものの、BHD腎腫瘍の10%未満である。
[8]
一部の家系では、腎腫瘍および/または皮膚症状を伴わない常染色体優性の自然気胸を認める。
[9]
[11]
[12]
自然史
BHDの臨床的特徴には、線維毛包腫/毛盤腫と呼ばれる特異的な皮膚の過誤腫、肺嚢胞/気胸の病歴、さまざまな組織型の腎腫瘍などがある。BHDは表現型の不均一性を特徴とし、疾患の重症度は家族の成員間および家系間で大きく異なる。現在までに、皮膚がんまたはこれらの過誤腫性病変の悪性形質転換のリスクが高まる証拠は得られていない。2001年に1件の家系ベースの研究により、BHDの臨床診断を受けた患者に腎腫瘍が発生する確率は、臨床的に罹患していない家族の場合の7倍であることが明らかになった。
[13]
さらにこの研究では、BHDの臨床診断を受けた患者は、臨床症状のない家族の50倍の確率で自然気胸を起こすことも明らかになった。同研究により、腎腫瘍と自然気胸がいずれもBHDの主症状であることが確認された。BHDに随伴する腎腫瘍は侵攻性となりうるが、一般的には非常に緩徐な経過をたどる。最も適切に管理された患者では、生涯にわたって各腎に対して腎部分切除術を複数回受ける必要はない。
[14]
転移性疾患の報告はあるが、まれである。
[14]
遺伝学的情報
FLCN遺伝子
新たな腫瘍抑制遺伝子であるFLCNは、染色体17p11.2に位置する14のエクソンを構成している。
[2]
BHD患者では、すべての翻訳されたエクソンでFLCN病原性多様体が特定されており
[1]
[15]
[16]
[17]
、病原性イントロン多様体も報告されている。
[18]
FLCNは64kDaのリン蛋白であるフォリクリン(FLCN)をコードし、これは複数種にわたって高度に保存されている。
有病率
米国、英国、日本、デンマーク、スペイン、イタリア、オーストラリア、カナダ、オランダなどのさまざまな国で、多様な集団に属する200以上のBHD罹患家系が報告されている。
[1]
[9]
[15]
[16]
[19]
[20]
[21]
[22]
遺伝子型と表現型の相関
特異的なFLCN 多様体と腎臓、肺、皮膚の症状の間に相関は確認されていない。しかしながら、エクソン11のポリシトシントラクトに欠失がある個人は、他の多様体を有する個人より腎がんの発生リスクが低い可能性があることが報告されているものの
[15]
、サンプルサイズが小さく、同じ施設の後続の研究でこの観察は再現されなかった。
[1]
3つの主な臨床症状(線維毛包腫/毛盤腫、肺嚢胞/気胸、および腎腫瘍)に基づくと、BHDの浸透度は非常に高いと考えられる。BHDにおいて表現促進現象が起きるかどうかは不明である。
分子生物学
ほとんどのBHD関連腎腫瘍において体細胞の「2番目のヒット」が同定されていることから、FLCNが腫瘍抑制因子として機能していることが強力に示唆されている。染色体17pにおける野生型FLCN アレルにおける体細胞点変異(多様体)とヘテロ接合性の消失の両方が同定されているが、前者は2番目のFLCNアレルの不活性に関する、より一般的な機序とみられる。
[22]
FLCNの不活性が腫瘍発生を引き起こす正確な機序は、まだ解明されていない。しかし、FLCNの蛋白産物であるフォリクリンは細胞エネルギー感知システムの構成要素とみなされている。フォリクリンは、2つのフォリクリン相互作用蛋白であるFNIP1およびFNIP2のいずれかと関連して、AMPKと相互作用する。
[24]
[25]
AMPKは、これらの刺激に反応してmTORの活性を調整する主な細胞エネルギーかつ栄養センサーである。
[26]
さらに、フォリクリンとFNIP1の両方がAMPKによりリン酸化されるが、翻訳後修飾の意義は明らかになっていない。FLCNのC-末端ドメインは、FNIP1およびFNIP2との相互作用に必要となる。ほとんど(ただし、すべてではない)の腫瘍関連FLCN多様体は、このC-末端ドメインが欠損した短縮蛋白を予測するか、FLCN蛋白を不安定にするようである。
[24]
[27]
フォリクリンの欠失がmTOR活性に及ぼす影響は複数のグループにより研究中である。腎特異的FLCNノックアウトマウスモデル
[28]
においてmTORC1の組織特異的活性化が示され(このモデルでは、野生型アレルの消失後にFLCNヘテロ接合性ノックアウトマウスに発生した腎腫瘍においてmTORC1およびmTORC2双方が活性化していた
[29]
)、mTORがBHD関連腫瘍の発生に役割を演じている可能性が示唆されている。より最近の研究によると、FLCN不活性化の結果、好気的解糖が上方制御される。この解糖の変化は中等度であるが、FLCNヌル細胞における構成的AMPK活性化の結果であると考えられる。AMPK活性化は低酸素誘導因子1(HIF1)を上方制御することが明らかにされており、好気的解糖に必要な複数の遺伝子の転写活性化因子として十分に研究されている。
[30]
FLCNの腫瘍抑制機能の機序について、さらなる研究が必要である。
臨床症状
BHDの3つの主な特徴には、線維毛包腫/毛盤腫、肺嚢胞と自然気胸、および腎腫瘍がある。
[1]
[4]
[15]
皮膚病変
BHDの個人は通常、顔面、頸部、上半身に分布する小型で肌色、ドーム型の多発性丘疹を呈する。特徴的な皮膚科的症状は、線維毛包腫または毛盤腫(毛包の過誤腫)と呼ばれる。
[31]
皮膚病変の診断時年齢は、20~72歳(年齢中央値54歳)である。皮膚症状が見られないFLCN病原性多様体キャリアの割合は非常に少なく
[1]
[11]
[12]
、この症候性の表現型は罹患者における浸透度が高いことが示唆される。2件の大規模なBHD家系の研究において、皮膚病変の生検を受けた罹患者の73%および84%に線維毛包腫/毛盤腫がみられることが明らかにされた。
[1]
[15]
組織学的に、線維毛包腫/毛盤腫は毛包中心部から発する複数の吻合した上皮性の網状束を特徴とする。多量のムチンを含む、または厚い結合組織間質が上皮構成部分を被包することがある。
[32]
一部では、これらは毛包の皮脂腺による外套から発生する病変とされている。FLCN欠失に由来し線維毛包腫/毛盤腫の発生を促進する基礎的な分子機序は明らかになっていないが、1件の報告により、WNT信号経路の増加が役割を演じている可能性が示唆されている。
[32]
線維毛包腫および毛盤腫は単一の病理的過程の異なる段階である。
肺嚢胞および自然気胸
コンピュータ断層撮影(CT)画像法を施行した場合、肺嚢胞はBHD患者の85~87%にみられる。
[1]
[15]
これらの嚢胞は両側性および多病巣性であることが多く、主として肺の下葉内に位置する。ほとんどのBHD関連肺嚢胞は無症状である;ただし、BHD罹患者は自然気胸の発生リスクが高い。FLCNの病原性多様体と自然気胸の家族歴を有する患者は、自然気胸の家族歴のないBHD患者と比較して、自然気胸のリスクが統計的に有意に高い(P = 0.011)。
[33]
BHD罹患者198人を対象にした研究において、自然気胸の発生率は男性(20%)と女性(29%)の間で同等であった。初発の気胸に対する年齢の範囲は22~75歳であったが、初発の年齢中央値は38歳で
[33]
、典型的には40歳代以前である。30歳までに初発の自然気胸が生じる確率は6%(95%CI、3-10%)であり、50歳までになると75%(95%CI、19-32%)であった。
[33]
自然気胸の臨床像は無症状から呼吸困難および胸痛まで幅がある。臨床所見には、頻呼吸または呼吸音の減弱~消失などがある。胸部X線はloculated pneumothoraxの検出に十分な感度を備えていない場合があるため、X線検査では高分解能胸部CTによる診断の確定を要することがある。自然気胸の病歴を有する患者の最大75%は、2度目の発症を経験する。報告された自然気胸の再発例にみられる差異は、さまざまな治療法の効果を反映している可能性がある。
BHD患者に関連する胸膜肺病変の組織学的所見には、薄壁の胸膜嚢胞および胸膜下嚢胞とブラ、実質内の空気性嚢胞、胸膜ブレブおよび自然気胸に一致する変化、およびブラに隣接する肺実質組織における基礎的な気腫性の変化などがある。
[11]
腎腫瘍
BHDの個人の約25~35%に腎腫瘍が発生し、
[1]
[8]
[13]
[31]
症例の65%が多病巣性で、両側性も多い。医療記録のレビューを受けたBHD患者における腎腫瘍の発生率は20%であり、CTスキャンで評価されたBHD患者における腎腫瘍の発生率は29%であった。BHDに関連する腎腫瘍のほとんどは増殖が緩徐である。診断時の年齢中央値は48~50歳(範囲、31~71歳)である。
[10]
[15]
[34]
男性は女性よりも腎腫瘍によく罹患していた(男性27人;女性11人)。BHDに関連する腎腫瘍は散発型のRCCよりも若年で生じるようであり、診断時の年齢中央値は64歳である。
[35]
図5はBHD患者における両側性腎腫瘍を示している。
図5.バート・ホッグ・デュベ症候群に関連する腎腫瘍は一般に多発性および両側性である。矢印は腫瘍の位置を示している。
最もよくみられる腫瘍には、膨大細胞腫と嫌色素性の組織学的細胞型の複合型、いわゆる膨大細胞性複合型腫瘍、嫌色素性腎細胞がん、および腎膨大細胞腫がある。腎膨大細胞腫のみが良性腫瘍と考えられる。
[34]
他の組織学的腎腫瘍亜型、すなわち淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)と乳頭状腎がんは、BHD患者にまれに発生する。
[8]
米国国立衛生研究所で確認、および文献のレビューで特定された腎腫瘍およびFLCN病原性多様体を有するBHD患者70人のうち5人(7%)について、転移性RCCによる死亡が報告された。
[1]
これら5人の患者の腫瘍組織型は、明細胞、尿細管乳頭状、および/または乳頭状の組織学的特徴など、生物学的により侵攻性の高い自然史を有することが知られている組織型であった。BHD関連の膨大細胞腫および嫌色素性新生物に関連する死亡はきわめてまれである。VHLおよびHPRCと同様に、BHD患者の腎実質には、腎細胞がんに隣接して顕微鏡的腎腫瘍がみられることが多い。顕微鏡的膨大細胞増加の存在は、BHD患者の生涯にわたる腎腫瘍の発生リスクが高いことの組織学的証拠となる。BHD関連腎腫瘍においてFLCN体細胞の2番目のヒットが高頻度(70%)で起こることは、FLCNが腫瘍抑制遺伝子として機能しているという仮説を支持している。
[23]
散発性ccRCCで、後天性のFLCN体細胞多様体はごくまれにしか特定されていない。
[36]
[37]
その他の症状発現
両側性で多病巣性の耳下腺膨大細胞腫
[38]
は、8人のBHD患者で報告されている。
[1]
[15]
[38]
[39]
[16]
これらのまれな腫瘍が両側性、多病巣性に発現していることは、最近の分子的研究とも合わせて、耳下腺膨大細胞腫がBHD表現型の一部であるという考えにつながった。
皮膚所見が見られず、特異的な腎および肺症状のためにBHDが疑われた患者にも生殖細胞系FLCN 多様体が認められたことに注意すべきである。
[31]
脂肪腫、血管脂肪腫
[40]
、コラゲノーマ(collagenoma)
[31]
、皮膚神経莢腫(cutaneous neurothekeoma)、髄膜腫
[41]
、甲状腺の多発結節性甲状腺腫
[42]
[43]
、卵巣嚢胞
[43]
、副甲状腺腺腫
[40]
、肺組織球腫
[44]
、脈絡網膜病変
[43]
[45]
はすべてBHD患者において報告されている。これらの症状が真にBHDに関連しているかどうかは、まだ確定していない。
初期の疫学的観察ではBHDと結腸ポリープのリスク増加との関連が示されたが、その後の疫学研究ではこの関連は確認されなかったようである。
[13]
[37]
[46]
管理
バート・ホッグ・デュベ症候群に対するリスク評価
遺伝子検査
FLCN(BHD)は、BHDに関連していることが知られている唯一の遺伝子である。これは染色体17p11.2に位置する。
[47]
分子検査は診断検査や出生前診断などの臨床応用に利用できる。53%(51家系中27家系)のBHD家系に、エクソン11のポリシトシントラクト(多様体のホットスポット)に挿入または欠失が認められた。
[15]
すべてのFLCNコーディングエクソン(エクソン4~14)の両方向のDNAシーケンス解析により、84%の病原性多様体の検出率が得られており
[1]
[15]
、これは遺伝子内欠失および重複を検出するためのリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応およびMLPA法(多重ライゲーション依存性プローブ増幅法)の開発により向上し
[48]
、臨床ベースでの利用が可能である。
CLIA認定研究室で実施される遺伝子検査は、BHDの罹患が既知の個人、または以下に該当する個人を含むBHDが疑われる個人の全員に適応である:
- 顔面または体幹の丘疹が5つ以上で、うち1つ以上が線維毛包腫と確認されており、
[31]
BHDの家族歴は問わない。
- BHDの家族歴があり、1つの線維毛包腫もしくは1つの腎腫瘍がある、または自然気胸の既往がある。
- 多発性かつ両側性の嫌色素性腎腫瘍、および/または複合型腎膨大細胞腫。
- 単一の嫌色素性腫瘍、または膨大細胞腫性複合型腫瘍および上記のいずれかの腫瘍型の腎がんの家族歴。
- 常染色体優性原発性自然気胸の家族歴があり、肺嚢胞の既往がない。
遺伝カウンセリング
バート・ホッグ・デュベ症候群は、常染色体優性形式で遺伝する。発端者の片方の親が臨床的に罹患していたり、病原性多様体を保有していたりする場合、その発端者の同胞には、多様体が遺伝するリスクが50%ある。臨床的重症度がどうなるかは予測できない。罹患した家族の病原性アレルが同定されている場合は、50%のリスクで妊娠に対する出生前診断を実施することができる。(詳しい情報については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングに関するPDQ要約を参照のこと。)
臨床診断
BHDの3つの主な特徴は、皮膚病変、肺嚢胞および自然気胸、腎腫瘍である。
[1]
[15]
(これらの症状の詳しい情報については、臨床症状のセクションを参照のこと。)
BHDの皮膚科的診断は、顔面または体幹部に5つ以上の丘疹を認め、少なくとも1つが組織学的に線維毛包腫であると確認された個人に下される。
[31]
線維毛包腫の診断には、適切な生検(通常はパンチ生検)が必要となる。専門委員会は以下のBHDの診断基準を開発した(診断には患者が1つの大基準と2つの小基準を満たす必要がある):
[49]
-
大基準:
- 成人発症性の線維毛包腫/毛盤腫を5個以上認め、少なくとも1つが組織学的に確認されている。
- 生殖細胞FLCN病原性多様体。
-
小基準:
- 多発性肺嚢胞:原発性自然気胸か否かにかかわらず、他に明らかな原因のない両側性の肺底部に位置する肺嚢胞。
- 腎がん:早期発症(年齢が50歳未満)または多病巣性もしくは両側性の腎がん、または嫌色素性細胞型と膨大細胞型が混合した組織型の腎がん。
- BHDの第一度近親者。
鑑別診断
管理上、有意味な場合があるため、BHD関連腎がんと散発性RCCを鑑別することが重要である。FLCNの病原性多様体に対する遺伝子検査、BHDの家族歴、または腎臓外のBHD関連症状の存在は、この病態の診断を確立するのに有用である。BHDに関連して多様な腎がんの組織型多様体がみられることがあるため、良性腫瘍(膨大細胞腫)と悪性が疑われる腫瘍(嫌色素性、明細胞型、乳頭状RCC)との鑑別には、多くの場合に組織学的診断が必要となる。
[34]
肺嚢胞の鑑別診断にはリンパ管平滑筋腫症(LAM)がある;これをBHDから鑑別することは、臨床的に困難な場合がある。1件の研究は、BHDとLAMの鑑別を可能にする一連の知見を提案した。
[50]
これらの知見には、BHDでは両肺底部、周辺部、胸膜下の分布であるのに対し、LAMではびまん性の分布であること;BHD関連嚢胞は楕円形またはレンズ形であるのに対し、LAMでは円形であること;BHDでは免疫組織化学的染色でHMB-45陰性であるのに対し、LAMではHMB-45陽性であることが含まれる。このアプローチは妥当性が確認されていない;さらなる検討が必要である。
サーベイランス
BHD患者は2つの主な臨床像を呈する。最も多くの場合、個人には既知のBHDの家族歴が認められる。他には個人にBHDの家族歴がない場合、または家族歴が不明な場合がある。前者の臨床シナリオでは、患者の生物学的近親者にFLCN病原性多様体が同定され遺伝子診断を受けている場合は、遺伝カウンセリングと病原性多様体検査による評価を開始するよう選択することができる。
BHDのリスクが高い個人に対する臨床的サーベイランスには、自然気胸の既往にかかわらず、特徴的な皮膚病変、腎腫瘍、肺嚢胞を同定する皮膚科的、放射線学的、組織学的な諸検査が含まれる。すべての特徴がリスクの高い各個人に現れるとは限らず、BHD家系員によっては、認識可能な表現型の所見がみられないこともある(すなわち、臨床症状がみられない有害な FLCN多様体のキャリア)。この臨床シナリオは、病原性多様体検査が勧められうる症候群関連の遺伝子の数が増加していることに伴って、臨床的に遭遇する機会が増加しつつある。ほとんどの障害において、遺伝的に異常で臨床的に正常な個人の自然史は未だ十分に解明されていない。これらのBHDの主な特徴は、臨床診断のセクションに記述されている。
遺伝性RCC症候群の生涯にわたるサーベイランスの実施を決定する場合は、リスクと有益性の両方を考慮しなければならない。BHDの個人の約15~29%が腎腫瘍を患い、
[13]
[15]
それらは多くの場合に両側性および多病巣性で、個人または家系内に特異的な多数の組織像が含まれる。
[34]
リスクが高く、長年にわたって定期的な画像検査を受ける個人の場合は、たとえ腫瘍が存在しなくても、放射線の生涯線量を最小化するサーベイランスのスケジュールが勧められる。
造影CTまたは磁気共鳴画像法(MRI)はいずれも、BHD腎腫瘍の検出に有用な方法である。
[34]
腎腫瘍によってはエコーが腎実質と同様であるため、超音波(ソノグラム)だけでは腎腫瘍の検出に不十分な場合があるが、
[14]
腎嚢胞の特定には役立つ場合がある。腎腫瘍が検出される場合、その患者は管理のために泌尿器腫瘍外科医に紹介され、主に腫瘍のサイズに応じて継続的なモニタリングまたは手術を受ける場合がある。
[34]
初回の画像検査で腎腫瘍が検出されなかった場合は、RCCの発生リスクがあるため、専門家は生涯にわたって少なくとも36ヵ月ごとのサーベイランスを受けるよう推奨する。
[14]
MRIでは患者が放射線曝露を受けないため、CTよりも生涯のサーベイランスに好ましい画像検査様式であるとみなすことが妥当である。
証拠レベル:5
治療
皮膚
凍結療法、電気乾固、手術、およびレーザー療法が使用され、美容的な結果は良好であるが、皮膚病変は遺伝性の皮膚病態の発現であるため通常は再燃する。
[51]
[52]
[53]
したがって、患者は継続的な美容ケアを必要とする場合がある。BHD患者によっては、皮膚病変の数や大きさにかかわらず、自身の皮膚科的病態により情動的な悪影響を被る。したがって、BHD患者の心理的状態の検討が妥当であり、個人の必要性に応じた適切なスキンケアの推奨も必要となる。
証拠レベル:5
腎臓
腎部分切除術は、BHD関連腎腫瘍の管理において、多発性原発性腎腫瘍の高リスク患者で至適な長期腎機能温存を得るための優先的治療法である。しかし、この腎温存手術は手術時に確認された腫瘍の大きさと位置に左右される。外科的管理の計画時には、この症候群では多病巣性両側性腎腫瘍の累積リスクが高いという知識を考慮に入れることが重要である。一般に、直径3cm未満の腎腫瘍は、泌尿器腫瘍外科医の綿密な監視下で放射線的にモニタリングしてもよい;即時手術が必要でない場合もある。
[34]
これらは一般的推奨であり、個別の症例を慎重に評価し個々に管理する必要がある。一部の症例では、腎全摘出術が必要になりうる。
リスクのある個人と家系員のサーベイランスには、腹部/骨盤のMRIまたはCTスキャンと、これらの複雑な患者の管理経験が豊富な泌尿器外科医および放射線科医による腎腫瘍の評価が含まれる。リスクのある家系員の早期発見のために遺伝子検査を使用することで、診断の確実性が改善するとともに、その家系の病原性多様体が遺伝していないリスクのある家系員では、高価でストレスを伴うスクリーニングの受診が減少する。
証拠レベル:4
自然気胸
BHD患者の自然気胸に対する管理は、一般集団の場合と同様である。
[33]
BHD患者における自然気胸の臨床像は変化しやすい。療法は基礎にある肺病態と患者の全身健康状態によって決定される。1件の研究は、101例の自然気胸のうち、78例が医学的介入を必要とし23例が観察単独により管理されたことを報告した。
[33]
気胸の35%は、胸腔ドレナージ(胸腔チューブ)のみで治療された;14%は開胸術による治療を受け、さらに機械的または化学的胸膜癒着術および肺切除を含む2回目の治療を受けた;および約13%は胸腔ドレナージ、開胸術、および機械的または化学的胸膜癒着術または肺切除を含む3番目の治療の併用治療を受けた。BHDの患者、特に多発性肺嚢胞の患者には、スキューバダイビング、飛行機旅行、人工呼吸のそれぞれに対する曝露が自然気胸のリスクを増大させるため、それらを避けるか注意するように勧告すべきである。
[33]
証拠レベル:4
予後
BHDにおける罹病および死亡の主な原因は、腎病変に関連している。BHDが希少であるため、この症候群の患者集団に関する頑健な全生存データを作成することは難しい;しかし、適切なサーベイランスと介入戦略で患者が管理される場合、患者の余命と一般集団の対応する個人の余命との間に、有意な差は見られないだろう。
将来の方向性
BHDの原因遺伝子であるFLCNが2001年に同定されたことを受けて、その機能および推定される遺伝子型と表現型の相関を解明するいくつもの研究が実施された。依然としてサーベイランスとそれに続く外科的切除が疾患管理の中心であるが、早期発見および早期の分子標的介入の進歩によって、腎臓におけるこの疾患の経過が変化し、この疾患の顕性のおよび/または致死的な腎症状の発生率を低下させる可能性がある。FLCN蛋白の生化学的機能に関するより深い理解により、限局性、局所進行、および転移病変に対する標的の特定および医学的治療の妥当性検証における見識を得るべきである。
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遺伝性乳頭状腎細胞がん
序
遺伝性乳頭状腎細胞がん(HPRC)(OMIM)は、両側性および多病巣性タイプ1乳頭状腎細胞がん(RCC)を発症させやすい常染色体優性 遺伝性症候群である。
[1]
METがん原遺伝子の生殖細胞系活性化病原性多様体はHPRC感受性に関連している。
[2]
遺伝性または散発性タイプ1乳頭状RCCを引き起こす特異的な既知の環境危険因子は報告されていない。HPRCに対する既知の主要な危険因子は、両側性および多病巣性タイプ1乳頭状RCCを有する生物学的近親者および/またはMETがん原遺伝子のチロシンキナーゼドメインにおける既知の活性化病原性多様体である。
[2]
[3]
遺伝学的情報
MET遺伝子
MET 遺伝子は染色体7q31.2上に位置し、1,390アミノ酸蛋白をコードする。
[4]
機能性MET受容体は、α鎖(50kDa)およびβ鎖(145kDa)で構成されるヘテロダイマーである。主要な一本鎖前駆体蛋白は翻訳後に切断されてαおよびβサブユニットを生じ
[5]
、ジスルフィド結合により、成熟受容体を形成する。この遺伝子には異なるアイソフォームをコードする2つの転写多様体が発見されている。
METのβサブユニットは肝細胞増殖因子(HGF)に対する細胞表面受容体として同定され
[6]
、チロシンキナーゼ活性を有する。METは、HGFリガンドに結合することで細胞外マトリックスからの信号を細胞質に伝達し、増殖、細胞分散、形態発生、および生存を調節する。
[7]
細胞表面におけるリガンド結合により、細胞内領域でMETの自己リン酸化が誘発され、これにより下流のシグナル伝達分子が結合する場所が提供される。このリガンドによる活性化後、METはPI3KサブユニットのPI3KR1、PLCG1、SRC、GRB2、またはSTAT3、あるいはアダプター分子GAB1と相互作用する。METによるこうした下流エフェクターの誘引により、いくつかのシグナル伝達カスケード(RAS-ERK、PI3K/AKT、PLC-γ/PKCなど)が活性化される。
[7]
RAS-ERK活性化は形態形成への影響と関連している一方、PI3K/AKTは細胞生存活性を調整する。
[7]
有病率と創始者効果
北米の2つのHPRC大家族において、MET遺伝子のエクソン16に新たな病原性多様体が同定された。2つの家族の罹患家系員は、MET遺伝子内および少し離れた位置に同じハプロタイプを共有していたことから、共通の先祖(創始者効果)が示唆されている。
[8]
しかしながら、共通の祖先のハプロタイプを共有せず、MET遺伝子における同一の生殖細胞病原性多様体を有する家族もまた報告されている。
[9]
MET病原性多様体の浸透度
HPRCは浸透度が高い(100%近い)。
[8]
[9]
[10]
遺伝子型と表現型の相関
現在までのところ、HPRCのすべての症例がタイプ1乳頭状RCCを発症する。
[1]
[2]
[3]
[8]
[9]
この疾患に関連する腎以外の症状は報告されていない。
分子生物学
現在までにHPRCにおいて報告されているMET生殖細胞病原性多様体のすべてがチロシンキナーゼ領域のミスセンス多様体であり、METキナーゼの構成的活性化と乳頭状RCCの発症につながる。
[2]
[11]
[12]
HPRC罹患患者の腎腫瘍はまた一般的に、細胞遺伝学的分析で7番染色体のポリソミー(多染色体性)を示す。
[4]
HPRC腎腫瘍組織の7ポリソミーは、野生型アレルを含む染色体の非ランダム重複(nonrandom duplication)によって引き起こされる。
[13]
散発性タイプ1乳頭状RCCの約15~20%では、MET体細胞ミスセンス多様体が認められる。
[11]
[14]
[15]
臨床症状
腎がん
現在までのところ、HPRCにおいて唯一認識されている発現症候は腎がんである。発症の平均年齢および年齢中央値はそれぞれ、42歳および41歳である。
[10]
発症時年齢は家族間で大きく異なり(範囲、19~66歳)、それは特定の遺伝子型の影響を受けている可能性がある。
[9]
男性においてより頻繁に発生する散発性腫瘍とは異なり、HPRCでは男女とも同様に罹患するようである。HPRCにおける腎腫瘍は最も一般的には、両側性および多病巣性である。
[1]
[3]
他の多くのRCC症候群とは対照的に、HPRCでは腎嚢胞はまれである。
[1]
[3]
しかしながら、HPRCの発現は小さな腫瘍が偶然存在する場合がある一方、大きな病変は側腹痛、血尿、腹部腫瘤の古典的三徴を引き起こしうるという点で他の形態の腎がんと類似している。HPRC腎腫瘍が大きくなると、(最も一般的には肺に)転移することがある。
[16]
病理組織学
タイプ1乳頭状RCCの病理組織学的分類は、淡明な細胞質、小さく楕円形の核、乳頭および管状構造内に単層で形成された目立たない核小体を有する小型好塩基性細胞により定義される。
[17]
[18]
HPRCの表現型は、タイプ1乳頭状腎腫瘍の病理組織像のみである。腺腫や乳頭状病変など初期の顕微鏡的病変は一般的に隣接する腎実質にみられる。HPRCの患者は、腎臓1つ当たり最大3,400の腎腫瘍または初期病変を発症しうると推定されている。
[19]
こうした病理所見から、MET遺伝子における生殖細胞多様体の疑いが生じるであろう。
[8]
[9]
MET多様体を伴う遺伝性および散発性のタイプ1乳頭状RCCは、マクロファージと砂粒体など、類似した別個の形態学的表現型を有する。
[16]
HPRCにおけるタイプ1乳頭状RCCの組織型は、しばしば高分化型/低悪性度であるが、より高悪性度の腫瘍も観察される場合がある。
[20]
管理
サーベイランス
HPRCであることが分かっている患者は定期的にサーベイランスを受けるように推奨される。乳頭状RCC、特にタイプ1多様体は淡明細胞型RCCとは異なる特異的な画像検査の特徴を有する。タイプ1乳頭状腎腫瘍は一般的に乏血管性で、造影剤の静脈内投与後に10~30ハウンスフィールド単位の造影増強しか認められない。乳頭状腎腫瘍は造影増強の前後で注意深く減衰を測定して評価しなければ、腎嚢胞と間違えられることがある。単一の画像検査法として用いる超音波検査は、これらの小さい腫瘍がしばしば等輝度(isoechoic)で反復検査で見過ごされる可能性があるため、特に誤解を招く可能性がある。
[20]
腎機能が正常で造影剤へのアレルギーがなければ、コンピュータ断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)を用いる横断的画像検査がこうした乏血管性腎腫瘍を同定するための最適な最初の画像検査技術であると考えられる。腎超音波検査は、CTまたはMRI上で腫瘍が明確に認められる場合であっても、乳頭状腫瘍の発見にはしばしば不十分である。
[21]
ときに、超音波検査は嚢胞性構造の確認を支援することで横断的画像検査を補完しうる。
[22]
一般的にリスクのある個人は、腫瘍が存在しない場合でも生涯にわたって定期的に腎画像検査を受けるように推奨される。したがって、放射線の生涯線量を最低限に抑えるための画像検査法としてMRIが一般的に推奨される。使用されている1つのアプローチは、ベースライン時の最初の横断的画像検査を実施することである。腫瘍が存在しなくても、定期的に画像検査を実施できる。3cm未満の腫瘍が認められる場合は、最初の1年以内は増殖速度を評価するために画像検査を繰り返すべきである。
[23]
増殖の特徴と現在の腫瘍径に応じて、画像検査の頻度を調節し、最も大きな腫瘍が3cmを超えないようにする。
一般的に、HPRCに関連する腎腫瘍を有する患者は1つ以上の腫瘍が3cmに達するまでは放射線学的なサーベイランスの候補である。3cmに達した時点で、外科的介入が推奨される。(詳しい情報については、本要約の治療のサブセクションを参照のこと。)
遺伝子検査
HPRCの遺伝子検査は、臨床検査室改善法(CLIA)認定の検査施設で受けられる。患者と検査施設の仲介に医療専門家(通常は、医師、遺伝医、または遺伝カウンセラー)が選択される。遺伝カウンセラーまたは遺伝医が最初に個人歴および家族歴をレビューした後、もし患者が病原性多様体キャリアであると明らかになれば医療管理がどのように変化するか、および考えられる心理社会的および経済的影響に焦点を当てて遺伝子検査のさまざまな意味合いについて教育とカウンセリングを提供する。次にインフォームドコンセントを得て、遺伝カウンセラーは検査室への連絡および病原性多様体検査の過程の調整を支援する。
ある個人で以下のうち1つ以上が認められる場合、HPRCの遺伝子検査が推奨される:
- HPRCの家族歴。
- 生物学的に関係する家系員が遺伝子検査を受けたことがあり、METのチロシンキナーゼ領域における病原性多様体が陽性。
- 1つ以上の乳頭状タイプ1のRCC、腎実質周囲に初期病変を認める乳頭状タイプ1のRCC、または45歳前に診断された乳頭状タイプ1のRCC。
MET遺伝子検査
増幅ゲノムDNAを用いてMET遺伝子のDNA二方向配列決定法が実施され、METのコーディングエクソンにおける塩基配列多様体が同定される。現在までに同定されたHPRC関連MET病原性多様体はすべて、チロシンキナーゼ領域を包含する4つのエクソンに位置している。したがって、これら4つのエクソンを最初に解析するだけで、21個のエクソンの全遺伝子の解析に伴う費用と時間を削減しながら、ほとんどの塩基配列多様体を同定できる。
[2]
[4]
[24]
一部のCLIA承認遺伝子検査施設では現在、次世代塩基配列決定法技術により、MET遺伝子全体を対象にした解析のための診断的がん遺伝子パネルを提供している。
遺伝子検査により、HPRC症候群の早期確定診断が可能となり、その後はリスクのある個人に症候群に関連した表現型が認められないか定期的サーベイランスを指導できる。
治療
いったんHPRC腎腫瘍の大きさが3cmに達すると、転移による拡がりのリスクを最小限に抑えるため、通常は、ネフロン温存腎部分切除術が推奨される。切除不能な腎以外への病変の拡がりが認められる患者には治癒的な選択肢が利用できない。しかしながら、HPRC患者に対するMETに向けられた全身療法の開発には大きな関心が寄せられている。MET/VEGFR2両キナーゼ阻害薬で他のさまざまなチロシンキナーゼに対しても追加的な活性を有するforetinibが、転移性乳頭状RCCまたは両側性・多病巣性乳頭状RCCを有する患者において1件の多施設第II相試験で評価された。乳頭状RCC患者における全奏効率は13.5%であった。
[25]
しかしながら、MET遺伝子における生殖細胞病原性多様体を有する患者はこの薬物に対する感受性が特に高く、患者10人中5人がResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)基準で部分奏効(全奏効率、50%)を示したのに対し、MET遺伝子における生殖細胞病原性多様体を有さない集団で部分奏効を示したのは57人中わずか5人であった。乳頭状RCCを治療するためのより選択的なMET阻害薬が現在研究段階にある。
予後
HPRC関連タイプ1乳頭状RCC、特に腎に限局する小さい腫瘍は緩慢な経過をたどる傾向がある。その結果、患者は人生の後半で発症するか、腎腫瘍診断前に症候群とは無関係の他の原因により死亡する。
[20]
HPRCのリスクがある個人のサーベイランスおよび症状発現前のスクリーニングは早期診断により予後を改善できると期待されており、専門的ながん管理(症候群に関連した腎がんの生物学に合わせて調整される)は疾患の転帰を改善すると期待されている。
[26]
将来の方向性
血液を用いる早期発見方法、および顕性疾患の予防または治療のために有効な全身療法の開発は、HPRCの個人に対して新たな選択肢を提供しうる。HPRCにおける腫瘍の浸透度は100%近いため、この患者集団はMETに向けられた戦略を用いた化学予防を研究するための刺激的な道筋を提供している。現在のところ、HPRC関連転移性RCC患者の需要に特異的に対応した全身療法の選択肢で米国食品医薬品局(FDA)により承認されたものはない。foretinibの研究
[25]
からの限られたデータによると、cabozantinib(METに対して活性を有し、VEGFR標的療法中に進行した転移性腎がん患者における使用についてFDAに承認されたマルチターゲットチロシンキナーゼ阻害薬)などの薬物を検討できる。より選択的な標的プロファイルを有する比較的新しいMET阻害薬は臨床活性を有する一方で、HPRC関連腎がん患者におけるオフターゲット副作用は限定的な可能性があり、現在評価段階にある(NCT02019693)。標的療法では、非常に多くのシグナル伝達経路がしばしば活性化しているため、MET阻害に抵抗するメカニズムをさらに研究する必要がある。
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本要約の変更点(05/18/2018)
PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。
本文に以下の記述が追加された;網膜血管芽腫、中枢神経系(CNS)病変、褐色細胞腫、膵嚢胞および膵神経内分泌腫瘍など、フォン・ヒッペル-リンダウ病(VHL)の腎以外の症状はしばしば下位専門領域(subspeciality)の評価を必要とし、外科的介入が必要な場合もある。
本文で以下の記述が改訂された;一般集団におけるVHLの発生率は、生児出生27,000人に1人から43,000人に1人と推定されている(引用、参考文献9および10として、それぞれBinderup et al.およびEvans et al.);有病率は31,000人に1人から91,000人に1人と推定されている(引用、参考文献12としてPoulsen et al.)。
表2.フォン・ヒッペル-リンダウ病における新生物:罹患者の診断時平均年齢および累積リスクの記述が以下のように改訂された;子宮広間膜/子宮円索および精巣上体の嚢胞腺腫について利用可能なデータは限られている。
本文で以下の記述が改訂された;網膜浸潤はVHLの最初の症状発現の1つであり、発症時の平均年齢は25歳である。
本文に以下の記述が追加された;VHL患者におけるCNS血管芽腫の発症時平均年齢は29.1歳である(引用、参考文献80としてKanno et al.)。
本文に以下の記述が追加された;大規模なVHL患者コホートにおいて膵神経内分泌腫瘍の診断時平均年齢は38歳であった。
精巣上体嚢胞腺腫サブセクションは精巣上体嚢胞から改名された。
本文に以下の記述が追加された;VHLの欠失は主に次世代シークエンシングを用いて検出され、標的染色体マイクロアレイ検査および/または多重ライゲーション依存性プローブ増幅を用いて確認される。
新規のサブセクションとして腎腫瘍の治療が追加された。
新規のサブセクションとして網膜血管芽腫の治療が追加された。
新規のサブセクションとしてCNS血管芽腫の治療が追加された。
新規のサブセクションとして内リンパ嚢腫瘍の治療が追加された。
本要約はPDQ Cancer Genetics Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。
本PDQ要約について
本要約の目的
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、腎がんの遺伝学について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
査読者および更新情報
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Cancer Genetics Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:
- 会議での議論、
- 本文の引用、または
- 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。
要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。
腎がん(腎細胞がん)の遺伝学に対する主要な査読者は以下の通りである:
本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。
証拠レベル
本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Cancer Genetics Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。
本要約の使用許可
PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。
本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:
PDQ® Cancer Genetics Editorial Board.PDQ Genetics of Kidney Cancer (Renal Cell Cancer).Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/kidney/hp/kidney-genetics-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389510]
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